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フィーはナホミの処刑当日、近くに控えていた。
直美消滅を確認する為だ。だから壁越しで問題なく、処刑そのものは見ずに済んだ。
直美は兎も角、ナホミに罪はない。そのナホミの身体に危害が加えられるのを、見たくはなかった。
刑が密室で行われた為の対応だったが、やはりと言うか…悪霊と判断された者は、これまでも秘密裏に処理されてきたらしい。であれば、悪霊の報告は途絶えて久しいと、王妃ヨリアンナは言っていたが、途絶えていなかったのかもしれない。何しろ彼等の手際が良かった。
恐らく多くは病人だったのでは…と思われるが、大きな被害がなければ、一々王家に報告などしないのだろう。
今回の直美のように、本当に悪意ある魂による事件もあっただろうが、肉体さえ消滅できれば良いというのは、本当の事のようだ。刑の執行によって直美の魂が消滅するのは確認出来た。
フィーが、自身の全盛期の魔法力を戻したとはいえ、死んで肉体のなくなった者を生き返らせる事は難しい。フィーにした所で、フィリエーヌとしての身体が保存されていたから戻れただけの事。そうでなければ、記憶を持っての転生にとどまっていただろう。
だから直美が再び、この世界に蘇る事はない。
そして今日はデービーが幽閉先へ移送される。
物陰に隠れて、フィーはそれも確認に来た。此方についてはナホミの処刑確認とは別の目的があった。
ナホミの方は、彼女の身体に潜む直美の魂の消滅確認。
デービーの方はと言うと、魂の損傷具合を確認する為だ。
以前耕作もといエネオットの魂を確認してから、フィーはアンネッタやケルナー、関係が薄いだろうと思われる公爵邸の使用人達の魂も視ている。勿論学院関係も。
アンネッタやケルナーの魂に、強制力を思わせる黒い糸は見えなかった。ただ全く痕跡がなかった訳ではない。
二人には働きかける外力があった。ただ、幼い頃にフィーと会い、矯正が始まった事で被害は軽微に済んだのだろう。
他、公爵邸の面々の魂は綺麗なモノだった。
学院関係は、殆どが軽微なもので、今後に影響はないと思われる。しかし思い切り影響があっただろう人物が一人――コターだ。
彼も攻略対象の一人なので、予想はしていた。
ただ、彼もドニカと接点が殆どなかったせいか、黒い糸は千切れている。
魂の損傷としては小さくはない……ないが、彼の場合あまりにうざかったので、フィーは放置する事に決めた。
強制的因果応報の刑に処す。
そしてヒロインと思しきドニカだが、彼女には黒い糸の残滓はあった。ただ彼女もナホミ…いや、この場合は直美か…直美によって歪められていた事で、影響力の糸は千切れてしまったのではないかと思われる。
千切れた黒い残骸が魂に纏わり付いているのは、全く以って美しくない。はっきり言って醜い。
耕作よりも酷い状態ではあるが、何処にも糸端が繋がっていない様なので、この先彼女がおかしくなる事はないだろう。
とは言え、コターと違い、彼女の魂の傷を放置する気はない。ある考えがあるのだが、それはまた別の話だ。
ちなみにドニカの名前は既に変わっていて、アンネッタやケルナー達への紹介も、間もなく行われる予定だ。
現在は『ティディ』と名乗っている。
名前の由来については、てっきり渡した絵本から探したのだろうと思っていたのだが、全く違っていた。絵本の所有者である少女が命名したらしい。少女はランドリーメイドの娘なのだが、姉が欲しかったらしく『お姉ちゃんならきっとこんな名前!』と、嬉しそうに付けてくれたのだそうだ。
当然、その少女は新しい姉『ティディお姉ちゃん』にくっついて離れないらしい。
ま、新生ドニカことティディが、嫌でないのなら構わない。
元より素直な性質…素直過ぎてそれが仇になる事もあるだろうが、きっとティディなら、幸せになる事が出来るだろう。
ゲームとは違った形だろうが、本人が幸せだと思えれば、それで良いのだ。
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