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一方、部屋を追い出されたエネオットサイド……彼の自室まで行きこれまでのように…扉を閉めた途端、コロッと態度を変える。
「いやぁ、目出度いわね」
フッと笑って見遣ると、エネオット……この場では耕作と呼ぶべきか…耕作は耳まで赤くした。
「う”」
「その調子で頼むわよ。
お嬢様を泣かせたら、私が直々に締め上げてあげるから。
覚悟しておくように」
「わ、わかってるよっ!」
フフンと笑うが、フィーは少しするとスンと表情を消した。
今日は色々と説明しなければならない。
ドニカの事は事細かに説明する気はない。なんなら耕作だってアンネッタ達と同じように、化粧で変貌した彼女しか見ていないので、ティディとドニカが同一人物だとは気づかない筈だ。
だからドニカについては良いとしても、アンネッタの傍から離れる事は、説明しなければならないだろう。何しろ彼は『流恋:を知っている。
真顔になった表情と相まって、耕作は目に見えて緊張した。
何度か拳を握ったり解いたりを繰り返しているが、時間は有限だ。早々に本題へ移らせて貰おう。
「まだお嬢様にも公爵家にも話してないのだけど、耕作さんには先に話しておくわね」
「何?
急に改まって」
フィーの雰囲気が一変したので、耕作は落ち着かないようだ。無意識だと思うが、自分の腕を何度も擦っている。
「もう少ししたら、お嬢様付きは私じゃなくなるから」
「……は?」
「だから、今後、専属メイドが私じゃなくなるの」
「いや……やっぱり『は?』なんだけど……。
まだアンネッタ嬢にも公爵家にも話してないって言ってなかったか? なのに決定事項??」
フィーは一度深呼吸してから頷いた。
「耕作さんは覚えてるわよね?……『流恋』」
「!?
ぁ~、いや、それは…うん」
「シナリオの最後のラスボス戦…覚えてるわよね?」
「それも…うん。
ん?……ちょい待て……まさか居るの? ラスボス…」
フィーは薄く微笑んだ。
「まぁ……該当のは…多分だけど居るわね」
そう…あのゲームのラスボスに該当するであろう存在は実在している。
多分だが…結界担当その1となっている、ライアンサ魔法士団長…その人だ。
『流恋』では最終ダンジョンの奥に居るボスを討伐。
無事勝利する事が出来たら、ボーカイネン王国に凱旋する。
平和になった事を知ったNPC達の御祭り騒ぎの中、王様の待つ城へ。
そしてエンドロールが流れるラストは、好感度を最大まで上げた攻略対象との幸せスチルでめでたしめでたし…となる訳だが、その最終ダンジョンへ向かう時に『ボーカイネン王国から旅立った主人公一行は西へ向かう』という一文があった。
ボーカイネン王国の西にはグヌ連合国、その先は灰の森、魔窟の森…そして故ライアンサ皇王国の地だ。
そこには魔法士団長の結界が待ち受けている。
ゲームで最終ダンジョンに相当するのが、その辺りだろうと踏んでいる。
その奥でラスボスとの戦闘になる訳だが、恐らくそれにも外圧は働いているのではないだろうか。
どう言う形でかわからないが、そこでまず戦闘になると予想している。
まぁ、ゲームではそこで勝利を収めればラストになるのだが、現実はその先…女王ローデンヌの結界が待ち受けている。
最終的に目指す故ライアンサの地はその奥だ。
「まぁ、実在するかしないかも含めて、確認に行かないといけないでしょう?
それには私が動くのが一番早いのよ」
肩を竦め、出来るだけ軽い調子で言葉にする。
しかし…耕作は誤魔化されてくれる気はない様だ。エネオットなら簡単だったろうに…。
「つまりは戻って来れるかわからない…そう言う事か?」
「………」
「だって戻って来れるって確信があるなら、フィーなら…織田さんなら期限を切った筈だよな?
『暫く』とか『春まで』とか……でも、さっきの言い方はそうじゃなかった…」
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