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「その…王子殿下に会う為に、雨の中一人で…?」
「……うん。
ナホミに結果出せって言われて……あたしはエネ…王子殿下を落とさなきゃいけないって言われてたから。
幸せになりたいなら、婚約者から王子殿下を奪わなきゃいけないって…。それがナホミの幸せにも繋がるからって……。
だから王宮に行ったんだけど、門番の人にダメだって言われて…」
なるほど…理解した。
門番による阻止がなければ、耕作の所に凸ってたようである。
彼等は職務を全うしただけではあるが、それでも言わせて貰おう…。
グッジョブであると!!!
フィーが密に門番達へ称賛を送っていると、そんな事に気付いていないドニカは溜息を零した後、俯いて双眸を伏せた。
これまで、以前の優しかった頃の面影を追い、必死に縋ってきたナホミと、こうして暫く離れ、雨に打たれた事で頭が冷えたのかもしれない。
「それで、貴方はこれからどうしたいと考えていますか?
王子殿下を諦めず、お嬢様…オファーロ公爵家に弓引き続けますか?」
静かなフィーの問い掛けに、伏せた双眸を一瞬見開いてから、ドニカはギュッときつく閉じた。
「あたし……あたし、どうしたらいいんだろ……。
だって、もうどんなに頑張っても、ナホミは……あたしを振り返ってくれない…」
堂々巡りになってきた……。
心情的にわからなくはないが、話が先に進まないと困る。
「お聞きしますが、貴方は本当に王子殿下を慕っていらっしゃるのですか?
先程から聞く限り、貴方の気持ちは何処にもない様に受け取れるのですが…」
「慕う…エネオットを……?」
ぼんやりと鸚鵡返しで呟くドニカだったが、直ぐに自分でハッとしたように目を見開いた。
「ぁ、王子殿下…。
んと……慕うって、好きかどうかって事?
……別に嫌いじゃない…と思う…うん。
でも、それだけ…かもしれない。
ナホミに言われて、王子殿下となら幸せになれるんだって、あたしも幸せになって良いんだって思った…。
けど、あの人はあたし…ううん、あたしだけじゃない、女の子全員を見てなかったなって思う。
だって、ずうっと自慢話ばっかり。でも、時々王宮の話とかも聞かせてくれて、あたしは楽しかったよ。
並んで、綺麗なドレス着て、美味しいモノ食べて……本気で憧れたけど……でも…。
………でも、隣に居るのが王子殿下じゃなきゃいけない……って事は…なかったのかも…」
ドニカは泣くのを堪える様に、顔をクシャリと歪めた。
「……バカみたい…。
あたし…自分の為に利用しようとしたって事…?
王子殿下を…?
…あれ…あたし……」
守ると決めたのは、アンネッタと公爵家、そして自分。だからフィーはもう一押しする。
「そうですね。
王子殿下だけではなく、貴方は側近の方々、何よりお嬢様…公爵令嬢を自分の為の踏み台にしようとしていたのです。
やっと理解出来ましたか?」
「………ぁ、ぁぁあ…」
誰もが自分の幸せの為に、他者に犠牲を強いる…そんなのは実の所、珍しくもない光景だ。
日本でだって、詐欺や浮気なんて聞かない日はなかったと言える程、日常に溢れていた。それ程に、欲深く節操なしな人間が多いのだろう。
だからフィーも、守りたいモノの為に、自分の両手で髪を引き掴むドニカに向けて、更に言葉を重ねる。
「自分の夢や理想を追う…それは普通の事です。
そしてその結果、誰かを傷つけてしまう事もあるでしょう。
でも、貴方は一方的に絡み、嘘や諸々まで加えて攻撃しました…それは人として許される事だと思いますか?
この国で許される事だと思いますか?」
フィーだって噓くらい吐いた事はある。
進んで誰かを傷つけたり、貶めたりするつもりはなく、自己保身だったり、その場を取り繕う為だったり……。
そんな細やかな嘘を、生涯ただの一度も吐いた事がないと言い切れる人は、多くはないと思いたい。
だが、ドニカとナホミの行動が、問題だらけなのは間違いないだろう。
フィーは自分の内側に浮かぶ、少しばかりの矛盾にそっと蓋をした。
結局は視点の違いだ。
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