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魔王の名を継ぐ者  作者: 無明流一刀斎
第四章 魔王雌伏

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第5話 ジュラちっくパーク?

 既に地下8をクリアし、さらに下に向かう。爬虫(はちゅう)類ゾーンはまだ抜けない。抜けないというか、50階全てが爬虫(はちゅう)類ゾーンだったらどうしよう。



 地下9も、爬虫(はちゅう)類なんだが……、こいつら恐竜か?


 体高が1.4m程度の小柄なトカゲが二足歩行で走り回っている。かなり素早く、鋭い鉤爪(かぎづめ)を持っている。なんか映画で見た、ラプトルとかいう恐竜っぽい。俺はあんまり恐竜には詳しくないからよくわからないんだが、恐竜博士だったケンちゃん、元気にしてるかな?

 ってか、ラプトルってあの映画以前は、聞いた事もなかった気がするが、俺が無知だっただけなのか? まぁ、鑑定しとこう。


 ヴェローサイラプター HP120/120 [シックるくろー] 鋭い爪と歯を持ち集団で行動する


 ……ほぼそのまんまやん。あの爪と素早さは警戒しないとな。個々は弱くても、数で押されると厄介だ。素直に1体ずつ相手にする必要はない。持ってて良かった範囲魔法!


「ファイアストーム!」


 火Bの範囲魔法を容赦なくブチかます。隣でリュミが、(うわぁ、いきなり使うんだぁ。最初は剣で戦ってから……) とか言ってるが、知らんな。



 炎の嵐の中、15体くらいのトカゲが燃え上がり、炭になっていく。それでも、仕留(しと)め損ねた5体くらいが燃えながらも襲ってくる。


 迎え撃とうとするリュミをよそに、[ダストデビル]を放つ。燃えてる相手に、つむじ風は有用で、さらに燃え上がっている。このコンボはアリだな。今後も使っていこう。



 なんかリュミがジト目で見てくる。戦闘民族には言いたい事の一つもあるんだろうよ。当然聞いてやらんがな。どんな手を使おうが、勝てばいいんだよ勝てば! それが紳士の美学だ。



 その後、リュミは、俺に魔法を使う暇を与えずに、突っ込んで行くようになってしまった。俺が悪かったから、強引に攻め込むのはやめてくれ!


 ……しばらくはリュミ無双が続き、俺は残った爪を拾うだけだった。


 そんな感じで地下15の安全地帯に辿り着いた。




 地下16からは、ラプトルや小さなイグアノドンっぽい対高3m程度の、イグアのリトルだけでなく、徐々に大きい恐竜モドキが出没する。



 今、俺たちの前にいるのは、20体程のラプトルと、マイクロバス大のトリケラトプスならぬ、トリケラノドンだった。もうトプスでよくね? HP800ある上、[突進]を持っている。



 鑑定が終わった瞬間、奴は[突進]をかましてくる。

 リュミが左に跳んだので、俺は……、と想ったら、そこにはラプトルの集団が回り込んできていた。さすがに速い!


 その一瞬の躊躇(ちゅうちょ)が、行動を鈍らせ、躱(かわ)すタイミングを逸してしまう。3本の巨大な角が眼前に迫る。


 俺は咄嗟(とっさ)に刀を水平に構え、刀身に左手を添(そ)えた状態で、角を受け止める。そして、接触の瞬間に地を蹴り、バックステップの要領で衝撃を殺す。


 衝撃を防いだのはいいが、そのままの勢いで押し込まれ、高速で背後にさがっていく。このままでは壁に挟まれて……。これ以上は考えたくないので、急いで対処する。


 トリケラノドンの鼻先に足を掛け、刀を軸に宙返りの要領で、巨大なその背に着地し、そこを蹴って、奴の後方へ跳ぶ。


 その直後、背後で爆発したような衝撃音が轟(とどろ)いた。



 振り向くと、そこは、もうもうとした砂煙で何も見えなかった。

 すぐにリュミが寄って来て、無事を確認してくる。肝が冷えたらしい。


 俺は、引き攣(つ)った笑みでそれに応え、砂煙に向かい、雷撃B魔法[サンダーストーム]を放ち、周囲にいたはずのラプトルを片付ける。

 全く見えないが、雷撃が複数の何かに当たり、甲高い断末魔(だんまつま)が聞こえる。


 俺たちは、数mさがり、身構えたまま煙が晴れるのを待った。



 次の瞬間、砂煙が晴れるのを待たず、何かがそこから飛びだして来た。それはまさしく、霧の中から現れたダンプカーのようだった。


 そしてそれは、俺たちの眼前で、派手に転ぶ。



 こんな事もあろうかと、砂煙の手前に、[クアッグマイヤー]を仕掛けておいたのだ。奴は泥沼に足を捕られ、見事に素(す)っ転んだのである。

 土魔法って地味だけど、自分に使われると嫌なのが多いよね。是非(ぜひ)率先して使っていこう。



 顔面から地面に突っ込み、ひっくり返った巨体の腹に、リュミネリアの刺突が見舞われる。そして、激痛に暴れるその喉を、俺の同田貫(どうだぬき)が斬り裂いた。


 さしもの巨体も胴と頭が分離されれば終わりである。魔獣だろうが戦車だろうが、この手の奴らは、上部外装は固いが、その分下が弱点ってのはテンプレだな。ひっくり返してしまえばこっちのもんだ。



 3本の立派な角は回収するとして、肉は……、とりあえず全部収納しとくか。持って帰って城の連中に聞けば、食える肉や役に立つ素材がわかるだろう。持ってて良かった[次元収納]。




 こうして恐竜モドキを片付けながら、既に地下25にまで来ている。調度半分って所か。 にしても、恐竜ゾーンが長い。ここはどこぞの、ジュラちっくなパークなのか?


