189
そんなフィーの心情は兎も角、サーズ入り…と言うのも変な言い方だが…お守り袋を渡す事が出来た。
後は観察あるのみ。
ぜひとも成功して欲しいと祈りつつ、フィーは念を押しておく。
「大事にして貰えるのは嬉しいけれど、仕舞い込んでいては意味がないのよ?
一応護符と言うかお守りなんだから。
ちゃんと身につけておく事。良い?」
「う”~~~~……はぁい。
ちゃんと持っとく……でも汚したくないなぁ…」
まだ渋るティディに、フィーは苦笑を禁じ得ない。
「汚れたら洗えば良いだけよ。
お守りの本体は中に入ってる石だから、袋だけ洗えば問題ないわ」
その言葉にティディはやっと顔を輝かせた。
『うん!!』と満面の笑みで頷く。
この話はそこまで…と、訓練に戻ろうとて何すると、途端にティディは死魚目になった。
わからないではない…どう言えば伝わるだろうか…3歩進んで2歩下がる……と言うか、時折2歩進んで3歩下がる…。
そんな調子だから、逃げたくなるのも仕方ない部分はある。
それでも『じゃぁ…』と見逃してやる訳にはいかないのだ。アンネッタや公爵家、何よりティディ自身の為にも。
うん、先は長そうだが、それでも頑張ってくれ。
是非とも旅立つその日までに…と、フィーは無慈悲に追い打ちをかけた。
そんな一進一退なティディの勉強と訓練は一旦横に置くとして…それ以外は、それなりに順調である。
学院のある日はこれまで同様、メイドと助手の仕事をし、御邸に戻ってからはアンネッタの世話をしつつ、隙間時間にタイミングが合えばティディに付き合う。
時折じっと見つめてくるケルナーの視線に、罪悪感をチクチクと刺激されたりなんかもしたが、概ね平穏な日々が続いていた。
そんな変わらない日常の中に、それでも変化は訪れた。
御守りの効果が見え始めたのだ。
ティディの勉強や訓練に付き合う時、時々魂の状態も視ていた。
渡したばかりの頃は何の変化もなかった。だが、いつ頃だっただろう……黒い糸の残滓は兎も角、醜く歪んでいた魂の表面が少しずつ平坦になり始めたのだ。
恐らく強制力という黒い糸の方が、魂への侵蝕度が高いのだろう。直美の悪意による歪みの方から先に修復されてきたようだった。
サーズ達野良精霊の能力なら可能ではないか…と考えた結果、実行してみた訳だが、本当に可能だった事にフィーは喜びを隠せない。
何とか人前では取り繕うものの、自室に戻り一人になった途端、頬が緩んでしまった。
(これならいける。
これで積年の損傷を治し、彼等が今後の人生を謳歌する事が可能になる。
もう…きっと未来を諦めなくて済む筈)
フィーの脳裏に、浮かんだのはセル達だ。
彼等に施された継承魔法は、勿論無駄ではなかった。
フィーの魂は、元のフィリエーヌの身体に戻っては来たが、記憶が壊れてしまっていた。
例えるならテープやディスクなどの記録媒体は所持してはいるものの、再生できない…そんな状態だったのだ。
それが、落下してくるアンネッタを受け止めるという、非常にフィジカルな刺激で前世日本人だった頃だけは思い出せた。しかし、それ以前――何度も生まれ、生きて死んだ記憶と、身体に戻ってからの事は全く思い出せなかった。
思い出せたのは、セル達と出会えたからだ。
彼等がガヴォッドラーヘンを探していて、それの手伝いをしていた事で姉の結界に振れ、ガヴォッドラーヘンもフィリエーヌの下に戻って来た。
だから、これは恩返しだ。
例えるなら、忠臣へ王族からの褒賞とでも言えば良いだろうか…。気の遠くなるような長い時間、自身の命を削り続けて、それでも繋ぎ続けてくれた事への恩義を示すだけだ。
元はと言えば、フィーの叔父であるデミックが残したモノ。
ライアンサの負の遺産なのだから。
フィーはまた手仕事を再開した。
シャフには何の石が良いだろう…ルルなら華やかな色も似合うかもしれない。
セルなら……そこまで考えて、フィーは手を止めて目を閉じた。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
AI不使用な事もあり、誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




