第5話 現代魔王の基礎知識 其之弐
アレクサンドラ先生による個人授業は続いていく。
さっき[透視]で見てしまった魅惑の裸身がチラついて集中が……。いや、堂々と透視すればいいのだが、バレるのがわかっててそれはさすがに。透視しながら授業受けても多分表情一つ変えずに流してくれるんだろうけど、俺だって罪悪感の欠片くらいは持ってるんだよ。
「では次は[紫電]ですが、これは短距離用電撃攻撃スキルです。ご存じでしたか? 先代魔王様は【雷哮のラングリード】の異名で呼ばれる程、雷撃魔法を得意としていらしたのです。その名を受け継がれたラングリード様も、雷撃魔法は得ての良いモノとなりましょう。ゆえに雷撃魔法の派生スキルである[紫電]が最初から使えるのです。扱い方は手に魔力を込めて、[紫電]と念じれば手から電撃が発せられます。攻撃スキルや魔法は理屈より実践で使ってみた方が良いでしょう」
おおっ、手から電撃! これはカッコイイかも。しかも技の名前を大声で叫ばなくてもこっそり念じるだけで使えるとは、シャイな俺向けの能力だな。
何だよ、お前らだってできねえだろ、そんな恥ずかしいこと。何て事ない技の名前を、大声で叫んでいた昭和のヒーローたちは偉大だった。ライダーキーっく!
「そして[創造錬金]のスキルですが、これも先代様の得意としたスキルです。これは自らの魔素を物質化して新たな物を造り出したり修復したりするスキルです。本来、無から有を生み出す事はできません。それを魔素を使って代償させるのが錬金スキルです。[錬金]とは魔素を使ってある物質を別の物質に変質させる技術ですが、[創造錬金]は新たに造り出す上位スキルとなります。勿論未知の物は作れませんが、ある程度その製造法や構成素材を認識していれば、現在この世界に存在しない物を造り出す事も可能です。覚えていらっしゃるでしょうか? ラングリード様の割れたサングラスを先代様が修理されたのを。あれはその素材を[鑑定]で解析し[創造錬金]で修復したのです」
あれがそうだったのか。何かスパークしたような音がしてたけど、あんな一瞬でできるもんなんだな。俺もできるようにならないとな。
「ラングリード様、お疲れではありませんか? お疲れのようなら休憩を入れますが、いかがいたしましょう?」
「いや、せっかくだから続けてくれ」
「わかりました。では魔法ですが。ラングリード様は既にいくつかの魔法を習得しております。本来魔法とは、魔術師などのジョブに就いた者が修得するか、[スクロール]などから会得するものなのですが、何せ魔王様ですので、このくらいは当然ですね」
何が当然なのか、いまいち良くわからんが、魔王って言葉を都合良く使い過ぎじゃないのか?
「魔法にはDからSまでのランクがあり、経験を積んでランクが上がれば、その分上位の魔法を使えるようになります。ラングリード様は[火][水][風][土]の四元素魔法と[光][闇]という6つの基礎魔法を習得していますね。そして本来[火]と[風]のランクをそれぞれA以上に上げなければ習得不可能な上位魔法である[雷撃魔法]を既に習得しています。先代様から引き継いだものですね。あとは[治癒魔法]が使えます。これはおそらく[飲食不要]や[無呼吸活動]、[毒無効]、[自然治癒能力向上]などとともに、[女神の茶飲み友達]の称号による女神の加護かと。汚らわしい限りです」
最初から気にはなってたんだよ、このふざけた称号。何だよ[女神の茶飲み友達]って。確かに女神と茶しばいたよ。しかも何だ彼んだ言って楽しかった。機会があればまたやりたいが、まさかじじばばみたいに茶飲み友達認定されてたとはな。ホント友達いないのか、あのポンコツ。
それにしても、この妙に強力な加護といい、あの杖といい、ちょっとサービス過剰じゃないのか? さては俺に惚れたか? モテる男は辛いぜ!
