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後から…と決めていたフィーだったが、馬車から転げるように出てきた2人に、流石に苦言が口を突いて出る。
「お嬢様、若様…往来の場所でそのような振舞い……流石に看過できません。
大声を出すのは勿論、窓から身を乗り出し、挙句、手を振る等以ての外です」
冷温気味に発された言葉に、アンネッタとケルナーは同時に『うっ』と唸った。
「でも……ううん、ごめんなさい。
フィーの言う通り、令嬢として、はしたない振舞いだったわ」
しゅんと萎れて、アンネッタが目を伏せると、ケルナーもバツが悪そうに目線を彷徨わせる。
「あ~っと…うん、ごめん。
私もつい。
ただ、本当に心配してたんだ。それは本当だから」
ユーミもそうだったが、アンネッタやケルナーから向けられる感情に、とても擽ったいものを感じて、フィーの方が眉尻を下げた。
「お気持ち、とても嬉しく思います。
しかしお嬢様、若様の今後に影響してしまう可能性は否めません。
どうぞ公の場での振る舞いは、細心の注意を払ってください」
「えぇ、わかったわ」
「うん、肝に銘じておくよ」
本当に素直で優秀な令嬢令息に育ってくれたものだ…と、感慨深い。
その場はそれで終わらせておく。
ユーミにも言われた様に、事情を説明する必要はあるだろうが、あのドニカ絡みの話を、態々始業前にする事もないだろう。
二人を校舎内へと促して見送ると、フィーはセルの部屋へ急いだ。
公爵家の二人が到着したと言う事は、そろそろ始業間近だと言う事に他ならない。
「おはようございます」
「おはよう、今日もよろしくね」
「よう」
「おはようございます」
フィーが挨拶すると、セル、ルル、シャフが、挨拶を返してくれる。
「今日は2枠目からだから、まだゆっくりしててくれて良いよ」
セルが微笑みと共にそう告げたが、ならば、その時間はフリーと言う訳だ。
「でしたら、その時間は私も探索に向かいたいと思います」
そう、いい加減『ガヴォッドラーヘン』こと『かぼちゃらーめん』の、探索の手伝いもしなければならない。
勿論、ドニカを操っていると思しきナホミの動向も気になるが、ドニカは現在此方の手の内だ。
少しばかり後回しになっても問題ないだろう。
それに主人公武器を、さっさと見つけ出してセル達に引き渡してしまえば、ヒロインと思われるドニカが手にする可能性なんて綺麗さっぱり消え去ると言うものだ。
それは結果として、アンネッタや公爵家の未来に影が差す恐れが減という事。
そう考えていたフィーに、ルルが『お』と声を漏らした。
「じゃあ今日は分担できそうだな。
これまで学院敷地の北側、倉庫とかがある方は探したんだけど、これと言って手掛かりなし。
で、そろそろ西側の森と言うか、林の方を見てみようかって話してたんだ」
「わかりました。
西側の森林部分の探索ですね」
フィーが答えると、セルが少し窺う様に言葉を挟んでくる。
「探索は兎も角、あれからフィーは何か思い出したりしてない?
名前を聞いた時の事とか」
セルの問いに、ルルとシャフの視線も、フィーに集中した。
確かに『そのものズバリ』な単語を、不用意に呟いたフィーの失態ではあるが、やはり事実を話す事は難しい。
いや、ある程度は信用しているし、話すのは構わないのだが……やはり、どう考えても信じて貰うのは厳しいだろう。
困ったように唸るフィーに、ルルが何か思いついた様だ。
パッと笑顔をセルに向ける。
「そうだよ!
セル、フィーを鑑定してみるってのはどうだ?」
フィーも含め、ルル以外が目を見開いて固まった。
「ほら、フィーの出自も調べてみようって言ってたじゃん?
で、今の所、フィーの髪色の調査は芳しくないだろ? 一応ずっと北とか西に、そう言う髪色の平民が居たような…みたいな文献は探せたけど。
けどさぁ、そのエリアって今は何にもない、荒地になってる場所みたいだなって話してたじゃんか」
やや前のめりになって言うルルに、セルは困惑気味に眉尻を下げる。
シャフに至っては、呆れたような、残念な子を見る様な、そんな視線をルルに向けていた。
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