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魔王の名を継ぐ者  作者: 無明流一刀斎
第三章 魔境彷徨
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第5話 最奥に待つもの

 翌朝、軽く朝食を取ってからこの部屋を出る。ちなみに、リュムとPT(パーティー)を組む事はできなかった。アレクサンドラいわく、鑑定できない相手は無理なんだそうだ。まあそりゃそうか。言われてみれば納得できるんだがな……。なんで鑑定できないんだろうな?



 地下3をサクッと終わらせ、地下4へ下りる。気を引きめよう。


 この階には、ホブゴブリンに混ざって、ダークゴブリンが現れた。だが、全て名無しだ。ゲロルとは比べ物にならない。ホブゴブリンよりは強かったけど。

 厄介なのは闇魔法を使うことだが、[ダークネス]を連発してきたが、光魔法の[ブライト]で対応できたので問題ない。


 落とす武器もショボく、拾う価値もなかった。4時間ほどかけて、全フロアを探索し、魔物を狩り尽くす。


 少し休憩してから地下5へ下りる。順調だな。


 ああ、この時点で、剣士がLv.20になったので、剣術がAに上がった。なんか一端いっぱしの剣士になった気分だ。

 現れたゴブどもに、(うぬらの細腕で、この魔王が斬れるか?) とか言ってみる。子連れだしね。


意味はわからなくても挑発されたって事はわかるみたいで、なんか『ギャアギャア』 さわいでた。

 リュムの視線が痛いので、程々にしておこう。




 地下5に下りて、少し驚く。雰囲気が一変していた。1から4階は全体が土壁で洞窟のようだったのが、ここに来て急に人工的な石壁になった。まるで地下遺跡のようだ。


 ゲームのダンジョンでは、階によってデザインが全く違うってのはよくある事だが、現実では違和感が半端ないな。それに要所要所に松明たいまつが燃えている。このフロアはゴブリンどもの居住区なのか? って事は、ダンジョン探索もそろそろ大詰めなのかもな。リュムにも警戒を指示しておく。



 いてくるゴブリンたちを次々と斬り倒しながら進む二人。このダンジョンに入って一体どれだけのゴブリンをほうむったんだろうか? ゴブリンの怨霊おんりょうとかに取りかれたりしないよな? かれたらどうしよう。是非、美人巫女さんを仲間にしておきたいな。当然白小袖(しろこそで)緋袴ひばかま白足袋しろたびゆずれない! 今から作っておこうかな。紳士には決してゆずれないものがあるんだよ。



 密かに幸せな未来を夢見ながら、各所にある部屋をのぞいていく。どれも小汚く悪臭の立ち込める部屋だが、時々有用な部屋もある。


 おお、ここは宝物庫カ? 宝石がいくつも置かれている。ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズに紫水晶と結構いろいろな種類がある。勿論もちろん全て収納する。


 ……いいだろ! 勇者だってやってるんだ。魔王がやって何が悪い! 



 他の部屋では金や銀、魔鉱石も見つけた。どっから集めて来たんだ? そして武器庫を見つける。と、言ってもほとんどガラクタだけどな。


 ホントろくなの無いな、と思ってたら、奥に置かれた箱を見つける。開けてみると、銀色の刃をもつ小剣が入っていた。形状からレイピアか?

 鑑定してみると、真銀のショートレイピア (自己修復B)(刺突速度向上C)とあった。


 ……真銀ってミスリルか? マジで宝箱じゃん。スゲェの見つけた。これ絶対お高いよね。当然頂いていく。いかないわけがない。悪く思うなよ!



 入口からダークゴブリンが4体駆け込んで来る。いい物貰ったお礼に[サンダーボルト]をプレゼント! 


 余程よほどうれしいのか、青白い稲妻とともに踊り狂っている。


 俺、たぶん今悪い顔してるだろうな。(あんた人間じゃないよ!) って? 俺は魔王なんだよ! ゴブの物は俺の物! 俺はジャイアニズムを継承けいしょうしていくのだ。




 とりあえず、このフロアの敵を一掃いっそうしてから少し休憩する。手に入れた武器をどうしようか、やはりリュムに装備させるべきだろうな。


 ゲーむじゃあるまいし、ダンジョン内で見つけた使い慣れない武器をいきなり装備するなど、愚行にも程があるが、このショートレイピアは、リュムの戦闘スタイルに合っている。

 今はナイフを使っているが、斬るよりは、むしろ突きを好むみたいだしな。元々魔王城に戻ったら、レイピアかエストックを見繕みつくろうつもりだったからな、調度いい。



 リュムに持たせるが、今度は拒否しない。むしろうれし気に使い勝手を確かめている。しばらく稽古けいこの相手をしてやると、だいぶコツを掴んだようだ。ナイフはリュックに仕舞しまい、腰に新たな獲物をびる。ショートレイピアのはずなのに、普通のレイピアに見える。大きくなれよ。




 さてと、このフロアも片付いたので、次を目指そう。だが、フロアの中央辺りにあった下り階段は、今までの物とはまるで違っていた。そもそも横幅が今までの階段の3倍程ある。しかもホブゴブリンが4体警備していた。

 下に何があるのか知らないが、重要な場所である事は間違いないだろう。まずは警護兵を片付ける。



 リュムが新しい武器の試し斬りがしたいらしいので、2体を斬り捨て、あとは任せる。だが、今のリュムには、ホブゴブリン2体では物足りないようで、ほぼ一突きで倒していく。

 リュムの動きも格段に上がっているが、真銀のレイピアの性能も相当のようだ。



「この剣、すごくいいよ。今度はもっとたくさん相手する!」


 ……どうやら、今宵のリュムは血にえているらしい。こいつはどんどん戦闘狂になっていく気がするな。誰のせいだ?




