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魔王の名を継ぐ者  作者: 無明流一刀斎
第二章 魔王誕生
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第1話 分析と再構築

「フハハハハ、我こそは、魔王ラングリードなるぞ!」


 ……。うん、恥ずかしい。ってか、全くしっくりこない。何だよ魔王って! これ、堂々と名乗れる程慣れるには、100年くらいかかるぞ。いや、100年経っても慣れたくない。紳士にだって羞恥心はあるんだよ。いや、紳士はみんなシャイなあんちくしょうさ。




 今、俺は魔王城に与えられた自室にいる。自室といっても客間だ。魔王の名を受け継いだからって、この城の主になったわけじゃないからね。



 あの衝撃的な襲名しゅうめいから2時間程経った。一息つき、落ち着いた今、俺は激しく後悔している。何だよ魔王って、イタ過ぎるだろう。雰囲気と勢いに流されて承諾した自分が恨めしい。こんなの生きていけねぇ。恥の多い人生を送ってきましたってレベルじゃねえよ。太宰だざいじゃなくても自殺考えるわ~!


 ハァッ、ハァッ、ハァッ、ごめん、取り乱した。とりあえず落ち着こう。


 そう、俺は魔王ラングリードと出逢い、あれこれあった後、意気投合し、夜通し酒をみ交わした挙句、魔王の名とその力を受け継ぐ事になってしまった。


 なぜ? なっちゃったんだから仕方ないだろ。見返りが魅力的過ぎたんだよ。目の見えない俺が、見えるようにしてもらえるって言われたら、例え毒入りだとわかってても喰らいつくのを誰が責められる?



 と、いうわけで、ここ1時間程一人でもだえていたんだが、そろそろ覚悟を決めよう。やっぱなしっとか言える雰囲気じゃ無いしな。あの魔王に怒られるならまだしも、もしも泣かれたりしたら……。よし、俺も男だ、腹はくくった。



 一通り騒いで落ち着いたのを待っていたかのように、部屋にアレクサンドラさんが訪れた。


「失礼します、魔王様。少しよろしいでしょうか?」


「魔王なら来てないよ。って、もしかして俺のこと?」


勿論もちろんです、魔王様。それともラングリード様とお呼びしたほうがよろしいですか?」


 正直、どっちもやめて欲しい。勇者呼びもキツかったが、魔王呼ばわりされるとは……。


「いや、呼び方はもうどうでもいいです。で、何のご用ですか、アレクサンドラさん?」


「ラングリード様こそ、サン付けはご勘弁ください。私は既に貴方様の忠実な臣なのですから」


「ハァ、そう言われてもなぁ。それにあなたはあいつの家臣なんでしょう?」


「はい、ですがあのお方の名を継いだ貴方様の臣でもあります。二君に仕えるのは心苦しいのですが、あのお方が健在の間はどうかお許し頂きたく、曲げてお願い申し上げます」


「いや、それは別に構わないよ。むしろ無理に俺に仕えなくても。いや、そりぁ、あなたみたいな人がそばに仕えてくれるなら、こんなうれしい事はないんだけど」


「クスクス、ラングリード様、私のような者にそのような世辞は不要ですよ。うっかりその気になってしまいます」


 くぅ、早くこの人の顔を拝みたい。よし、今からは呼び捨てだ!




「では、こちらにお越しください」


 そう言われ、俺は別室にいざなわれる。少し暖かく、湿気の多い場所だ。


「では、失礼致します」


 って、へ? 何と彼女は俺の服を脱がせだした。しかも見事な早業はやわざで。


 完全に言葉を失った俺に彼女は説明を始める。


「これよりラングリード様の肉体の分析を行います。まずはここで身体を洗浄し、阻害要素を除去します」


 その後も続いた彼女の説明を要約するとこうなる。


 ただの人間に魔王の力を宿やどらせるのは、大海の水を無理矢理壺に注ぐようなもので、すぐに、パリンってなっちゃうらしい。何それ、怖過ぎる。で、そのための対処として、俺の肉体を耐えられるように再構築する必要があり、そのためにはまずは身体を正確に分析する事から始めるとのこと。分析するならまずキレイにしないとねって……。



 説明を受けている間に、既にマッパにされて洗われていた。一応自分で洗うって主張はしたよ。即、却下されたけどね。




 で、俺はアレクサンドラに全身をくまなく洗われている最中だ。ホントに隅の隅まで。もう、お嫁に行けなくてもいいや、グスン。全くここは何の店だよ。いや、ボクそんなお店行った事ないから、どんな事されるのか、さっぱりわからないんだけどね。ホントだよ。


 とかやってるうちに、身体を流され終了した。なんか荒れてたかかとや指先の皮がツルツルになってる。このお湯、水酸化Naって事ないよね?



