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「それにしても酷いものだね…。
ざっくりと見ただけでも、評価が適切でない者が結構居る」
訓練場での評価見直しを終えてから、セルが呆れたように呟いた。
隣国から魔法講師として招かれた彼が、呆れるのも無理はない。
少なくとも『魔法国』とも称される隣国で、こんな事が罷り通る事はないのではないだろうか……いや、全くない訳ではないかもしれないが、バレない様にもう少しうまくやるだろう。
評価に問題のあった生徒は、デービーを筆頭に、今回授業対象となった3クラス全体の3割ほど。
これを多いとするか、少ないとするかは人其々だろうが、話はそれ以前の事だ。
評価の底上げをされる者が居る一方で、不当な評価を下された生徒達も少なくない。
名を眺めているうちにフィーが気付いたのだが、主に家が王派閥だったり、エネオットの側近や取り巻き連中が、揃って評価の割り増しを受けていた。
あのパミンも、フィーとセルが確認した所、どう見ても『C』相当なのに『B』評価になっていた。
反対に評価を下げられている者は、王家や中央とは距離を取っている家、個人……。
あぁ、側近ではあるがケルナーは省かれる。
彼は一応正当な評価を受けているので、底上げ云々とは無縁枠だ。
教師と言えど貴族なので、家や家族の為に忖度も仕方なかったのかもしれないが、あまりに酷い。
この事は後程カザロに報告するしかないだろう。
授業後、それらの報告書を纏めてから、フィーは保健室に向かう。
ドニカはもう意識が戻って、保健室には居ないかもしれないが、少なくともデービーはまだ居るだろう。
保健室の担当職員に、様子だけでも聞いておこうと足を向けたのだが、保健室に向かう途中で流れてきた声に、フィーは静かに立ち止まった。
「(…………さい…)」
「(ま……く、役に立……いんだ…ら)」
聞き取り難い……。
だが声の主は恐らく、ドニカとナホミだ……多分間違っていないと思う。
彼女達の声だと思った為に、つい身を潜めてしまったから仕方ないが、届く声は途切れ途切れで、意味を推察するのも難しい箇所が出てきそうだ。
(ま、こういう時の遠聴魔法よね。
決して盗聴ではないわよ…)
誰に向かっての言い訳かわからないが、ついつい自己弁護、自己保身を図りつつ、魔法で声を拾い上げる。
『……でも、エネオットが学院に来ないんだもの』
『それで?
王子が来ないから、婚約者の女に突っかかったんでしょ?
なのに平手打ちの一つも喰らわず、勝手に気を失ったって?
はぁ……ドニカ…自分の役目はわかってるでしょうね?』
『それは……』
『何?
忘れたとでも言うつもり?』
『違……。
あたしはエネオットと親しくなって、エネオットとその側近とかいう男子生徒達に、アンネッタさんの悪口を吹き込む…』
『そうよ。
それから?』
『それから……アンネッタさんを貶めて、傷心のお兄さんの慰めにって、ナホミを紹介する……』
『……わかってるじゃない。
それなのに、なんでうまく運べないの?』
呆れた……。
なんて杜撰な計画だ…。
でも…ようやく合点がいった。
ナホミの狙いはケルナーと言う事だ。
いや待て……と、フィーは違和感に気付いて考え込む。
(だとしたら……どう言う事?
これまでの事から、ドニカとナホミは力関係が逆転してるのかも…とは考えていたけど。
それでも言動が転生者っぽかったし、一応ヒロインポジはドニカの方が可能性が高いと思ってたのに……こうなると計画の首謀者は、ナホミだったって事になるわよね?
でも、何故ケルナー?
普通はエネオットの方を狙うんじゃないの? 一応曲がりなりにも公式ヒーローだった訳だし…。
それに、ケルナールートを攻略した転生者ならわかる筈だけど…ケルナーは、お嬢様の事で傷心なんてしないわよ?
ぃぇ、ゲーム内のケルナーは…と言う注釈が付くけれど…。
って、そう言えばそう…エネオット。
見かけてないとは思ったけど、やはり学院に来ていなかったのね)
連想ゲームよろしく、次々と思考が流れ、既にフィーの頭の中からデービーの事は吹き飛んでいる。
そんなフィーは、もう少し様子を窺っていれば良かったのに、そっとその場を離れ、1年S組に足を向けていた。
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