192
「お父様お母様のような夫婦には、絶対になれないと思ってたの。
結婚して、王子妃になったとしても、わたくしは仕事をするだけの存在になるのだわって……。
いいえ、それ以前に、殿下の御心にわたくし以外の誰かが住まわれて、わたくしは紙屑のように放り投げられるのだと……」
あぁ、本当に罪深い。
強制力と言う外圧のせいだとわかってはいるが、過去のエネオットを絞め殺してやりたい。
……脳内展開するだけで、実行はしないと思う………多分。
それは兎も角、恐らくこのまま、耕作で安定すると思われる。
傷ついた魂でも、性格の揺り戻しが来ていないのだから、ほぼ大丈夫だろう。まぁ聞いた感じ、耕作自身も恋愛初心者のようだが、彼ならアンネッタがどんな答えを出したとしても、受け止めてくれる筈だ。
いや、耕作以上に恋愛若葉なフィーが言う事ではないのだろうが…。
「今日の王子殿下が今後も変わる事がないのなら、たとえ婚約を辞退なさっても、受け止めてくださると思います。
勿論、婚約継続でも」
アンネッタは、顔を覆っていた手を下ろした。
「辞退しても?」
「はい。
辞退でも、白紙でも、何でしたら王子殿下有責の破棄でも。
王子殿下のやらかしについては、隠しようがございませんので」
少しお道化て言えば、アンネッタはクスリと笑って緊張を緩めた。
「ふふ、そうね。
殿下は沢山やらかしてくださってたわ」
「はい。
ですが、今日の王子殿下は婚約継続を御希望のようでしたね」
ポッとアンネッタが頬の赤味を深くする。
「そ、そう……かしら……あぁ、そう…かも…」
解けた空気に、少し笑みを浮かべていたアンネッタだったが、再び表情を沈ませた。
「でも……信じて良いの?
信じて…思いを向けてから、また冷たくされたら……わたくし…」
アンネッタは唇を噛み締める。
「その時は怒ってしまって良いと思います」
「え……怒って…?」
「はい。
お嬢様が嫌だと感じた事、辛いと思った事、全てぶつけて差し上げれば良いのです。少なくとも、今日の王子殿下でしたら、ちゃんと怒られてくださいますでしょう」
一瞬ポカンとしたアンネッタだったが、ふわりと微笑んだ。
「そう…ね。
えぇ、そうだわ。ごめんなさい……わたくし、殿下を殿方として…いえ、友人とも思っていなかったかも…だから、避けられても平気でいられたのね。
それなのに、今日は何をどう考えれば良いのかわからなくて…」
「王子殿下の罪は重いですね。
お嬢様のお気持ちを振り回す王子殿下に、フィーが制裁を下して参りましょうか?」
冗談交じりに、でも声だけは真剣に言うと、アンネッタが本気で慌てる。
「ダ、ダメよ!
フィーが制裁なんてしたら、殿下がボロボロになってしまうわ!」
あぁ、本当に可愛らしい。
フィー自慢のお嬢様だ。
耕作となったエネオットに戸惑いながら、それでも向き合おうとするのアンネッタは本当に可愛い。ヒロインなんてお呼びじゃない。
「そう言えば…お嬢様、今日頼まれましたよね?」
「え?」
「名で呼んで欲しいと言われていらっしゃいましたよね?」
「!!!」
グッと喉を詰まらせたアンネッタは、また視線を泳がせた。
「……そ、それは……また練習…するわ」
「はい。
是非とも練習なさってくださいませ」
「………」
フィーはブラシを置き、のぼせてしまうんじゃないかと心配になるほど真っ赤なアンネッタを、ベッドに寝かしつける。
そして部屋を辞した。
フィーは自室に戻るべく、薄暗い廊下を歩きながら考える。
ティディの魂修復が終われば次は耕作の番だ。その時はノーエに頼むつもりだ。ノーエならサーズより短い期間で修復を終えるだろう。
その次は……少しずつ、フィーがここを離れる準備が整っていく。
なんにせよ、良い方向に転びそうで何よりだ。
どうせ耕作には会わねばならないし、その時に諸々釘を刺しておこうと思う。旅も諦めるよう、今一度念を押しておいた方が良いだろう。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




