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それから何度か、アンネッタとエネオットの、少々ぎこちないお茶会が開催された。その間にもエネオットの評判に変化が見られるようになる。
―――あら…以前とは少し…
―――まぁ、あの方…マナーを覚え始めたのね
―――ほほう…マシになったと言えそうな
まだまだ辛口評価が多いが、外圧モリモリだった頃に比べれば、随分真面になった。
そのせいか、王女ネルローネの婚約についても話が進みそうな気配がある。
「それで…どうなんですの?」
ミリリカが少し前のめりに、ネルローネに質問をぶつけた。
今日は昼食を、珍しくネルローネと共にしている。その為いつもの中庭の四阿ではなく、普段は入室を許可されない…ネルローネが使っている別室での昼食となっていた。
「まだ詳細はなんにも聞かされてないのよ。
でもまぁ、このまま他国との繋ぎで外に出る事にはなりそうね」
あっけらかんと話すネルローネに、アンネッタが眉根を寄せる。
「そんな外交の重要なお話…わたくし達にしてはいけないのでは?」
王女の婚姻となると、貴族間のバランスや、周辺諸国との関係にも影響する為、普通はギリギリまで隠される案件だ。それをこうもあっさりと…たとえ仲の良い友人であっても避けるべき話題ではないか…と心配しているのだろう。
「だから今日は特別に、二人との昼食を許して貰ったのよ」
「どう言う事?」
「二人の口は、そんなに軽くないでしょう?
それに…多分、もうそんなに学院にこられなくなりそうだから」
苦笑するネルローネに、アンネッタもミリリカも息を呑んだ。
「そんな…」
「急すぎますわ」
今にも泣きだしそうなミリリカを支えながら、アンネッタが問いかける。
「でも…わたくしも、これまで何度か外交関連の公務にも関わった事がありますけど、ネルローネの婚約に関してはなにも…」
「ん~わたしも昨晩聞かされたばっかりなのよ」
どんよりと沈む空気に、ネルローネが何とか雰囲気を変えようとする。
「別にすぐ居なくなるとかじゃないから。
ただ準備もあって、これまでより学院で会えなくなりそうってだけ。でも、これって喜ばしい事でしょ?
なんたって、あの馬鹿兄の評価がマイナスからゼロに近付いたって事よ? アンネッタがまだ支えてくれるみたいだし」
ネルローネが持っていたカップをソーサーに戻し、居住まいを正した。
「改めて御礼を言わせて。
アンネッタ…本当にありがとう。あの馬鹿兄を見捨てないでくれて……。おかげで、私も安心して嫁げるわ」
そう…エネオットとのぎこちない茶会は、回を重ねるごとに穏やかさを増していた。当然、エネオットもとい耕作には、こっそりとフィーがアレコレ助言他しているのだが、それでもかなり見られるようになってきていて、周囲からの評価も上昇傾向にある。
ついでに魂の修復も完了していた。
ティディより少しだけマシな状態ではあったが、それでもサーズの半分以下の期間で修復を終えた。流石ノーエ…と感嘆した事で、サーズの御機嫌が少々斜めになった事も付け加えておこう。
微妙に重くなった空気を合図に、昼食は終わりの時間となった。
部屋を出る時に、『まだ内緒だからね?』と、ネルローネが茶目っ気たっぷりに言うので、アンネッタとミリリカも気持ちを切り替えた様だ。
3人はほんの少しの寂しさを抱えながらも、楽し気にお喋りしつつ教室へと戻って行く。
その様子を廊下の隅でそっと窺っていたフィーは、教室に入って行く背中を確認してから立ち去った。
ナホミの処刑も終わり、直美の消失を確認した。そして『ドニカ』も居なくなった。実際には名を変えて公爵邸に居る訳だが、それをそのままの事実として、アンネッタが知る可能性はほぼないだろう。
何にせよ、学院内の安全は確保されたと言える。
こうして影から護衛よろしく覗き見る事も、中止して良さそうだ。
フィーはその場を離れ、書庫へ向かう。
今日は魔法講義もないので、セルの執務室に行く用事がない。その為写本の手伝いに行く予定だ。
そして写本が一段落して空き時間が出来たら、お守り製作の続きをしようと考えている。
書庫は静かだから、きっと作業は捗るだろう。
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