196
前世の記憶を刺激する休憩を終えて、商店街の中を歩く。
まだ露店の方が多く、お値段も控えめなので、平民…と言ってもそれなりに懐の余裕がありそうな人々の姿が多い。ただそのまま進めば店舗通りになるので、そちらは裕福な商家や貴族御用達と言えるだろう。
それなのに、セルは真っすぐ店舗通りの方へ歩いて行く。
「セル様、あの……其方は……」
「え?」
ルルが推薦だとか言ってなかっただろうか……それってつまり下調べしたという事だと思ったのだが…。
「その先は、どう見てもお値段が……」
フィーが危惧すると所をやっと理解した様で、セルは『あぁ』と頷いた。
納得して貰えたようで何よりだが、進む方向を変えるとばかり思っていたセルは、そのままの方向を維持して進んでいく。
フィーが困惑して立ち止まったままでいると、先を行っていたセルが戻って来た。
「行くよ」
そう言ってフィーの手を握った。
想定外の行動に、フィーの思考は停止状態に陥りかける。
(ちょ…手、手ぇぇ…。
推しが…推しの手が…うっひゃぁぁぁ)
フィー自身にも意味不明な歓声を脳内で上げていると、セルが足を止めた。
「此処…だったかな」
どう見てもフィーに縁のない価格帯の店に、引っ張られて足を踏み入れる。
薄暗い訳ではないが、光量は少し落とされているのか、落ち着いた雰囲気の店内に思わず見回した。一見しただけでは何の店かわからない。
近付いてきた人物は店員だろうか…やはり幻影魔法を纏ったままらしく、セルを見る店員の視線はおかしな位置で留まっている。
「いらっしゃいませ。
初めてのお客様でございますね。
本日は何をお探しでいらっしゃいましょう?」
「琥珀…それに類する色のものを探して居るのだけど。
出来ればシルバーを合わせた物を」
何か目的があったらしい。
具体的な言葉に、フィーは少し緊張が抜けた。セルの買い物なら付き合うのは吝かではない……いえ、是非お供させてください。
奥のテーブルに案内され、暫く待っていると、店員が布張りの豪奢なトレイを手に戻って来た。
「いくつかお持ちしました」
テーブルにトレイが置かれる。
柔らかそうな布の上に置かれているのは、どうみても装飾品。
それも女性用にしか見えない。
そこで合点がいった。
(あぁ!
お土産用ね。
ふむ…セル様がお土産を考えているお相手と言うのがわからないから、助言とかは求められないだろうし、大人しく座って待っていれば良いわね)
周囲から見れば一目瞭然の筈だが、それをフィー自身は全く気付いていない。
セルは何と言っていた?
そう…『詫び』で『デート』だ。
しかも自分の買い物に付き合って欲しいとも言っていない。セルが一言もなく自分の…いや他人への贈り物を買う為に、フィーを付き合わせる等と言う失礼をする訳がない。
以前『僕も贈り物なんて、生まれて初めての事だった』とか『女の子が何を喜ぶのかなんて、今まで考えた事もなかったし』とも言っていたのだから、察して差し上げろ……とは思うものの、フィーはすっかりさっぱり忘れているのだろう。
セルが琥珀…と、あれはシトリンだろうか。他にも店員の説明ではトルマリンやトパーズもあるようだ。どれも石座はセルの希望通りのシルバーで、普段使い出来そうなアクセサリーが並んでいる。
それらを見比べ、何故か…何度もフィーの方へ視線を投げてきた。
「僕が決めて構わないかな?」
セルのお土産なのだから、セルが決めるのは当然だろう…と、フィーは頷く。
そして今一度並ぶアクセサリー達を眺め、結果、大き目のトパーズを使ったネックレスを購入する事に決めた様だ。
銀の土台に黄金色の石…どう見てもセルの色だろう。
それをお土産にするとは、余程大切な女性だろうと思われる。そんな相手が居るのなら、尚更魂の修復を急がなければならない。
セル達に残された時間を正確に把握する事は難しいが、隣国に旅立つまでなら十分間に合う筈だ。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




