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今後の彼の事を考え、部屋に入り込んだまでは良いが……。
「ぅ……ぅぅ、ふぇ、ぅ…」
とうとう、しゃくりあげ始めてしまった。
中身は知らないが、見た目は中高生くらいの美少年だ。
思わず憐憫の情が湧いてしまう。
推し神は、今の所ダントツでセル、仕える主人はアンネッタ…それに変わりはない。
しかし、これまで手を焼かされていた悪ガキが、一転して震える子羊の様な弱り切った姿を晒していると、つい小動物に対する庇護欲みたいなものが、ちらりと顔を覗かせてしまった。
前世はわからないが、少なくとも現在のフィーとしては、自分の方が年齢も下だし、身長も低いのに、背伸びまでしてエネオットの頭を撫でてやる。
撫でられた方のエネオットは、一瞬ビックリしたように目を見張っていたが、すぐにまた目を潤ませた。
「……お…俺……」
エネオット…中の人と言うか、表出している人格の名前はわからないままなので、とりあえずエネオットとしておくが……彼はそのまま言葉を詰まらせ、俯いてしまう。
色々な感情や言葉が渦巻いて、彼自身、何から話せば良いのかわからないのかもしれない。
フィーは少し考え込んでから、ふぅと息を吐いた。
落ち着くのを待ってやりたい気持ちはあるが、流石に時間が勿体ない。
「それで、どう言う状況なのですか?
殿下は別の人物の記憶がある……そう言う認識で問題ありませんか?」
心情を慮って婉曲に、やんわりと尋ねても良いが、通じなければ困るし、通じてもズレが生じては後々問題になるだろうと、フィーはダイレクトアタックを選択した。
問い掛けに、俯いていたエネオットはゆっくりと顔をあげ、フィーをじっと見つめる。
「……その…君も…?」
しおらしく問い返す様子は、これまでの彼と、あまりに違いすぎて調子が狂う。
「まずは私の質問に答えて頂けますでしょうか?」
「ぁ、うん…ごめん」
素直過ぎて、違和感が半端ない。
「えっと……そんな畏まった言い方されても俺…」
中の人が『エネオット』だけでなく『この世界』も、まだ受け止めきれていないのだろう。
ネルローネの聞いた呟きから察するに、ほぼ間違いなく日本人。
中の人が、身分制度がないとされる日本から来た人物なら、急に身分がどうのと言われても、馴染めないのも理解出来る。
「……ん~~、じゃあ今だけ…。
一応、貴方はこの国の王子殿下ですか…ぁ、えと、王子だから、外に出たら無理だけど、今だけ…ね。
で、前世の記憶があるのよね?
名前とか覚えてる?」
彼も落ち着いてきたのか、手の甲で涙を拭うと小さく嘆息してから話し出した。
「うん…。
名前は耕作って言うんだ」
そこで一旦言葉を切った彼…耕作に、話を続ける様に促す。
「えっと、大学生だった。
一応エネオットとしての記憶もあるよ。だから頭ではわかってるんだ…。
周りが傅くのも…けど、俺自身はただの貧乏学生で、講義とバイトに追われてたから、こう…うまく言えないんだけど、色々と受け付けられなくて…。
ってかアレ何!?
なんで着替えとか……一々他人に手伝って貰わなきゃなんないって、頭おかしいだろ!?」
感情のままに、彼は捲し立てた。
それも、フィーの方が引き気味になる程、前のめりに……。
「まぁ、わからないではない…かな。
で、ズバリ聞くけど…『流恋』について聞かせてくれる?
シナリオは何処まで知ってるの?
それと、どういう考えなのかも……一応ヒーローな訳だし」
フィーはすっと目を細めて、反応を窺う。
「シナリオなぁ…実を言うと、そっちはよくわからないんだ。
いや、少しは流し見てたんだけど……俺は戦闘とかの作業ばっかりだったんだよ」
「どう言う事?」
エネオット…今は耕作と呼んだ方が良いか…名前からも想像できる通り、男性だったようだ。
フィーこと芙美子には、乙女ゲームを男性がするなんて…とかいう偏見はない。
女性だって18禁ギャルゲーが大好物なんていう人もいるだろうし、男性でもBLおなしゃす、な貴腐人が居たって問題はない。
少数派である事は否めないだろうが…。
だから耕作が乙女ゲーム大好き系であっても、まったく文句はないのだが、彼の言い方からすると、少し違うような気がする。
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