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ルルも、空気感がおかしな事になっていると気が付いたようで、口をへの字に曲げる。
「む…」
ルルから漏れた唸り声に、セルは苦笑を深めた。
「それはそうだけど……だからって女性を…それ以前に人を鑑定と言うのは……。
流石にそれは不味いって、疎い僕でもわかるよ。
それに生体鑑定って、種名とか…聞けばわかる様な事しかわからないし……しても無駄じゃない?」
「あ~…そっか。
人間なら、ざっくりと人間種、名前…後は出ても身長体重くらいしか出ないか……くう、良い案だと思ったんだけどな」
フィーは咄嗟に俯いた。
今、表情や態度を見られるのは不味い。
(…噓でしょ?
え…生体鑑定って、種名なんかの一部しかわからないの?
セル様の魔法量、技量もだけど、相当なものよ?
なのに、それだけ……?
じゃあ私が使う鑑定魔法って……何なの…?
状態とか色々と、視えちゃうんですけど…)
俯いたままのフィーを不審に思っていないのか、セルが困ったように尋ねてきた。
「でも八方塞がりなのも本当だよね…。
フィー、鑑定してみても良い?」
コロッと真面目な表情に変えて、セルはフィーに視線を投げる。
問われたフィーの方は…と言うと、別に視られる事自体は構わない。視られて困る事なんてないからだ。
前世以前の記憶持ちだとか、その辺は困るかもしれないが、それだって信じてくれるのであれば、話しても構わないと思っている。
しかし、恐らくだが、その辺は視えないのではないかと思っているのも本当だ。
兎に角、自分の動揺は見抜かれないよう、細心の注意を払って顔を上げてから、ゆっくり『どうぞ』と頷いた。
セルの魔力が、自分に向けて伸ばされるのを感じる。
とは言え、別に不快な魔力ではない。
この辺りは、もしかすると、フィー自身の感情も影響しているかもしれない。つまり嫌いな人物が術者なら、不快に感じる可能性があると言う事だ。
とはいえ、この『魔力を感じ取れる』事そのものも、こうなるとあまり一般的ではない可能性がある。
だんまりを決め込んだ方が吉だろう。
薄い膜越しに、セルの魔力が柔らかく包み込んでくるのを感じるが、当のセルはと言うと、何やら難しい表情になっていた。
さっきの話だと、種族とか名前とか、言葉で聞いた方が早いだろうって事くらいしかわからない…と言っていたが、そうではない事もあるのだろうか?
しかも、どんどんとセルの表情は暗くなっていく。
これは『きゃ~推しの魔力よ!!』なんて、内心喜んでいる場合ではない。
「あの…セル様?」
フィーの声に、ルルとシャフも顔を上げた。
「セル?」
「どうなさいました?」
3人からの声に、セルはハッと顔を上げ、一瞬考え込む。
それから少しして、やっと首を横にゆっくりと振った。
「ぁ、ぃゃ…なんでも……なんでもない…よ」
「ははぁん、その表情だと結局何にもわからなかった…って事だろ?
ま、仕方ないよな…でもそうなると…」
ルルが納得した様に呟き、シャフもそれに同意なのか、表情から緊張が抜け落ちていた。
だが…と、フィーはまだセルから目を離さない。
(結局分からなかった…それなら想定通りの筈で、あんな暗い表情になるものかしら?
どちらかと言うと、セル様にとって良くない何かを視た…そんな感じよね…。
私の気の回しすぎなら、それで良いのだけど……)
今後の探索方法を話し合っているルルとシャフから、顔を背けるセルの表情は、やはりさっきより暗さを増している気がする。
視線を外せないでいると、流石にセルも気付いたのか、弱々しい微笑みを浮かべた。
「何でもない…何でもないよ。
フィー、君が気にする事じゃない。
大丈夫。
きっと大丈夫……僕は…」
フィーは微かに眉根を寄せる。
多分、他からは表情に変化はないように見えているだろうが…。
(違う…。
私に言ってるんじゃなく、自分に言い聞かせてる?
どうしてそんな表情になっているの…どうして話してくれないの?
一体……私に何を視たの…?)
そう問いかけたいのに、唇は張り付いたように動かなかった。
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