↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の名を継ぐ者  作者: 無明流一刀斎
第四章 魔王雌伏

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/67

第7話 開かれた夢への扉

 シアッツ大王との戦いを終え、切り落とされた巨大な顔を見る俺。大きく見開かれた双眸(そうぼう)には、未だ王者の矜持(きょうじ)が失われていなかった。


「お前は強かった。間違いなく今まで戦った中で最強の敵だった。王たる者のあり方を学ばせて貰ったよ。お前の矜持(きょうじ)、勝手に背負わせて貰うぜ」


 静かにその巨体を収納する。



 振り向くと、リュミが小首を傾(かし)げている。フッ、所詮(しょせん)男の美学は男にしかわからんさ。

 精一杯のニヒルだと思う笑みを湛(たた)え、リュミの横を通り過ぎる。


 『グウゥ~』 その際、盛大に腹の音が聞こえてきた。


 ……このわんこは! 俺がダンディでハードボイルドな路線で行こうとしているのに、尽(ことごと)くぶち壊しやがる。まったくどうしてくれようか。


 俺は密かに溜息(ためいき)をつきつつ、土砂で塞(ふさ)がれた入口を[アースマニピュレート]で修復しておいてから、先に進む。



 階段状の足場を登り、さらに通路を進んで行くと、下り階段があり、そこを下りた所に安全地帯を見つける。そろそろあるだろうと、見越していたんだ。ここでしっかり休息を取ろう。腹も減ったし、とにかく疲れた。何かと確認する事もあるしな。




 俺たちの間には、大き目のパンにハンバーグと葉野菜を挟んだハンバーガーと、蒸(ふか)したイモ、野菜を煮込んだスープが置かれている。コップにはリュミが[ウォーター]で出してくれた水が入っている。まずは食事だ。リュミも限界みたいだしな。



 リュミは大口開けてハンバーガーをパクついている。ソースが口の周りに付いているが、気にする素振(そぶ)りもない。見た目はもうレディとい言ってもおかしくない年頃なんだがな……。

 まあ、貴族に嫁(とつ)ぐわけでもないんだから、ワイルド路線で別にいいか。


 ……いや、待てよ。こいつは貴族どころか王に嫁(とつ)ぐ気じゃなかったっけ? ……うん、考えるのはよそう。




 飯が終わってから、武具を確認する。俺のコートは穴も斬り跡も無かった。酸で溶けたり、背中をバッサリやられたんだがな。鑑定は通らないが、やはり高い[自己修復]が付いてるんだろうな。同田貫(どうだぬき)もかなり無茶な使い方をしてしまったが、刃こぼれ一つしていない。


 リュミの盾も特に損傷は見られなかったが、帽子や鎧にはかなりの損傷が見られた。



 俺はリュミの防具を[創造錬金]で直していく。そろそろ俺が作ったのじゃなく、専門の鍛冶師(かじし)が鍛えた防具を着させるべきなんだろうな。俺の鍛冶(かじ)能力はお世辞にも高いとは言えないからな。正直、ちゃんとした鍛冶師(かじし)に習いたいところだが……。


 リュミは俺の葛藤(かっとう)をよそに、みかんを食べていた。うまそうだ。



 そしてお互いの現状を鑑定する。


 名前:ラングリード 種族:魔王 性別:男 年齢:0歳 ジョブ:[剣聖Lv.13][魔王Lv.5] スキル:[次元収納][紫電][創造錬金][剣聖術C] 魔法:[火A][水A]風B][土A][光C][闇C][雷撃B][治癒B][生活] 称号:[次元超越者][女神の茶飲み友達][魔王継承者]

 魔王:魔界を統べる者、またはそう定められた者 全ステータス中+ スキル:[全言語理解][魔眼][魔王覇気][魔素生成][魔力放出][必要経験値減少][PT(パーティー)編制][鑑定偽装]



 名前:リュミネリア・ファントムウルフ 種族:幻狼族(獣人) 性別:女 年齢:13歳 ジョブ:[剣士Lv.18] スキル:[超嗅覚][夜目][幻惑][警戒B][短剣術A][剣術b][刺突B] 魔法:[銀月B][生活] 称号:[賢狼の末裔][魔王の一の家臣]


 遂に俺のスキルに[鑑定偽装]が加わった。これを待ってた。これで、種族が魔王だというヤバい肩書も、0歳という年齢も誤魔化(ごまか)せる。ようやく人里へ下りて行ける。



 想えば、初めて先代魔王に出逢った時、何がしたいかと聞かれた。俺は、何ができるのかを知るために、この世界を見て回りたい、と応えた。決して叶(かな)わない願いと知りながら。

 そんな愚にも着かないやり取りの結果が今の俺、魔王ラングリードだ。そしてその第一歩がようやく踏み出せる。


 この世界には何があるのか? どんな人たちがどんな暮らしをしているのか? 魔物も亜人も存在し、魔法もスキルもある世界。ゲームやラノベの中でしかあり得なかった、夢にまで見たファンタジー世界。それをこの目で。見えなかったはずの俺のこの目で見る事ができる。


 リュミネリアはどこまでも俺に着いて来てくれる。ならば、恐れる物などどこにある?


 胸が沸き立つ。武者震いが抑えられない。幼子のように声を上げて踊りあがりたい気分だ。今、目の前で夢への扉が開いたんだからな!



