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フィーの感情はさておき…。
問題はこれからだ。
ドニカがどうしたいのか――やはりナホミの所へ戻り、これまでと変わらず絡み付くつもりなら、フィーだって黙っていない。
現代日本では無理でも今のこの世界でなら、低位貴族令嬢の一人や二人、どうとでもなる。
勿論、望んで取りたい手段ではないが、敵に情けを掛けてやれるほど余裕がある訳でもない。
「それで?
この先、貴方はどうしたいのです?」
「っ……」
問われたドニカは、自分で自分の胸元をギュッと握りしめて唇を引き結んだ。
依存し、自分の拠り所となっていたナホミと距離を取る……言うのは簡単だが、本人にとっては辛い選択だろう。
例えナホミが、ドニカを都合よく操っているだけだと、薄々気付いていたとしても、苦しい筈だ。
沈黙が続く。
窓越しに見る外は、すっかり暗い色に取って代わられていた。
「………」
やはり、ナホミと決別する気はないようだ。
可能性は考えていたが、フィーにとって最悪の選択である。とは言え、それもドニカの決断だ。
操り人形で居る事を是としたのなら、フィーは…アンネッタと公爵家の為……一番に自分の給金の為に動く。
離れる決断をしてくれたなら、ドニカの身の振り方は考えようと思っていたが、そうでないのなら容赦はしない。
けれど、ドニカを消す算段をするのも、正直に言えば気が重い。
思わず溜息が漏れそうになった時……。
「……でも……捨てられちゃった……。
戻って来るなって……。
結果が出せるまで戻るなって……でも、結果なんて出せない…。
どうにかしたくても、エネオットに会えないんだもん……」
ずっと堪えていた涙が、ドニカの頬を滑り落ちた。
でも表情は穏やかで、苦みを含みながらも弱く微笑んでいる。
これは、まさかまさかの……まさかな展開が期待出来そう!?
フィーは思考が弾み掛けるのを感じ、自分を諫め、落ち着かせるために深呼吸をする。
(落ち着いて、落ち着くのよフィー。
そう、戻らないと言ってくれるなら、私は手を汚さなくて済むし、WIN-WINになれるはず!
だから落ち着いて話を進めましょ…。
そう、エネオットの事も……今は耕作さんだけど、それ以前のエネオットも、彼曰く、侍らせていた女性全員が恋愛対象ではなかったみたいだったわよね?
最悪、お嬢様との婚約をなかったものにして、旅…は兎も角、せめて臣籍降下でもしてくれるなら、ドニカの押し付け先の候補にもなったけど、あの分ではなぁ……。
と言うか、ドニカ本人はどう思ってるのかしら…?
もし本当に恋愛してるなら、それはそれで…って、まずは確認しないと!
けど、その前に……)
「一つ、名で呼ぶのはいけません。
『王子殿下』と呼称するのが良いでしょう」
フィーの指摘に、ハッと顔を上げたドニカは目をパチクリさせてから、頬を赤らめた。
「ご、ごめんな、さい。
そう、よね。
なんで、名前で呼ぶ事がいけない事だってわかってたのに……あたし」
(おや?
もしかしてドニカ本人は、実はヒロインに相応しい性格だった?
ま、ヒロインの座に返り咲かせる気なんて欠片もないけど、生来の性格が捻じ曲がっていないのなら、矯正の余地はある!……と思う、多分…。
まぁ実際、性根が腐りかけていたケルナーだって、何とか真っ当な道に戻れたんだし、ふむぅ、これは……本当に光明が見えてきたかもしれない)
「次から気を付けて下されば問題ありません。
さっきも言ったように、此処には貴方と私だけですので」
「……うん」
涙の跡が残ったまま、それでもドニカはふわりと微笑んだ。
その顔を見て、フィーは固まった。
(うっ……か、可愛いじゃないのさ!!
あのドギツイ化粧と、素っ頓狂な髪型がなければ、普通に可愛いじゃない……。
ナホミの美的センスは壊滅的よね…。
ドニカへの嫌がらせじゃなく、素であのセンスなら終わってるわ。
ま、ナホミ本人は普通だったし、やっぱり嫌がらせ…よね?
……って、あぁ、嫌な人物がまた……根岸リーダーも、個性的なセンスの持ち主だったわね……はぁ。
真っ赤な総レースの…舞台衣装みたいなワンピース着て会社にきた時は、本気で頭の心配しちゃったし…普段は平凡なのに、何か気張ると方向がおかしくなると言うか、頑張れば頑張るほど終わってる……って、そうじゃない、あの人の事は脳内削除しないと!
そしてちゃんと確認しないと!!)
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