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なるほど、理解した。
確かにフィーが投げ飛ばした事は、彼の引き籠りの原因ではないと言えそうだ。
しかし……それはそれで不味い結果になりはしないだろうか?
そう、例えば……。
(転倒はどうしようもなかったとしても、それが切っ掛けで前世を思い出したって所かしらね。
……ぃぇ、待って……。
本当に転生?
まさかと思うけど、現在のエネオットが後頭部を強打してしまい、その結果…今の人格が死亡、もしくは弱体化して入れ替わったって事は……ない?
そのせいで、前世の人格が出てきたとか……あぁ、他にも、別の誰かが憑依したと言う可能性も…。
となると……今のエネオットは……誰なの…?)
これは要確認だ。
フィーが助手として、今日が初日だった為、授業終了後もセル達と話し合いがあるかもしれない。そう思って、アンネッタには妃教育の時間は取らずに、真っすぐ帰邸して貰う予定になっていた。
今日だけでなく、暫くは『予定は未定』状態になるだろうと、フィーもフリーの状態にしてある。
丁度良い……放課後、時間が空き次第、早々に王宮へ行ってみようと、フィーは考えた。
そして必要なら、エネオットと直接対決も視野に入れておくとしよう。
そして…その機会は、思った以上に早く到来した。
フィーとセルの出した報告書で、これまでの生徒の評価に、全く信用性がなくなってしまった。
勿論、貴族社会に於いて、学院の成績が問題になるかと言われれると、正直そこまで問題ではない。
優秀な側近や補佐が居れば、本人がどれほどボンクラだろうと、お飾りになれるのであれば問題ない。更に言うなら、貴族の子息子女なんて、最初から家を存続させるためのお飾り…要は部品でしかない。
『途中で脱落する事なく卒業した』と言う事実さえあれば、駒としては十分事足りるのだ。
しかし、魔法成績はそう言って放置する事は出来ない。
いや、魔法に限らずマナー等も、『大した意味はない』と放置できない部類ではあるのだ。だが……以前にも話しただろうか…貴族の持つ強大な魔法力は国防に直結する。
その為、学院での魔法等一部の成績は、貴族社会で重要視される。
魔法力がないのに、いざ前線へ…なんて事になれば、間を置かずして総崩れになる未来が、容易に想像出来るからだ。
現在は表面上は平穏で、戦争の気運はない。
しかしそれは、あくまで『表面上』……周辺諸国に燻るモノがないわけではない。
特にボーカイネン西側にある『グヌ連合国』は、火種を抱えていた。
元々幾つかの部族が、ボーカイネン等の『国』に対抗するために、寄り集まって成立した国で、歴史は浅い。
その為、部族同士の力関係等で、内紛の可能性を常に抱えていた。
常に緊張状態に嫌気がさし、国を捨てて難民となり周辺国へ流れる者も居る。
いや、一番大きな理由は『灰の森』の拡大だろう。
そのせいで住める土地そのものが、減少傾向にあるのだ。
ボーカイネン王国も西側が接している為、他人事ではない。
とは言え、減少傾向と言っても緩やかなもので、直ぐにどうこうと言う訳ではない。
一触即発…という程ではないが、火種である事も事実。
そんな理由もあって、国防を担う貴族達の戦力…魔法力は重要な情報なのだ。
学院としても、魔法の成績に信頼性がないと言うのは看過できず、その日の午後はガザロ学院長の一声で、緊急会議となってしまう。
一応報告者として、セルは会議に呼ばれているらしいが、フィーは今日の会議は出なくても良いらしい。
後日呼ばれるかもしれないが、その時はその時だ。
折角ぽっかりと空いた時間なのだから、精々有効活用するとしよう。
下校前にネルローネに声を掛け、許可を貰ってから、まずはアンネッタを邸に送り届ける。
その後、フィーは王宮へと向かった。
ちなみに『灰の森』と言うのは、灰を塗したような、枯れ木ばかりの森の事である。
ボーカイネン王国から見ると、西側で接するグヌ連合国の、更に西に位置する森の事た。
更に更に西側には『魔窟の森』が広がっている。
魔窟の森と言うのは、長く…不干渉の歴史を持つ場所の事だ。
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