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ふと疑問が過る。
(セル様達は、自身が受け継いできた継承魔法の不都合を、どこまで把握しているのかしら…。
以前、言葉を濁された記憶はあるけど…)
フィーがセル達に…特にセルに残された時間が多くないという事がわかったのは、結界に触れてから以降……つまりフィリエーヌとしての記憶が戻ってからだ。
あまりに長期間の継承に、それまでも『不具合が生じているのではないか?』…と予想はしていたが、はっきりとわかったのは、直接魂を視る事が出来るようになってから以降の事。
(体調不良程度の自覚はあるのかしら?
何となくその話題を避けようとしたように感じたし、薄っすらとはあるのかもしれない。
無いなら無いで、その方が良いんだろうけど……直接聞くのは躊躇われるわね)
デリケートな話題で、聞くに聞けないというのも当然だ。
何より折角のお出かけ……デートと思って良いらしいが、セルの買い物から察するにやはり単なるお出かけだろう。とはいえ、フィーには十分過ぎる程に嬉しい状況なので、あえて水を差すっような真似は避けたい。
購入したネックレスを丁寧に包装して貰い、セルはそれを内ポケットにしまった。宝飾店での買い物はそれで終わりだったようで、フィーはセルに促されて宝飾店を出る。
またも手を繋がれて、セルの進む方向へついて行く事になった。
次は何処へ…と言葉には出さずに考えていると、セルが振り返る。
「それじゃ次は、ルル推薦の店に行こうか」
とびきりの笑顔で、心臓を鷲掴みにされているフィーはコクコクと頷く事しか出来ない。ただ、セルの方はとても満足そうなので、良しとした。
推しが笑ってくれるなら何だって良いのだ。
案内されたのは、これまた随分とお高そうな店だ。
入店すると店員が近付いてくる。
広めのフロアには衝立と幾つかのテーブルセットが、余裕をもって置かれていた。衝立でテーブルとテーブルの間が仕切られているが、通り抜けるのに問題ない間隔も確保されている。
今は本当に誰も居ないようだが、居ても見えないように配慮された家具の置き方だ。
またも何の店舗か不明である。
店員の誘導に従って奥へと進む間も、何故かセルの手はフィーの手を掴んだままである。『流石に店内で迷子にはなりませんよ…』と内心で言ちるが、至福の時間である事も確かなので、あえて指摘はしなまま奥の個室へ案内された。
テーブルには椅子がセットされているが、最初から2つしか置かれていない。その置き方も、対面ではなくテーブルの角を挟んでの斜向かいと言う奴だ。フィーを緊張させないようにと言う配慮だろう。
店員が椅子を引いてくれたので、腰を下ろす。
通常なら食前酒が運ばれてくるのが普通なのだろうが、実際に運ばれてきたのは葡萄のジュースだった。
もしやルル推薦だからと、ふらりと立ち寄った訳ではなく、予約でもしてくれたのだろうか…そんな疑問が顔に出てしまっていた様だ。
どうやらお出かけ決定の際に、ルルかシャフが一報を入れてくれたらしい。丁度、個室が空いている時間があり、そのまま予約と言う流れに…との事だが、いつの間にそんな連絡を…と不思議に思っていると、そう言った連絡用の魔具があるらしい。
尤も、イボルボン王国でも連絡用の魔具は高価な部類らしく、セル達もその1対しか所持していないそうだ。
美味しい食事の合間に他愛ない雑談を……とはいかず、次の講義内容の予定の話等になってしまうのは仕方ない。セルの方はわからないが、少なくともフィーの方は『これは推し愛よ!』と言い張っているので、距離が必要以上に縮まっていないのだから当然と言えた。
美味しい食事を堪能し終えて店を出る。
来た道を戻り、徐々に増えていく露店に寄り道したりしていると、いつの間にか空が薄っすらと朱色を帯び始める時間になっていた。
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