 なげぇよ。いつまで続編出るんだよ! それに最近の映画や小説は、シリーズをナンバーで数えずにタイトルを変えてくるのが多いから、どれが何作目かわからなくなるんだよ。TVでやってても、前見たヤツの続きかどうかもわかんねえんだよ。ホントおじさんには生きにくい時代だったぜ。



 そして辿り着いたのが、でかい水溜(みずた)まり。これもやっぱり地底湖って言うのかな? ダンジョンを普通の地下洞窟と比べてはいけないんだろうけど。


 で、その中央に小島があり、そこにある台座っぽい所に何かが置かれている。……あれってもしかして宝箱か?


 よくはわからないが、いかにもってのが置かれている。別に無視して進めそうなんだが、あんなの見せられたら放置はできない。だが、絶対水の中に何かいるよね。



 覗いてみると、なんかでっかいワニみたいな影が見える。もしかしてモササウルスとかいうアレか? 日本にもいたとかケンちゃんが言ってたな。でかいワニだろって言ったら本気で怒られた。普段大人しい子が怒ると焦(あせ)るよね。懐かしい思い出だ。



「あれ、取ってくるの?」


 と、いきなり飛び込もうとするわんこを慌てて止める。


 水を救(すく)って舐(な)めてみると、やはり海水だった。モササウルスって海にいるイメージだしね。あくまで俺の勝手なイメージだけど……。



 なら、話は速い。水面に向けて、[サンダーボルト]をブチ込む。さらにぶち込む。それでもぶち込む。ぶち込むったらぶち込む。おまけに[ジュピターストライク]も落としてやった。


 そして待つこと、数十秒。十数匹の潜水艦並みにデカいワニモドキが腹を見せて浮かんできた。鑑定してみる。


 もぜーそーらす:HP420/1400 [水撃] 水中を高速移動する凶暴な魔物


 ……そのまんまでした。水に入らなくてホントに良かった。



「じゃぁ、行ってくるね」


 言うが速いか、リュミがモサの腹をぴょんぴょんと跳びながら島に向かう。イナバの素(しろ)わんこか? 皮剥(む)かれるなよ。



 島に着いたリュミを眺めながら気付く。確か宝箱にはトラップ付きのものもあるって聞いたことを。だが、時既に遅く、リュミは勢いよく蓋(ふた)を開けていた。


 ……。どうやら何ともないようだ。粗忽(そこつ)なわんこには後で説教だな。寿命が縮んだぞ。あれ、魔王に寿命とか無いんだっけか? とにかく心配させるなと言い聞かせないとな。



 リュミが戻ってから、モサにトドメを刺していく。これも全て回収だ。



 それから戦利品を確認する。小ぶりのダガーが2本とシールドが1つ、後はスクロールが何束かある。とりあえず、他に敵は居なさそうなので、休憩がてら鑑定しとく。


 魔鋼鉄の投擲(とうてき)短剣:[命中C]、氷雪のラウンドシールド:[火防御C][自己修復C]、そして[ファイア][ウォーター][エアブレッシング][アイスクリエイト]のスクロールだった。このスクロールは消費する事で、その魔法やスキルを修得することのできるAF(アーティファクト)らしい。魔術師系ジョブに着かなくても魔法を覚えられる便利なモノだ。


 結構沢山入ってたな、福袋か? 盾はリュミに装備させる。ダガーはそれぞれ1本ずつ持つことにし、リュミの革鎧にダガーホルスターを作ってやる。俺は[次元収納]から瞬時に取り出せるしね。リュミは器用だから、うまく使いこなすだろう。


 後はスクロールだが、全部生活魔法と言われてる類の物だ。持ってない[アイスクリエイト]は俺が貰い、後はリュミに修得させよう。……と思ったのだが、使い方がわからん。リュミも知らないらしい。


 知らないことは聞く。聞くは一時(いっとき)の恥だ。一生の恥にはしたくない。



 アレクサンドラ先制によれば、修得したい者がスクロールを持って、書かれているルーンを唱えればいいらしい。聞くまでもなかったな。まぁ先制の美声が聞けただけでも役得か。



 早速[アイスクリエイト]を修得してみる。おお、覚えたぞ。夏になったら多様しよう。


 じゃあ次はリュミだ。スクロールを広げるリュミの尻尾はブンブン振られている。生活魔法はいろいろと便利だからな。そりゃあうれしいだろう。いつか覚えさせてやりたかったからな、AF(アーティファクト)さまさまだ。これだけでも来て良かったな。



 ……。だが、なぜか動かないリュミネリア。石化のトラップでも仕込まれてたのか?


「おい、どうした、リュミ? 大丈夫か」


 顔を覗き込んでみる。


「……読めない」


 涙目のリュミ。ルーン文字は読めなかったらしい。教えてないしな。俺は[全言語理解]とかいう、ずるっこしてるからな。ごめんよ、リュミ。



 結局、横で俺が読んでやり、それを複唱する事で、何とか修得できた。


 リュミはご満悦(まんえつ)で、火を出したり、出した水を飲んだりしている。今夜、おねしょするなよ!




 それにしても、氷雪のラウンドシールドか。リュミが使ってたスモールシールドはそろそろ限界だったから調度よかったんだが……。ゲームとかだと氷系の防具が手に入ると、火を吐くモンスターとか現れるよな。まさか……、ね。

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