 だが、まずはこのダンジョンの攻略だ。今は地下31階、ここまで来て、引き返す事はない。あと20階しっかりと攻略してから帰ろう。何か得られるかもしれないしな。


 というか、ここで帰るなんて言い出したら、うちの戦闘わんこになんと言われるか。ボコられた挙句、引きずられて最下層を目指すのは嫌だ。最近のリュミには勝てる気がしないしな。



 まぁ、今夜はゆっくり寝よう。5時間交代ってところかな。



  ◇  ◇  ◇



 目覚めて朝食を取ったら、すぐに出発だ。

 そして遂に、ジュラちっくなパークは越えたらしい。と言ってもジュラ紀というより白亜紀の恐竜ばっかだった気もするが……。まぁ、それはあの映画も一緒か。




 そして今は、鳥や哺乳(ほにゅう)類っぽい魔物が現れるようになった。しかも嫌な予感がここに来て表出する。鳥が火を吐きやがったんだ。氷雪の盾はこのためか!


 ヒハキドリ:HP780/780 [火球] 火の球を吐く飛べない鳥


 ……ヒハキドリ? ヒクイドリじゃなくて……。んだよ、それ。もうほぼギャグじゃねぇか!


 ダチョウより一回りくらいデカく、かなり太く長い脚に鋭い鉤爪(かぎづめ)を持つ、黄色っぽい羽毛がフサフサした鳥が、物凄い速さで襲ってくる。

 グレーとオストリッチよりは小ぶりだが、速さと小回りは上じゃないか? なんか、最終幻想的RPGのアイツみたいだ。


 つぶらで愛らしい目をしているが、クチバシは赤く、火の球を吐いてくる。結構強いぞ!



 飛んで来た球を刀で斬る。


「また、つまらぬ物を……って、アチィ!」


 両断された火の球が、二つに割れて顔をかすめた。そりゃそうか、気を付けよう。


 リュミは、氷雪のラウンドシールドで器用に受け止めている。盾の表面に当たった瞬間、火球は霧散(むさん)していく。かなりいい盾だったようだな。



 猛襲するヒハキドリの前に土壁を作って進行を阻む。そして反撃体勢を、と想ったら、土壁を文字通り蹴破って、突進してくる。速い! にしても、このスピードは侮れない。


 【兵は神速を尊(たっと)ぶ】、郭嘉(かくか)の進言に間違いはないな。

 実は俺は後漢・三国時代最高の軍師は郭嘉(かくか)だと想っている。諸葛亮は軍師と言うより名宰相(さいしょう)じゃないかな? まぁ、あくまで俺の考えであって、自称三国志通の反論は受け付けていないから、あしからず。



 とりあえず俺は、火球に対しては、[アクアウォール]で対処し、すれ違いざまに斬り伏せる。だが、その斬撃は鉤爪(かぎづめ)で受け止められる。意外に器用な奴だ。


 リュミは、盾を駆使し、剣を突き立てているが、羽毛が防具の役割を果たしているらしく、あまり効いていない。こいつら恐竜より厄介だぞ。



 仕方ない、俺は[紫電]での対応に切り替え、リュミも[シルバーショット]お使い始めた。



 よし、動きが鈍った。そこを同田貫(どうだぬき)の一閃で首を跳ばす。弱点かと想えた長い首も、覆っている羽毛でかなり強靭(きょうじん)だが、[剣聖術C]は伊達(だて)じゃない。刀を振りぬいた俺の後方で、倒れ伏す音がする。


 戦い方はわかった。もう恐くない。



 リュミは火球を吐こうと開いた口に剣を突き入れ、頭部を貫通させている。見事な刺突だ。さしもの奴ラも、リュミを捉え切れていない。さすが幻狼族の俊敏さは並じゃないな。




 何とかヒクイ、いやヒハキドリの襲撃を撃退し、先を進む。子犬大の魔獣も時々襲ってくるが、素早いだけで大した攻撃力は持っていない。鬱陶(うっとう)しいだけだ。



 数階下りると、空飛ぶ鳥も襲ってきた。空飛ぶ鳥ってのも妙な表現だがな。

 始祖鳥っぽいのじゃなく、でかい鷲(わし)みたいのがいる。どうやら、白亜紀から新生代に時代がシフトしているようだな。


 鳥相手って事で、B止まりだった風魔法を使っていこう。


 グレートイーグル:HP700/700 [ウインドカッター] 


 主にこいつとヒハキドリが手強い。その他は取るに足りんな。



 グレートイーグルの急降下攻撃と[ウインドカッター]に注意しつつ、[エアブレイド]や[ダストデビル]で対抗する。ゲームじゃ使用魔法と同系統の魔法には耐性があるものだが、現実にはそんな事はないらしい。まぁ、空飛んでりゃ風には弱いよな。




 そんなこんなで地下41の安全地帯に辿り着いた時には、風魔法がAに上がっていた。


 食事を終え、今夜はここで眠る事とし、休息モードとなる。



 俺は床に置かれた5つの物体を眺めて、腕を組んでいた。


 それは直径50cm弱の大きなたまごだ。実はここに来る途中、ヒハキドリのコロニーみたいな部屋があった。かなり奮戦して壊滅(かいめつ)させたんだが、その中央にこのたまごが置かれていた。思い返せば、これを守っていたような気がする。


 そう想うと、破壊できずに持ってきてしまったんだが……。魔獣のたまご? 俺は、魔獣は自然にポップするものかと思い込んでいた。ちゃんと交配して産まれるのか? だったら調子に乗って狩り過ぎたら絶滅したりするのか? 絶滅危惧魔獣とか魔獣愛護協会とかあるのか……。魔獣が絶滅して困るかどうかはよくわからんけど、貴重な素材とか採れるなら、滅ぼすのはまずいか。う~ん、考えモノだ。



「それ、おいしいの?」


 リュミがたまごをガン見している。

 ……食う気なのか? さすがリュミさん。食いしんぼキャラはブレないな!


 とりあえず、しばらくは[次元収納]に仕舞っておこう。うっかり食べられたら困るしね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。