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それなら、このまま婚約継続に目を瞑り、いずれアンネッタが王子妃になるのを、眺めているのも良いかもしれない。
それはそれとして、周囲に女性の影がある間は、アンネッタに近付けるつもりはない。
「そう。
恋愛感情はないとするなら、今後は侍らせていた女性達とは縁を切る、という認識でОK?」
「それは当然だよ。相手の女の子達にも悪いしなぁ。
って言うか、まずそんな深いお付き合いした女の子は、一人も居ないみたいだぞ?」
そう零した耕作は、記憶を遡っているのか、右上を軽く見上げて、顎先に右手を添えている。
フィーが促した訳ではないが、他の女性と一線を越えていないと言う情報は、とてもありがたい。
後々の後継問題に発展しそうな要因は、可能な限り排除しておきたいと言うもあるが、尻軽女に穢れた男に、アンネッタを委ねる気にはなれない…と言うのもあった。
「つーか…。
自慢にならない自慢話を、踏ん反り返って聞かせてるだけだ……なんて言うか、俺……これからこいつとして生きなきゃなんないの?
罰ゲームにしても、酷過ぎね?」
頭を抱えて正直な感想を吐露している耕作だが、そう言いたくなるのもわかる気がする。
耕作としての意識が戻ったか、憑りついたか知らないが、ここまで話していて耕作は普通に常識ある人物のようだ。そんな人物が、あの『エネオット』の過去を背負って生きていくのは、かなり辛いものがあるだろう。
黒歴史…程度ならまだしも、人によっては暗黒、いや漆黒かもしれない歴史になるのだ。
気の毒だが仕方ない。
将来、彼の妃として嫁ぐであろうアンネッタの為にも、これからは品行方正に生きて行ってもらいたいものだ。
うんうんと、一人納得した様に頷いていたフィーに、思いがけない言葉が飛び込んでくる。
「ま、俺は王族なんて柄じゃないし、両親の希望通り、妹に継承権譲って出奔、これだよなぁ」
フィーはピシッと固まってから、『は?』と無駄に低い声を漏らした。
「いやぁ、折角の異世界転生? もしかすると憑依かもだけどさ、折角異世界に来たんだ。
あちこち旅してみたいって思うじゃん?」
「……あ?
待て待て…貴方、継承権を譲るって……王籍から抜けるって言うの?」
「へ?
いや、普通に考えて、ド庶民な俺に為政者なんて務まると思う?
無理無理」
へにゃっと笑って、耕作は顔の前で手をヒラヒラと横に振る。
「無理って…じゃあ婚約者はどうする気よ!?
アンネッタは…お嬢様は、現在進行形で貴方の婚約者なのよ??」
「あ~…まぁ王籍抜けるとか言ったら、普通に破棄とかになるんじゃないの?」
耕作の、暢気、且つ想定外の言葉に何とか耐えはしたが、膝から頽れそうになった。
「アンネッタが可愛いとか言ってたじゃない…。
そんな可愛い女の子との婚約よ? 勿体ないって思わないの!?」
ぶっちゃけ、エネオットが真面になってくれるのなら、アンネッタの嫁ぎ先として、一番ではないかもしれないが、優良である事は事実なのだ。
衣食住の心配はないし、これまでも婚約者として公務も一部になっていたアンネッタだ…仕事方面にも不安はない。
それなのに、こいつときたら……。
「ん~、確かに可愛いって思うけど、相手が俺なんて可哀想じゃん。
だって『エネオット』だぞ?」
うん、何てことない文言なのに『エネオットだぞ』と言う言葉の破壊力よ…。
しかし、それとこれとは話が別だ。
「可愛いって言葉は嘘だった訳?
好みじゃないとか言う?」
「いや、可愛いって思うのは本当だし、好みかどうか…ん~…まぁ、好みの顔かな」
「だった「なんて言うか、容姿はバッチシなんだよ。でも、彼女って言うより理想の姉って感じでさ。俺の実姉が実姉だろ?」ら!……あ~…あぁ、そう…」
フィーの言葉に被さってきた耕作の言葉には、フィーの勢いを殺すに十分な威力があった。
確かに『根岸直美』が姉だったのなら……芙美子として、直美の一部しか知らないが、その一部だけであれだけ強烈だったのだ。
そんな姉を持つ弟だった彼からすると、ゲーム内のアンネッタは、理想の姉に見えたかもしれない。
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