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しっかり者で、理知的。
やや冷ややかな所はあるが、それも貴族としてならごく普通の事。
それ以上にエネオットに対して寛容……それも、ゲーム内のアンネッタは、エネオットに対して情があるからだ。
(……確かに理想の姉…と言えなくもない。
一応ゲーム内の彼女は、エネオットに恋してた訳だけど、単に一人の人物として見た場合は……そうよねぇ、少なくとも耕作にとって根岸リーダーよりは、ずっと理想的だったでしょうね。
となれば、現代日本人の思考を持つ身としては、姉ポジの人物と婚姻なんて、ちょっと厳しい…のかもなぁ。
お嬢様も恋い慕ってる風ではないけど、少なくとも嫌悪感が隠せないって程ではないし、些少なりとも恋心と言うか情があるのなら、外圧で引き裂くのは…と思ったけど……これは無理強い出来ないか…。
それはそれとして……)
「そこは…まぁ今は置いておくけど、さっき旅に出るとか言ってなかった?」
「うん。
だって折角の異世界だろ?
堪能しなきゃ、勿体ないじゃん」
えへへと笑うエネオットに、フィーは呆れ返る。
「念の為に聞いておくけど、まさか一人で旅に出るつもり?
現実を見てから言いなさいよね…。
悪いけど、エネオットの技量でボッチじゃ、王宮から出た時点でお先真っ暗よ?
オワコンなの、わかる?
魔法は、魔力はあってもそれだけ。剣技なんてからきしで、剣を3分も持ってられない。
それで、その顔……どうやって身を守るつもりよ…。
前世日本の治安を期待してるなら、砂糖菓子よりも甘い考えだと言わせて貰うわ」
「う”………」
途端にしおしおとしょぼくれる耕作に、つい閉口してしまったが、同時に深く思考に囚われた。
(旅……。
孤児院から公爵家に来る事になって、自分の食い扶持確保、シナリオ警戒とそれからの脱却にばかり意識が向いてたけど……。
そうよね、折角の異世界転生…。
しかも、私なら身の安全確保は問題ない。
路銀も、これまでメイドとしてのお給金は、使い道も特になかったから、ほぼ手つかずで残ってる。
セル様やルルさんが、記憶を失った私の事を調べてくれるって言ってたけど、本人が手掛りすら覚えてないんだもの……実際、あまり期待はしていない。
だったら異世界堪能しながら、自分探しと洒落込んだって良いんじゃないの?
調べた事なかったけど、この世界には冒険者ギルドみたいなのって存在してるのかな?
してるなら早々に登録しておきたいかも……ぁ、勿論お嬢様と公爵家の安全が確認出来たら…だけど。
セル様達の探し物の事もあるし、直ぐには動けないだろうけど…)
そんな現実的な事を考えながらも、新たに見え始めた可能性に、思わず口元が緩む。
だが、そんな気の緩みを諫めるかのように、扉の方からノックの音が響いてきた。
少し乱暴に響くその音に、フィーと耕作はハッと顔を見合わせる。
そして無言で頷きあい、そっとフィーは物陰に身を隠した。仮にも王子の部屋だから、強引に押し入って来る事はないと思うが、一応警戒しておいた方が良いだろう。
「(殿下、殿下!!)」
扉越しのくぐもった声は、フィーも耕作…この場合はエネオットだろうが、どちらも聞き知った声だ。
「…………。
う、煩いんだよ…帰れ…。
帰れったら帰れよ!!
もう、ほ…放って置いてくれッ!!」
フィーがこの部屋を訪れた時と似た反応だが、側近であるデービーに対してもこの反応だったのか…と、今更ながらに耕作の抱え込んでいた不安と戸惑いに、少し胸が痛くなった。
「(……わかりました。
じゃあ報告だけ……殿下は気に入ってたみたいですし。
ドニカ嬢が行方不明みたいです。
聞いて、わたしも近辺は探してみましたが、まだ…。
では失礼します)」
遠ざかる足音が、すっかり聞こえなくなってから、緊張を解いた耕作が不安そうにフィーを見る。
「えっと…どういう、事?
俺…俺が探した方がいいの?
って…とっても失礼なんだけど、低位の令嬢だから、踏ん反り返って自慢話がしやすかっただけみたいで、別に気に入ってた訳じゃないんだけど…」
耕作が問いかけてくるが、フィーの方はそれどころではない。
(はぁ!!??
なんでドニカが??
いや、確かにナホミに押さえつけられてる様子は垣間見た…あ~聞いたけど…まさか、それが原因とか…言わないわよ、ね?
って『ナホミ』…………『直美』……はは、まさか、ね。
それこそ、まさか!! よね…)
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