「では、魔法を1つずつ確認していってください」
よし、まずは[ヒ]からっと。ファイア:着火、ファイアアロー:ヒ矢、次は[水]、ウォーター:水生成、アクアショット:水撃、ウォッシュ:洗浄、アクアウォール:水壁、[風]は、エアブレッシング:浄化の風、ウィンドカッター:風の刃、[土]、アースマニピュレート:大地操作、ストーンバレット:石つぶて、[光]、ライティング:照明、[闇]、ダークネス:暗闇、[雷撃]、ライトニング:雷光、ショックタッチ:接触電撃、パルスショット:電磁弾、サンダーボルト:範囲落雷、[治癒] ライトヒール:回復小、トリートメント:体調改善、アンチドート:解毒、メンタルキュア:精神正常化。
何かいろいろあるな。
「どうでしょうか、ご不明な魔法はありますか?」
「そうだな、[ウォッシュ]と[エアブレッシング]それと[アースマニピュレート]かな」
「はい、[ウォッシュ]も[エアブレッシング]も、汚れを除去する効果があります。[ウォッシュ]は水洗い、[エアブレッシング]は浄化の風でキレイにするのですが、敢えて使い分けるなら、体や衣服の汚れは[ウォッシュ]、部屋や空間の汚れは[エアブレッシング]を選ぶのが良いかと。あと[エアブレッシング]は空間の匂いも消してくれるので便利ですよ。[アースマニピュレート]は大地を平らにしたり穴を掘ったりできます。野外で休む時などに有用です。どれも生活魔法に分類されるもので使い勝手の良さから多くの冒険者が覚えたいと望む魔法です」
「なるほど。そうだな、後は実際に使ってみるよ」
「はい、それがよろしいかと。それと、魔法のランクが上がるとさらに強力な魔法を習得できるだけではなく、既存の魔法の威力も上がります。また、[雷撃魔法]のような上位魔法の習得必須条件を満たすことにもなりますので、魔法ランクは積極的に上げるように心掛けてください。ランクを上げるには、その系統の魔法を使い戦闘経験を得ることです。余裕があれば、いろいろな魔法を駆使して敵を倒してください」
最初から生活魔法を覚えているのは助かるな。ここに来るまでに使えたら、野宿がどれだけ楽だったか。これからはどんどん使っていこう。特に俺には身体や服をキレイにできる魔法は有難い。早速使ってみる。
[ウォッシュ]、……あれ?
「如何いたしましたか?」
「ああ、試しに[ウォッシュ]を使おうとしたのだが、上手くいかないんだ」
「では、口に出して唱えてみては如何でしょうか」
「わかった。ウォッシュ!」
おお、何か体が洗われているような感じで気持ちがいい。シャワー後みたいな感覚だ。
「それが[ウォッシュ]です。魔法とは本来精密な魔法陣を利用して、魔力を実体化させる技です。魔術師はその魔法陣をスペルに変換し、それを唱える事で代用します。ですが、この複雑なスペルを深く理解し、常用会話のように自在に操れるようになれば、短縮したスペルで済ませたり、魔法名のみを唱えて力を顕在させる事ができるのです。これを詠唱短縮や詠唱破棄などと呼びます。ここまでできるようになれば、魔術の達人として高い評価を受けます。そして、その域を脱した超越者は、もはや詠唱すら必要なく念じるだけで魔法の行使が可能となります。ラングリード様はむ詠唱で魔法を使う素養がありますが、そもそも魔力を認識したばかりなので、しばらくは練習がてら名称のみでも口に出して唱えてみては如何でしょうか? 魔法の極意はイメージ力です。名前を口にする方が、イメージしやすいと思いますよ」
「うん、わかった。いきなり達人ぶった俺が悪かった。これからは恥ずかしくても名前を唱えるようにしよう。小声でだけど……」
「では最後に称号です。これは何か偉大な事を達成したり、これまで誰も成し得なかった事を行った時などに得られます。また超越的な存在から認められた場合などにも得られるものです。そして大抵の称号には何らかの効果やスキル、つまり加護が付与されます。[次元超越者]の[次元収納]や[女神の茶飲み友達]の女神の加護のようにです。[魔王継承者]は先代魔王のスキルや魔法を引き継ぐ事が加護と言えましょう」
ステータスウインドウについて一通りの説明が終わる。意外にボリューム満点で正直疲れた。何杯目かのお茶を飲み干し、天井を見る。
「お疲れ様でした。拙い説明で申し訳ありませんが、現時点での説明はこれで終了とさせて頂きます。後はご自分でいろいろと試されるのがよろしいかと思います。その際、わからない事がありましたら、その都度お聞きください」
「ああ、ありがとう。そうさせてもらうよ」
「それと先代様より、明日からは実践の基礎訓練を始めるとの事です。簡単な戦闘方法を教授し、その後は実際に魔物と闘ってレベルを上げる事になります。では、夕食ができましたらお呼びしますので、それまでは、ご自由にお過ごしください」
と、言う事なので、俺は自由に過ごす事にする。何しようかな? うん、とりあえず探検だよね。大丈夫だよ、女湯や女子更衣室なんて探さないからね。偶然アレクサンドラの寝室とか発見しちゃったらどうしよう。しっ下着なんかに興味無いんだからね! ホントだよ。
「探検! 発見! ボクのじゃない城~♫」




