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「ただ、ルルなら……ルルとシャフなら、戻れると思う。もし戻ってきたらライアンサへの旅に連れて行ってやってくれないだろうか?
彼の地への旅はきっと危険な物になると思う。
手前にはグヌ連合国もあるしね。
グヌの事はシャフもルルも、少しは勉強してるから役に立つと思うんだ。
あぁ、そうだ……話は戻るけど、本音を言えば前回の詫びも、改めて受け取ってくれると嬉しい……何しろ行き先がないからね。
フィーに合わせて選んだものだから、フィー以外に渡したくないんだ。どう?」
どうもなにも、そんな言葉を向けられて嬉しい反面、どう考えても自分の死期を感じているらしい彼に、フィーの感情はグチャグチャだ。
きっとこうして抱き締めてくれる事にも、大きな意味はないのだろう。セル自身が言っていたように、単に顔を見られたくないが為の拘束でしかなく、フィーが…と言うより今は芙美子か…どちらにせよ、大して意味のある行動と言葉ではないのだ。
それでも思うのは『絶対に助けてみせる』と言う事。
推しがこんな辛い覚悟をしてるなんて、悲しすぎるではないか。
それに…ライアンサへの旅に、シャフやルルに来て欲しいとも思っていない。セルは当然として、ルルやシャフも、ライアンサの負の遺産に振り回されてきたのだ。3人全員、これから先は穏やかな幸せを手にする権利がある。
フィーは自分に回された腕を、軽くあやす様に叩いた。
「前回と言うとドレス一式でしたっけ。
でも私も着ていく場所なんてないのですが……でも、ルルさんだってどんなに女の子に見えても、ご本人は男性ですものね。
では…お言葉に甘えて頂戴しても良いですか?」
返されて困っているというのなら、折角だから貰っておこうと思う。どうせ髪飾りを手元に残している。
着る機会はなくても、思い出にはなるのだ。
それにしても、まだ後生大事に取ってあるとは思わなかった。他の誰かに渡すのが無理だとしても、売りに出すなり、寄付するなり、やり様はあったと思うのだが…いや、無粋な突っ込みは止めておこう。
その話は兎も角、大事な話が残っている。
抱き込まれたままの体勢と言うのが何だが、それに頓着している暇はない。
「今日の御礼と言う訳ではないのですが、実は私もセル様や皆さんにお渡ししたいものがあるんです」
不意を突く形になってしまったらしく、『え?』と言う声と同時に、抱き込んでいた腕が緩んだ。
その腕からするりと抜け出て振り返り、セルと対面するとポケットから3つの包みを取り出す。
「旅のお守りです。
ちょっと珍しい形だと思いますが、中に守り石が入っています。出来る事なら肌身離さず持っててください」
セルの手の中に一つずつ押し付ける。
「この白地に銀糸の刺繍入りはセル様。
こっちの緑地のものはシャフさん用です。
最後に、この臙脂色のものはルルさんへ」
セルが目を丸くして、手の中の小さな布袋を見つめる。
「これは…手作り?」
「はい。
石の加工もしたんですよ。ほら、ライアンサの人間は鉱物の加工も得意だったから」
セルは痛そうに眉根を寄せるが、その口元は微かに笑みを形作る。
「……ありがとう。
ちゃんと二人にも渡しておくよ。今日は僕の方から頼んできてもらったのに、こんな……嬉しいよ」
「良かった。
ぁ、でも…安物ですからね? 材料費は問わないで下さい」
茶化す様にいえば、セルはゆるゆると首を横に振った。
「材料費なんて考えもしなかったよ。
だって手作りだというなら、それだけで唯一無二じゃないか。
光栄だよ」
無事渡せた事にホッと胸をなでおろす。
これでセル達の魂修復が進む筈だ。
「何度でも言うよ…ありがとう。
それにドレスも貰ってくれるなら、本当に嬉しいよ。
……それじゃぁ帰ろうか」
「はい」
当たり前のように差し出された手に、一瞬思考が追い付かなかったが、どうやら帰りも手を繋ぐらしい。
そんなセルの小さな行動に、フィーはほんの少し…浮きたつような感情を自分に許しながら帰路に就いた。
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