212 狭間の物語 ◇◇◇ 羈旅終演―2―
「まさか…それはないでしょう…。
結界に辿り着くまでに魔窟の森があるんですよ?
それがどれほど危険な場所か、普通は想像がつくと思いますから、そんな無茶はしないでしょう」
「俺もシャフの意見に同意。
魔窟の森に関しては、どこも手出し無用っつうか…まぁどこも危険視してて近寄りもしないから、何の情報もないけどさぁ。だからこそ魔物が溢れてるって伝承は、当たらずと遠からじだろうって言われてるじゃん。
いくらフィーがオリジナルのライアンサ人だって言っても、流石に一人で突撃なんてしないだろ?……だよ…な?」
ルルも言いながら、少し不安になって来たのか表情が曇る。
シャフも他二人の不安が感染したのか、眉間の皺を深くした。
「いえ…でも……。
彼女はオリジナルである上に、皇王族…しかも直系です。
それは彼女の言葉だけでなく、あの精霊達やガヴォッドラーヘン様の言葉からも確かな事実…。
まさか本当に一人で向かう可能性が…ないとは言い切れない……かも…」
シャフとルルが険しい表情で考え込む中、セルが口を開く。
「わからないけど、もしそうかもしれないのなら準備を進めよう。
イボルボンに着いて報告を終えてから…と思っていたけど、猶予はなさそうだ。
シャフ、後の事はお願いするよ」
「セル様!?」
セルの言葉に、シャフが飛び上がる勢いで顔を上げた。
その行動にルルの方が思わず仰け反ってしまう。
「ちょ、驚かせんなよ!
………って…え?」
ルルは、セルとシャフの深刻そうな空気に、思考が追い付かないようで、二人を交互に見つめた。
「どう言う事だよ……?
二人共、何隠してるんだ?」
ルルの責める様な声音に、セルは俯いて顔を背ける。
だが…シャフの方は反対に、伏せていた視線を上げた。
「隠してはおけませんね」
ポツリと零した言葉に、その場の空気が張り詰める。
「シャフ!」
「やっぱ…何か隠してたんだな?
言えよ!! 俺だけ外してんじゃねぇ!!」
止めようとするようにシャフの名を叫んだセルに、ルルは目を吊り上げた。
ルルの剣幕に、セルの方が押される。
「ルル、落ち着いて…」
「セルてめぇ……これが落ち着いてられっか!
どっちでもいい、早く言えよっ!!」
深呼吸を一つして、シャフが話し出す。
「ルルの継承魔法にはなかったようですが、セル様とわたしの継承魔法には、ある術式が組み込まれていました」
「シャフ!!」
セルがシャフの言葉を遮る様に名を叫んだが、今度はそれをルルに腕を引かれる事で止められた。
「自身の身体を鍵に変える術式です。
尤も、その鍵と言うのも曖昧で、多分『鍵』とでも呼ぶべきものじゃないかと言う、セル様とわたしの予想でつけた呼び名です」
「自身の身体って……そんなの…そんなの俺は知らねぇぞ!!??」
「えぇ、だからルルの継承した中になかったモノだったんだと思います」
ルルは声も出せず、唇を噛み締める。
「まぁ…もう何百年と受け継がれてきたモノですし、ついこの間まで、継承の内容さえ分かりませんでしたから、大部分が予想というか…、こうじゃないか?と言う不確定な話なのはルルも知っての通りです」
ここまで話したのなら止めても無駄と諦めたのか、セルは顔を背けて立ち尽くしていた。
「ですので、実際どう言う用途で使用されるのかわかりません。
しかし、ガヴォッドラーヘンを入手した後、ライアンサへ入る為に必要となる…それだけは確かでした。なので結界を開く為か、無効化する為か…そう言うものだとセル様とわたしは結論付けたのです」
シャフが口を閉ざした後は、重苦しい静寂が圧し掛かってきた。
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