 二人並んでゆっくりと階段を下りて行く。

 そこは大広間のような場所だった。そして、その奥には1体の初見の奴と、数十体ものゴブリンどもがいた。しかもほとんどがダークやホブだ。

 どうやら総出で待ち構えていたようだ。熱烈歓迎とは痛み入るね。



 早速[鑑定]を使う。


 名前:ゲロイラ 種族:エルダーゴブリン 性別:女 年齢:312歳 ジョブ:[魔術師Lv.43] スキル:[詠唱短縮][魔力量向上B] 魔法:[水A][氷結C][闇a] 称号:[ゴブリン女王] 武器:[樫のワンド] ……ゴブリン女王って、ボスキャラか。レベル高っ! 数多いよ、そこまで歓迎してくれなくても……。



「リュム、ザコから片付けるぞ。魔法に気を付けろ! まずは敵を倒す事よりも攻撃をかわす事に専念しろ」


 そう言いながら、俺は一斉に迫って来るゴブリンどもに向け、[ファイアボール]を放つ。轟音ごうおんとともに、吹き飛ぶザコゴブリン。やっぱり[ファイアボール]でザコを吹っ飛ばすのは、ファンタジーの醍醐味だいごみだよね。一度やってみたかったんだ。


 以前森を焼いた事は、俺の記憶から消去されている。人はそうやって前に進んで行くのさ。そして同じ過ちを、また繰り返す。

 ……リュムの視線が痛いので、このくらいにしておいてやるか。



 リュムがホブゴブリンの一隊に向かったので、俺はその他の連中に[サンダーボルト]をお見舞いする。部屋の中だってのに、天井から無数の稲妻が降り注ぐ。うん、この魔法はエフェクトが派手だよな。最近のお気に入りだ。どんどん使おう。



 群れてくるゴブリンどもに魔法をぶち込みながら、リュムを確認する。8体程のホブゴブリン相手に走り回り、動き回り、相手を翻弄ほんろうし、確実に仕留しとめていっている。


 魔法攻撃は物理攻撃と勝手が違うのか、時々跳んでくる[ダークネス]はかわし損ねる事もあり、視覚を奪われているが、そもそもこいつは視覚よりも嗅覚と聴覚で周囲の空間と敵を認識しているようで、特に動きが鈍る事もない。

 俺が[ブライト]飛ばして対処するまで問題なく戦っている。



 やはり厄介なのは、エルダーゴブリンの氷結魔法[アイシクルショット]だ。無数の氷柱つららを飛ばしてくるこの魔法は、水魔法の上位魔法である氷結魔法だけあって、一撃の威力が半端ない。まともに喰らったら致命傷になりかねない。


 とりあえずリュムと奴との直線上に[ファイアウォール]を出し、その直後に奴めがけて[ファイアボール]を飛ばす。奴は咄嗟とっさに[アクアウォール]で防ぐが、周囲にいた護衛は吹き飛んで燃え落ちる。



 そうこうしている間に敵の数は減り、リュムも自分の受け持った敵を全滅させ、こちらに合流してくる。特に外傷などは無さそうだ。剣からは血をしたたらせている。


 俺も最後のダークゴブリン2体を斬り捨て、ゴブリン女王に向かい合う。



 ラノベなんかじゃメスゴブリンは、ゴブリナとか言って、美少女だったりするが、……所詮しょせんゴブリンはゴブリンだった。


 まあ、日本のファンタジーモノでは、ダークエルフを始め、男は醜いが女は美形なんていう男本位の種族設定がされていることが多いが、あまりにも無理があるよな。そもそもエルフが種族的に美形なんてのも日本のファンタジーの特性ではなかろうか? 俺がリア厨の頃に読んだ[指輪物語]では、エルフはかっこ良かったが、決して全員美形なんて設定は無かった気がする。俺の中でエルフ=美形って認識が生まれたのは、[ロードス島戦記]以降だったと思う。今思えば、ディードリットやピロテースが俺にとって最初期の二次嫁だったな。まだラノベなんて言葉も無かったが、俺が国産ファンタジー小説にドハマリしたのは、あれからだった。ホント懐かしいな。

 って、んな事考えてる場合か!




「貴様ら、よくもわらわの臣たちを! ゆるさぬぞ!」


 ゴブリン女王が怒りを込めて、吐き捨てる。さすがに魔人の女王、ちゃんと喋れるらしいな。

 それにしてもわらわって……。まあ、何語かは知らんが、[全言語理解]が俺にわかるように翻訳してるんだろうから、わらわの使い方が間違ってるとかはどうでもいいか。んな事いちいち突っ込んでたら、きりないしな。



 ゴブリン女王、ゲロイラだったか、は呪文を詠唱し、右手に持ったワンドを降り下ろす。すると大量の水が津波のように押し寄せてきた。[タイダルウェーブ]とか唱えてたな。

 咄嗟とっさに[アースマニピュレート]で壁を作る。


 直撃は避けたが、壁を回り込んだ大量の水に押し流され、後方の階段に叩きつけられる。全身が痛いが、抱きとめたリュムは何とか無事だ。


 リュムは一瞬心配げに俺を見るが、何も言わずに跳び出し、左右に跳ねつつ、ゲロイラの魔法の照準をズラしながら突撃する。


 その間に俺は、[ヒール]で回復し、[ライトニング]を放つ。


 それをワンドで弾いたゲロイラにリュムの刺突が襲う。だが、間一髪で跳び退すさかわすゲロイラ。



 俺たちの連携は以前とは比べ物にならない程、上達しているが、奴の動きも負けてはいない。さすがに女王おはってるだけはある。ゴブリンってこんなに強いの?



 ゴブリン女王と俺たちの激闘の音が、地下の大広間に響き渡っていた。

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