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しかし、何故エネオットもとい耕作が、不機嫌になっているのだろう。
ヒロインサイドに悪感情を持ってしまった芙美子が、苦り切るならわかるが、耕作は育成部分だけで、シナリオはあまり知らないようだった。
「えっと…どうか、した?」
恐る恐る声をかけると、耕作はハッとした様に顔を上げて表情を緩め、誤魔化すように後頭部を掻き毟る。
「ごめ…。
いやさぁ……あのヒロインって、似てたんだよ」
似てた……誰に?
そんな疑問が表情に出ていたのだろう…耕作は困ったように眉尻を下げて苦笑した。
「その…姉ちゃんに…。
あいつも、なんかいっつも上からだったんだよな。
俺が好きで後から食べようと思ってたアイスとかも、『いつまでも食べないなんて嫌いなのね~、仕方ない、あたしが食べてあげるわ~』とかさ…」
姉の真似だろうか…気持ちの悪い、くねくねと身体を捩らせる動作を一部交えていた耕作が、急にスンと真顔になり、妙にドスの効いた声で呟く。
「あ~うぜぇ……。
上から目線なのも嫌だったけど、どっかズレてるっつうか…妙に自分に自信があるっつうか……絶対に自分は正しくて、周りが悪いって思い込んでんだよな…。
あんな性格だから、周りから嫌われまくってたんじゃないかな。
嫌われるなんて可愛いモンじゃなく、被害者居たはずだし…、本音を言うと、俺も関わりたくなかったし」
『姉ちゃん』と呼んでいるから、てっきり、なんのかんのと言っても仲良し姉弟だったのかと思いきや、どうやら違ったようだ。
それにしても『被害者』とは…穏やかではない。
「関わりたくなくて、大学合格を機に一人暮らしして家から出たんだよ。
ま、おかげでバイトに追われまくってたけどな」
なるほど…バイト三昧だったせいで、あまり関わりたくなかった姉からの代行話に乗っかっちゃった…と言う所か…。
「関わりたくない…と言うのを反故に出来るくらい破格だった?」
「かなり……いやまぁ、時給換算したら大した事ないのかもだったけど、ゲームは苦痛じゃないし、何より5万だぜ、5万!
翌月の食費浮くじゃん!」
外見がエネオットなのは『ちょっと…』だが、実に庶民的で親近感がわいてしまう。
「で、こっちはこんな感じだけど、そっちは?」
耕作に問われて、そう言えば名乗ってもいなかったと思い出す。
「ぁ…あぁ、名前も言ってなかったわね。
芙美子、織田芙美子って言うの。
こっちでの名は知ってるだろうけど、フィーよ」
フィーが前世の名を告げると、一瞬、耕作が怪訝そうに眉を顰めた。
そして徐に首を傾げた後、何故かビクンと大きく跳ねて固まってしまう。
そんな反応をされて、フィー…この場合は芙美子の方だろうが、思い当たる節がなく疑問符を浮かべるしかない。
「お、りた…ふみ、こ……も、もしかして…おりたって…機織りの織に、田んぼの田って書く?」
それがどうしたのだろう?
確かに読み方としては一般的ではないかもしれないが…。
「そうだけど、それが何か問題あったりする?」
本当にわからなくて、きょとんと聞き返せば、突然、耕作は綺麗にジャンピング土下座を決めた。
思わずギョッと身を引いてしまうフィーに、耕作は床に頭を付けたまま叫ぶように続けた。
「ごめん!!
本当にごめんなさい!!
あのクズ姉に代わって謝る!!」
何事だ?
芙美子として生きていた時、多分だが耕作と面識はなかったと思う。
だから…ご近所でもなかったと思うのだ。
つまり彼の姉とか言う、ちょっと癖の強い人物とも面識があったとは思えない。尤も、名前しか聞いていないから、面識と言うのもおかしな言い方だとは思うが…。
浮かんだ疑問をそのまま、少し引き気味に伝えると、耕作はゆっくりと上体を起こし、床に正座したままフィーを見上げて頬を指先で掻いた。
「それは…そっか、同姓同名の他人かも…だよな…。
けど、俺はその名前を、姉ちゃんが口にしてるのを聞いた事があったんだ…」
「どういう事を言ってたの?」
「えっと…」
耕作は、やはり正座のまま、記憶を探る様に視線を跳ね上げた。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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