207
メナジアもハッとした様に顔を上げた。
だが、直ぐに唇を噛んで俯く。
「そこを突かれると痛いわね…」
ほんのりと悲しさを滲ませて、メナジアは目を伏せ視線を背ける。
しかし、次の瞬間、小さく口角を上げた。
目を伏せ、顔を背けたままメナジアが話し出す。
「ケルナーの為に口出しする気はなかった…それは本当よ。
けれど…そうね、私も卑怯な手を使うしかないかしら」
フィ―へ話しかけた訳ではないようで、返答を待つ事なくメナジアは続ける。
「ねぇ、フィー。
私達…オファーロ家は勿論、この家の皆が貴方が好きで頼りにしているのは理解してくれているかしら?
だから本音を言えば、貴方がケルナーと一緒になってこの家を継いでくれるなら、諸手を挙げて大歓迎なのよ。
どう?
未来の公爵夫人よ?
アンネッタとも義姉妹になれるわ。
体裁なんてどうとでも出来るのよ…身分が足りないならそれなりの家の養女にすれば良い、年齢がまだ…と言うのなら待てば良い。
ケルナーは当然、アンネッタは喜ぶでしょうね。勿論皆も…。
……それでも、ここを去るの」
ここまで言われて、普通なら思いとどまるのかもしれない。しかしフィーの旅の目的は、それで止まれるほど軽くないのだ。
「……申し訳ございません…」
メナジアは軽く下唇を噛んだ。
そして諦めたように肩を竦める。
「ま…わかってはいたわ。
引き留めてとどまってくれるのなら、フィーは最初から言い出さないものね。
………
良いでしょう。
但し…」
メナジアがやっと顔を上げ、しっかりと目線を交差させる。
その眦に光るモノに言及してはいけない。けれど一瞬歪む表情は隠しようもなかった。
「但し……必ず帰っていらっしゃい。
貴方の帰る場所は此処です。
出自が明らかになろうと、なるまいと…良いですね?
待っていますよ」
感情を揺らすつもりはなかった。
けれど、向けられた思いが嬉しくて、暖かくて、フィーも涙声になるのを止められない。
「はい、奥様」
その夜、フィーは初めてメナジアに抱き締められた。
これで公爵邸サイドも、ある程度の目処は立った。
気付けば居なくなっている…そんな状況になる様に、メナジアにも頼んである。徐々にイメネアやティディが表立つ機会を増やして行けば、大きな混乱も起きない筈だ。
アンネッタとケルナーは悲しんでくれるだろうが、それも時間と共に落ち着いて行くと思う。
これはまだ誰にも話した事はない…ガヴォッドラーヘンにも。
これまで…気が遠くなる程何度も何度も繰り返した転生の中で、フィーは…いや、フィリエーヌの魂は、あの…ライアンサの地を襲った敵を知る機会があった。
世界も時間もバラバラな転生のお蔭…とも言える。尤も、そんな幸運を、誰も期待していなかったと思うし、それ以前で想像さえしていなかっただろうと思う。
本当に偶々……偶然の事だった。
あの世界は日本のあった地球世界に似ていた。
魔法ではなく科学が発達した世界。ただ、芙美子として生きた時代より未来の世界。
宇宙局の職員として働いていたフィー…当時の名は何だったか……思い出せないが、資料室でとある記録を発見した。
当時のフィーが暮らしていた星からは、遠く離れた星系、星の記録。
植物型の生命に覆いつくされた星の記録だった。
その星を覆う植物型生命体は、一つの親株を中心に根を張り、枝先に生じた子株を手足代わりにして、他の生命体を襲う事で糧を得て、命を繋いでいた。
そして自己以外を襲い続けた結果、その星から他の生命体を駆逐してしまう。
他食によって生命を繋いでいるというのなら、その時点で自滅しか道は残されていない。
だが、その植物型生命体には、特殊な能力があったと記載されていた。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




