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「いえ、あの…お詫びなんて頂く理由が…それに…」
そう、髪飾りは返却していないし、なんならこっそり持ってても良いかなぁ…なんて、自分に甘い事を考えていた。
なのに蒸し返す様に『詫び』と言われても、反対に困ってしまう。
だが、それを許さないとばかりに、セルが先に歩き出し、それを追わせるようにルルがフィーの背中を押す。
「あ、セル、軍資金は持ったか?」
「勿論」
「よしよし、んじゃデート、楽しんで来いよ!」
廊下へ押し出されたフィーの目の前で扉が閉まる。
呆然とするフィーの様子に、セルが眉尻を下げて問いかけてきた。
「……ごめん、もしかして嫌だった…かな…」
曇る表情に、振り返ったフィーはハッとする。
(な、なにやってんのよ自分…。
推しにあんな顔させるなんて、ダメじゃないのよ!
でも………)
フィーは自分の体温が微かに上がるのを感じた。
(デ……デート……。
推しとのデートですって!!??
それ、なんてご褒美なのよ!!??
うわぁぁ……うわわぁぁぁぁぁ
神様っているんだなぁ……あぁ、決死の旅の前に死んでも悔いはないわぁ)
一人で百面相しつつ悶えるフィーに、セルは更に悲し気な色を濃くした。
「えっと……フィーの希望を聞かないまま計画して…本当にごめん」
くわっと目を見開いて、フィーはブンブンと勢い良く首を横に振った。
「と、とと…とんでもないです!
でも、い、い…いいんですか?
その、デ、デデデ、デートなんて!!!」
「デートと言っていいのかわからないけど、フィーが嫌じゃなければ」
「嫌じゃない…嫌じゃないデス!!」
学院の正面門から出て、セルは貴族街の方へ進路をとった。フィーが行った事のない方向で思わず首を捻るが、この場は黙ってセルについて行くのが正解だろう。
徒歩なのでゆっくり風景も楽しめる。流石貴族街へ近付く道とあって綺麗に舗装されていて、とても歩きやすい。
徐々に増える人通りに、目的地が近付いてきた事を知る。
大きめの広場が見えてきた。
旅人が休憩していたり、隊商の幌馬車が停まっていたりと、賑わっている。とは言え商店街の外れなので、あくまで空き地と言うか…単なる広場で公園ではないのが見てとれた。
「あの一団はグヌからみたいだね。
多分一番大きなテッボ族かな。皆青いターバンを着けているから、間違ってないと思う」
セルの説明でフィーも視線を向けた。
青い…青いのだろうか……多分青いのだろう。
埃と汚れのせいか、彼等の纏う全てがくすんでいて、色の判別は難しい。
広場を通り抜け、露店街に入った。
山のように並ぶ野菜や果物。それらを使った料理の露店も並んでいる。他には小物を扱う人が居たり、刃物の研ぎ師が居たりと扱う商材が幅広い。
これまで訪れた事のある商店街は、公爵邸の近く…異国からの菓子店もそこにある…と、モーソー家の近くのモノ、学院近くの店にも訪れた事はあるが、どこも規模の大きくない、どちらかと言えば庶民向けの商店街、露店街ばかりだった。
学院からずっと歩いて来たので、まずは公園で少し休もうという事になる。
空いたベンチにフィーが腰を下ろすと、セルは『少し待ってて』と言い残してその場を離れた。
どうしたのだろう…と遠ざかる背中を眺めていたが、なかなか戻って来ず、心配になって立ち上がろうとした頃になって戻って来た。
手には、前世で言う所のココナッツの実のようなモノが2つ。
よくよく見ると、ストローのようなモノも刺さっていて、本当にココナッツそのものだなと思った。
一つを手渡され、ベンチに並んでストローに口をつける。
吸い上げた途端、芳醇な香りと共に、甘く冷えた味わいが口の中に広がった。
「興味本位で買ってみたのだけど、意外といける」
セルの呟きに、フィーも頷く。
(これは……まんまココナッツ!
懐かしい!)
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