98
ポツポツと喋り始めたのは良いが、何度か恨み節の様な呟きが混じるのは勘弁して欲しい。
「ナホミが……あたしにはナホミしか…」
ドニカは俯いて、弱々しく肩を震わせる。
顔は見えないけど、声が潤んでいて、必死に泣くのを堪えているようだ。
「敵なの…アンネッタは……だから、アンタも…。
それなのに、何でアン、タしか…居ないの…」
こんな事になって、ドニカも感情がコントロール出来なくなっているのだろうが、もう…本当に色々と突っ込みたい。
特に何かした記憶はないのに……いや、前世以前の記憶が戻った事で、邪魔になる前に葬り去ってしまおうかと、ほんのちょっぴり思った事はある。
しかし、シナリオ改編の弊害が怖かった。
力技でストーリーを捻じ曲げる事で、分岐が読めなくなるのも困りものだと諦めた。
心底、ドニカの言い分は、言い掛かり…酷い冤罪だと言わせて貰いたい。
見知らぬ高位令嬢を、敵視できるのも不思議だ。
他にも……敬称もなく呼び捨てにする等、言語道断である。
等々と、突っ込みどころが満載すぎて、脳内は目まぐるしく明滅し、咄嗟に言葉が出てこなかったのは幸いだ。
フィーが感情を表出させてしまえば、話の腰を折る事になるし、ドニカが口を噤んでしまうかもしれない。
とりあえず今は『黙して耳を傾ける』に専念しよう、そうしよう……そうするべき、だ…く、くそぉ……いや、落ち着くんだフィー!
家族に、家族として扱われなかった。
幼い頃は、父親は仕事もせずに遊び歩いていた。
母親も、ドニカにとって兄である息子だけを可愛がるようになり、居ない者として扱われるようになっていた。
そんな時、ナホミがモーソー家にメイドとしてやって来て、それからはナホミが傍に居てくれるようになった。
けれど優しかったナホミは、突然、人が変わったようになり……それでもナホミに見捨てられたくなくて、一人ぼっちに戻りたくなくて、必死に言うとおりにしていた。
………ドニカの話は、ある程度想定内だった。
モーソー家の館がある地区の、露店通りの顔役の一人であるノギーからも、ざっくりとは聞いていたので驚きも少ない。
しかし、ナホミの人格が急変したのは何故か……やんわりとドニカに聞いてみるが、よくわからないと言う。
物理的に頭を打ったとか、そういった事故等もなかったように思う…との事だ。
(途中で人格が変わったのなら、転生にしろ憑依にしろ、余程の衝撃があった…と言うのがお約束よね?
そう、エネオットと言うか、耕作さんのように頭を打ったとか……あぁ、私も生死の境を彷徨って……うん、頭も打ってたかもね……尤も、今世の記憶はそれ以前から消失してたけど。
でもナホミには、そう言った事故のような何かはなかった……勿論ドニカも幼くて、忘れてしまっただけかもしれない。
(ん~~~…事故じゃないけど、衝撃的な何か……。
ぁ…嫌な想像をしてしまったわ。
父親は女遊びが激しいらしいから、その…つい…ね…。あぁ、息子の方も問題あるんだったっけ、確か横柄に育ったとか何とか…。
深く追求するのは止めましょ。
切っ掛けに同情の余地があったとしても、今はドニカを操り、あのシナリオのようにお嬢様を陥れる女性だもの。
思い出したせいか、ナホミに根岸リーダーが二重写しみたいに被って見えちゃって……はぁ。
何と言うか……耕作さんの話で根岸リーダーの事を思い出してしまったのよねぇ……まさかその根岸リーダーの弟クンに、世界渡りをした先で出会うとは思ってもみなかったけど。
ま、もう会う事なんてないのが普通だし、さくっと忘れないと。
と言うか、自分の鈍感さに呆れてしまうもの。
最初の標的にされてた癖に、虐められていた自覚がなかったんだものなぁ……やれやれだわ、哀れだわ、鈍すぎるわ……自分で自分が情けない…)
何故か自己憐憫に苛まれるフィーであった。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




