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悪役メイドだなんて言われましても困ります  作者:


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101



 ドニカは声をあげて泣き始めた。

 シーツに顔を(うず)め、慟哭の叫びをあげ続ける。


 今はそっとしておくしかないが、こんな状態のドニカを放置して、邸に戻るのも躊躇われる。

 いや、別に構わないのだが……一人にした途端、自死でも選ばれたら、それこそ寝覚めが悪いではないか…。


 フィーは諦めの溜息を一つ、こっそりと零して、引き寄せた椅子に腰を下ろした。



 気付くと、ドニカは泣き疲れたらしく、寝息を立てていた。

 顔色はあまり良くないが、ドニカの額にそっと手を当てれば、熱はすっかり下がり、今も落ち着いているようだ。

 病み上がりの微かな(やつ)はあるが、後は寝て食べれば回復するだろう。


 少しくらいなら離れても大丈夫そうだと考え、看病の為に借りていた(たらい)等の返却に向かった。

 そう言えば何も食べていなかった事を思い出し、ついでに残り物でも…と考える。


 ドニカにも何か食べさせた方が良いが、それは目覚めてからで良いだろうと、 自分用にパンと水を貰って、部屋に戻った。

 ベッド脇の椅子に再び座り、もそもそとパンを食べていると、シーツの擦れる音がする。


 顔を巡らせると、ドニカの瞼が薄く開くところだった。


「調子はどうですか?」


 フィーの声に反応して、ドニカはゆっくりと視線を動かす。

 寝起きで状況が理解できていないのか、表情は虚ろなままだ。


 だが、それも直ぐに払拭された。

 目の焦点が合い、ドニカは困惑交じりに視線を揺らす。


「えっと…あたし…」

「気分はどうでしょう?」

「気分……ううん、もう大丈夫…です」


 『おや?』と、フィーの方が目を(みは)る。

 言葉遣いの変化に気付いたが、ドニカは腐っても男爵令嬢…貴族だ。

 平民でしかないフィーに対して、して良い言葉遣いではない。


「ドニカさん…いえ、ドニカ様、私に対し敬語は不要です。

 御存じだとは思いますが、私は平民です」


 そう言うと、ドニカは弱々しく首を振って眉を下げた。


「あたしだって、平民とかわんないもん…ううん、それ以下だったもん。

 ナホミが来てくれるまで、あたし……ゴミ箱を漁ってたの。

 父さんも母さんも、お兄ちゃんも、あたしを家族と思ってなかったから。

 …汚れたり腐ったりしてない食べ物なんて、ナホミが来てくれるまで、あたしにはなかった…。

 ね?

 あたしって平民以下でしょ?」


 悲し気な微笑みに、フィーは咄嗟に言葉が出ない。


「だから、あたしに『様』なんかつけないでよ。

 そんな柄じゃないし、敬語だってやめてほしい……」


 フィーは困ったように眉根を寄せて少し考え、諦めたように肩を落として息を吐いた。


「……はぁ、じゃあ今だけ、ね。

 この国には身分制度があって、それは(ないがし)ろに出来ないのよ」

「あは…そうだった。

 そうだったよね。

 それなのに、あたしったら……なんで…」


 そのまま黙り込んでしまったドニカだが、少ししてボソリと零す。


「あたし……えっと、何だっけ…そう、ふ、け?

 あぁ、そう不敬だ。

 ……その不敬とかってので、牢屋に連れて行かれる?

 処刑、され…ちゃう…?」


 少し落ち着いて、今後に不安が出てきたのだろう。

 エネオットに対する態度は、当時の彼が何も言っていなかったのなら、恐らく大丈夫だろう。

 現在は中の人は耕作になっているし、耕作の意識なら、ドニカだけを責めるような判断はしないと思われる。


 他の令息令嬢に対しても、彼ら彼女ら自身の行動言動にも問題があったのだから、そこを突けば投獄にまでは至らずに済むかもしれない。


 問題はアンネッタ…いや、正確にはメナジア夫人だ。

 多分だが、アンネッタはドニカに対し、特にこれと言った感情はないかもしれない。


 ゲームシナリオ通り、エネオットに恋心があったとしても、アンネッタ本人はまだ自覚していないし、(はた)から見れば政略以外の何物でもない態度言動だ。

 だから『処罰するか?』と問いかけても、興味もないだろう。

 それにあの様子では、耕作の方から破棄か白紙化を言ってきそうなので、あまり突かない方が良いかもしれない。


 しかしメナジア夫人は違う。


 愛娘を傷つけられ…アンネッタ本人はあまり頓着していなさそうだったが……公爵家の面子も潰されていたのだ。永久凍土も真っ青な、極冷対応を覚悟した方が良いだろう。







ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。


誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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