201 狭間の物語 ◇◇◇ 節哀順変―2―
「何も問題ないよ。
寿命の事は明確に話した事はないけど、だからこそルルは何としても…と思ってくれているんだろうね。
ルルの気持ちはとても嬉しいとは思うけど…」
「……では何も伝えず?」
「言える訳がない。
いつ果てるとも知れない身だし、何より僕には最後の仕事が残っている。
そんな僕が彼女を願ってどうする?」
シャフを見ないまま、そこまで話すと、セルは唇を引き結んだ。
無言が続く。
重い沈黙の後、セルがやっと口を開いた。
「最初は警戒だったと思うんだよ。何者かわからなくて……。
魔法訓練場で、一瞬…彼女の瞳が琥珀色に見えたのが気になった。でもそれ以降は翡翠色で……だから見間違いだったんだと思ってたのに、まさか『ガヴォッドラーヘン』って言葉を聞くなんてね。
敵か味方か、判じようにも彼女自身は記憶をなくしていた。でもそんな事は直ぐに気にならなくなっていた。不思議だよね。
……ダンスの練習の時も、まだ自分の感情なんてよくわかってなかった。
まぁ、それでも話すのも傍に居られるのも、嫌じゃなかったのは確かだよ」
セルはハハと…自嘲するような声を漏らして、下唇を噛む。
「気になって、嫌じゃなくて……いつからだろう…つい彼女を探すようになっていた。
その度にルルに揶揄われたけど、それも嫌じゃなかった」
「セル様…」
「間抜けな話だよ…自分の感情なのに、自分じゃなくルルに見抜かれるなんて…」
肩を竦め、茶化すように言いながら窓辺を離れ、机の方へ歩くセルを、シャフは目で追った。
「ですが……」
うまく言葉が出ず、ギュッと唇を引き結ぶシャフに、セルが振り返る。
「どうした?」
「……ですが…最後の仕事は…どうかわたしに…」
フッと儚い笑みを浮かべるセルは、首を横に振った。
「魔力量を考えると、僕しか無理だよ。
それに…多分僕の方が…例え何もしなくても、シャフより先に逝くだろうから」
「……」
「本当に…どうしようもなく負の遺産だね。
けれど、最後に彼女に会えた。
短い人生だったけど、それだけで十分だと思える。
フィーに会えなければ、僕は誰かを愛おしいとか、守りたいとか…そんな感情とは無縁のまま消えていた筈だから」
淡々と話すセルに、シャフは両目をきつく瞑った。
「そんな顔をしないで。
僕は僕のこれまでに満足しているよ。
それと…最後はシャフにお願いしたいんだ。
鍵を……僕を使って作る鍵を、彼女に渡す役目をお願いしたい。
ルルは鍵の事は知らないと思うから」
「何故!!」
急に激高したシャフに、セルは目を丸くする。
「シャフ…?」
「何故…ですか…何故そんなに落ち着いていられるんですか!?
だって…だって鍵になんて…そうしたら貴方は死ぬんですよ? 意識が残るかどうかもわからない…けれど少なくとも人間としては死ぬんですよ!!??
お願いですから、わたしに命じてください!
お願いします…」
シャフは感情のままセルの両腕を掴んで揺さぶる。
だが、それも徐々に力をなくし、シャフは膝から頽れた。
足元に蹲るシャフを労わる様に、セルは床に膝をついて背を撫でる。
「そんな命令こそしたくないな。
でもほら、考えようによっては、鍵に姿を変えても、最後までフィーの傍に居られる。そう思えば辛くないんだよ。
だから……ごめん…僕の我儘かもしれないけど、ライアンサには結界が…しかも2重に張られてるようだから、そこを通るには鍵がどうしたって必要になる。
でも、結局…それもわかったのは継承魔法が読み解けるようになってからだから、ほんと御先祖様には物申したいけれどね」
シャフは肩を震わせ、必死に嗚咽を噛み殺しているようだ。
そんな彼を、セルは宥める様に優しく背を撫で続けた。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




