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「そう!
『かぼ…と…』? とか、『えね、みー』? だとか。
後はぁ…『りゅうこい』? とか。
意味わかんないと思わない?」
相変わらずキャラキャラと笑うネルローネだったが、彼女の言葉にフィーの方はピキリと固まった。
ネルローネは、それらが意味するところを知らない為、各単語ごとに変な所で切ったり、語尾が疑問形に跳ね上がったりと、色々とおかしな事になっているが、聞かされた方のフィーはそれどころではない。
ギャグマンガも真っ青なほど、見事に、綺麗な時間停止…。
見開き全面使用の背景に、角ばった書き文字の擬音語まで見えそうなくらいだ。
(りゅうこい……流恋ってか!?
ぃゃ…まさか…ね。
でも…『えね、みー』って、たどたどしい言い方だけど、多分『エネミー』…よね。『かぼ…と』も『ガヴォッドラーヘン』の事では……)
ゲーム『流星の贈り物~恋も乙女の大事なお仕事~』というタイトルは、普通に長い。その為ユーザーあるあるで、当然のように略語があった。
『流恋』と言うのもその一つ。
勿論派生もあったが、概ね『流恋』で通じた。
『エネミー』については、呟いていたのがエネオットだと言うのなら、あの話ではないだろうか……。
エネオットの名前。
彼の名前は『エネ夫』からではないかと、真しやかに囁かれていた。
元々は某巨大掲示板が発祥と言われている。
既婚女性…つまり妻側から見た言葉だが、敵の意である『エネミー』と、婚姻相手である『夫』と掛け合わせた造語だ。
仮にも乙女ゲームとして世に出された作品なので、エネオットの名前が『エネ夫』からきているとは考え難いのだが、あまりに合致しているので噂になっていた。
でもまぁ、アンネッタ視点から考えると確かに敵なので、否定するのも難しいと笑い話になっていたのだ。
(そんな事ってある…?
つまりは、エネオットも転生者だと言う事?
………何がどうなってそうなるのよ……。
でも、まだ単なる王女殿下の聞き違い……と言う可能性も微レ存…)
荒唐無稽な話だと思うが、気になりだしたら、そうとしか思えなくなってしまうので、必死に違う可能性を探す。
フィーは無駄に居住まいを正しつつ、ついでに咳払いまで付け加えて、更に突っ込んだ。
「んん……えっと、ですね。
他に…他に何か……意味不明な何かは、呟いていないのですか?」
フィーの問いに令嬢達の視線が集まる中、ネルローネは微かに中空を見上げる形で唸る。
何か思い出したのか、パッと視線をフィーに戻した。
「ぁ、他には『すまほ』とか『こんびに』とかも言ってたわ」
フィーは思わず天を仰ぎたくなった。
(確定だ…。
エネオットは転生者だ)
是非このまま石化していたかったが、そう言う訳にはいかない。
現実逃避していても、何の解決にもならないのだ。
(で、だ……どうする?
探りを入れる?
と言うか、そんな単語を口走っていると言う事は、前世の記憶アリと言う事よね……いつから?
彼はいつ思い出したの?
最初から? だったら今更引き籠ると言うのは、辻褄が合わない気がする。
やっぱり投げ飛ばした時?
でも、投げ飛ばした時…多分王宮に戻ってからよね?
王妃陛下と言い合いになったとか言ってた……で思い違い…お嬢様がエネオットの事を好きだとか何だとかの……微妙にズレが生じてる?)
フィーは確認の為に、ネルローネに再度問いかけた。
「もう少しお聞きしたいのですが。
王子殿下が、引き籠った切っ掛け…みたいなものはありますでしょうか?」
「アレが引き籠った切っ掛け?」
コテリと首を横に傾けて、ネルローネは目を真ん丸に見開いた。
「はい。
私が投げ飛ばして寝たきりになったとか…ではないのですよね?
何が切っ掛けで、そんな意味不明の単語を口にするようになられたのでしょう?」
フィーの問いの意味がやっと分かったのか、ネルローネは『あぁ』と呟いて苦笑を浮かべる。
「なんだったかしら…そう!
あの馬鹿兄ったら、お父様お母様と言い合いになった挙句、後ろに倒れ込んで後頭部を強か打ち付けたんだって。
それからよ。
その後、目が覚めてから、こう…ぶつぶつと」
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
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