 そしてガウンのような服を着せられ、隣室に移動。座らされた所は、……ベッドでした。ホントここ何のお店? 俺金持ってないって知ってるよね。知らないのかも、どうしよう。



「では、これより分析を開始致します。ラングリード様の身体を全て調べますので、ご不快かもしれませんが、どうかお許しください」


 そう言うと彼女は俺のガウンを脱がせた後、シュルシュルと音を立てている。これって衣擦きぬずれだよね? マジ? 何このシチュエーション! ホントにいいの?



「失礼します」


 そう言うと彼女は俺の頭を両手で支え、右目のまぶたに口付けをした。固まる俺。

 (青いそのまぶたを唇でそっとふさぎましょう♪) そうか、彼女は聖母だったのか! じゃぁ、もしかして、小さな子供の昔に帰って、熱い胸に甘えていいの? ララバイが聞こえる。



 そのまま彼女は唇と両手で俺の身体をくまなく触れていった。大きな二つの膨らみが俺の身体に当たっている。俺の経験上、ここまで豊満な女性の身体に触れるのは初めてだ。もう、完全に下半身が誤魔化ごまかせるレベルを越えている。



 そして、彼女はささやく。


「次は内面と体液の分析に移ります。どうかその身をおゆだねください」




 これ以上は語るまい。でも多分想像通りの展開だったと思うよ。俺も本当に久しぶりだったからな。考えたら、失明してからは一度も無かったな。本当に久々に女体の素晴らしさを実感した。



 そして彼女は俺から少し身体を離し、そっと告げる。


「全ての分析は終了致しました。不愉快な思いをさせ申し訳ございません」



 そう言う彼女を俺は抱き寄せ、再び口付けする。そして強引にベッドに引き寄せた。


「ふふフッ、私のような者を求めてくださるとは、本当にうれしく思います。このような身体でよろしければ、存分にお楽しみください」



  ◇  ◇  ◇



 気付いた時、俺は自室のベッドで眠っていた。夢だったのか? とも思ったが、ベッドから起きると、ガウン1枚だったので夢では無いらしい。


 ハァ、久し振りだからってなぁ。年甲斐としがいもなくあんなにがっつくなんて、紳士とした事が。でも10年ぶりの女体だったんだ。一度じゃおさまらないのはおとこならわかるだろ。わかってくれるよな!




 そして毎度の事ながら、全てを見越したかのようなタイミングで来室するアレクサンドラ。


「お目覚めですか、ラングリード様。ご気分はいかがでしょうか?」


 いかがも何も、あんな事して気分が悪いはずがない。かといって、当人相手に、(最高でした!) とも言えない。



「あの、その、何と言うか、すみません。あんな強引に……」


「その事でしたら謝る必要などありません。主に求められるのは悦びであり栄誉です。このような身でよろしければ、お好きな用にお使いください」



 アレクサンドラが妖艶ようえんに微笑む。つやのある黒髪、美麗びれいな顔立ちと知的な瞳。ゆったりとしたローブに隠した豊満な肉体。ハリウッド女優も真っ青な美女と俺は何度も……。


 ん? 今何か引っかかった。何がおかしい? どこもおかしい所などない。彼女はパーフェクトに美しい……って、何で見えてんだ、俺?


 何がどうなっているのか、誰か教えてくれ。俺は見ている! アレクサンドラを! この部屋を! 見える! 見えるんだ! 見えてるんだよ! 


 オイ、何落ち着いてんだよ、お前ら! もっと驚け! クールぶっても無駄だぞ、驚きまくってんのはわかってるんだからな! ビックリ! ビックリ! 今日は朝からビックリカーニバルだ! ……ハァっ、ハァっ、ハァっ。いや、落ち着くのは俺か。



「ア、アレクサンドラ! これは一体……、どういう事だ? 夢、夢なのか? 俺はまだお前の胸で眠っているのか?」


「いえ、ラングリード様。貴方様はちゃんと目覚めておりますよ。実はあの分析から既に、3日経っております。その間に、ラングリード様のお身体の再構築は終了致しました。貴方様は魔王としての肉体に生まれ変わられ、先代様より、その能力を受け継がれました。。当然、その双眸そうぼうも魔眼として再構築されております。おめでとうございます、ラングリード様。新たなる魔王様の誕生を心からおよろこび申し上げます」


 そう言いながら、アレクサンドラは見事な所作しょさひざまずいた。

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