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何を企んでいるのか……ネルローネもヨリアンナも、それはそれは、これ以上ない程の満面の笑みである。
そして見回したりする必要もなく、室内は布地で埋め尽くされていた。
どこを見ても布、布、布…純白、白真珠色……ほぼ全てが白か、それに準ずる淡い色味のものばかりで溢れていて、何とも目に眩しい。一部、見本だろうか…主に真珠やダイヤと言った、白を侵蝕しない宝石も片隅に置かれていた。
どうやら話を聞くとネルローネの提案だったらしい。
実は彼女の婚姻話も進んでいて、来年の春には婚約を公表する事になりそうだという。恐らくネルローネが嫁ぐより先に、アンネッタがエネオットに嫁ぐ事になりそうではあるが…。
それで現状を説明すると、出来れば布地やデザインの一部だけでも良いから、アンネッタと揃いの婚礼衣装を作りたいとの事だった。
しかし…だ。フィーは考える。
(婚姻先の関係各位に、話は通っているのだろうか……)
当たり前の懸念ではあるが、王女が他国に嫁ぐ……それ即ち政略面を無視する事は出来ないという事だ。
相手の国の面子など諸々考えると、感情で動くのは…と表情を曇らせていると、ヨリアンナが正確にフィーの表情を読み取ったようで、心配ないと告げる。
どうやらネルローネと相手とは、幼い頃から面識があるようで、ネルローネの思いを汲んでくれたらしい。
なるほど…とフィーは納得したが、アンネッタはまだ不安があるようだ。
アンネッタは王家に嫁ぐとは言え、現在は公爵家の令嬢でしかない。そのアンネッタと、王女であるネルローネの婚礼衣装に、共通の何かを取り入れるのは不敬ではないか…と、アンネッタが不安を持つのも当然だろう。
すると、すかさずエネオットがアンネッタの手を取り、優しく握りしめた。
「不敬なんてある訳ないだろう?
ネルローネ本人が望んでるんだし、お相手も良いと言ってくれた。それにもし許されるなら、俺もアンネッタ嬢と揃えたいんだけど…」
『ボン』と小さな爆発音でも聞こえてきそうな程、瞬時にアンネッタの顔面が沸騰した。
「で、殿下……それは、その……嬉しいです」
「良かった。
許してくれて、俺も嬉しい」
流石にヨリアンナとネルローネが咳払いをする。
「「んん!」
「エネオット……少し席を外して貰えるかしら?」
「もう、お兄様がいると進まないわ。フィー、悪いのだけどお兄様を部屋から出して。
で、そのまま暫く部屋に閉じ込めておいて」
ネルローネがシッシと手払いをしている。
妹の失礼な仕草に怒る様な事はもうないが、相談が進まないと言われ、エネオットはぐうの音も出すむぅと唸った。
とは言うものの、やはりアンネッタから離れがたいらしく、抵抗する様にフィーへと情けない表情を向ける。
尤も、そんな彼の表情に狼狽えるフィーではない。
「かしこまりました」
淡々と告げるや、フィーはエネオットの前にズイッと割り込む。
「王妃陛下、王女殿下のお許しを頂きましたので失礼いたします」
流れる様に拘束しようとするフィーに、エネオットが慌てて待ったをかけると、大人しくフィーの圧に押されるように部屋から出て行った。
エネオットをせっつくように後ろから続くフィーが、一礼してから扉を閉める。
その一連を眺めていた高貴な女性達は……。
「流石フィーね。いとも簡単にエネオットを御したわ」
「お兄様もフィーには形無しね。
やっぱり褒賞を与えるべきじゃない? だってあの馬鹿を見事に矯正してくれたんだもの。
おかげでアンネッタとは、無事、義姉妹になれそうだし!
ほんと嬉しい…あぁ、もう、フィー様々だわ!」
辛辣とも言えるヨリアンナとネルローネの言葉に、アンネッタは困ったように視線を泳がせた。
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