184 狭間の物語 ◇◇◇ ナホミは足掻く―2―
―――落ち着いて…
―――落ち着いて考えるのよ…
―――とりあえず、ここは牢屋…よね?
―――しかも地下牢……って、なんであたしが牢屋になんか!
―――あぁ、もう違うって!
―――そうじゃなく、脱出方法を考えるのよ
―――それにしても、じめじめした場所…
―――しかも臭い…そんな所に4人か…
―――普通、長居したくない場所よね?
―――つまり、あまり長い時間居なくてもいいって事で
―――はぁ? ちょ……急がないといけないじゃないのよ!!
―――チッ…えっと……そう…そうよ
状況から時間の余裕はないと思い至り、焦りの色を濃くした声音に、突然喜びのような…場違いと言いたくなるような音が雑ざり込む。
―――あたしはこの身体に入り込んだだけ
―――まぁ、元も持ち主は居ないというか
―――最初は空っぽだと思ったのよね
―――なのに残骸がしがみついてて、ほんとウザ
―――ウザすぎたから、噛みついてやったら大人しくなったけど
―――これ、噛みついてるのを外したら……
―――そうよ、外せばあたし、この身体から出られるんじゃない?
―――あたしってばアッタマいい~~~!
―――やっぱ『流石ア・タ・シ』って感じぃ~~!
―――じゃあ兎に角噛みつくのを止めて…
―――……って、アレ?
今度は再び焦りが見え始めた。
―――ウッソ…なんで?
―――は、外れない
―――ちょ、ぁ…違う、こいつ……
―――放せ、放せってーの!!
―――残骸の癖に、あたしにしがみつくなって言ってんでしょ!!??
微かに悲鳴のような音が聞こえた気がする。
それはナホミの身体を乗っ取った、直美にしか聞こえない程微かなモノだった。
―――あぁもう!!
―――本気でウザッ!!
―――でもこれでこの身体、捨てられるわよね
喜色満面とはこの事か…と呟きたくなる程、ナホミ…いや、直美の声は弾んでいた。
だが、それも直ぐに一変する。
―――あれ? なんで?
―――何で離れられないの??
―――いや、おかしいって……出られるはずよね?
誰に問うでもなく、直美は問いかけた。
―――えぇい、出せっ! 出させろってば!!
どんなに叫んでも、暴れても、直美の魂はナホミの身体から放れられないでいる。
「おや、暴れておるのぉ」
「銀鎖、護神符、それに我等術士4人が固めてるのに…無駄な事を」
「本当に悪霊だったんだな。なんにせよ、封じ込めには成功していて良かった」
「なんか誰かから進言があったらしいけど、流石王妃様だね。って言うか、早く執行して貰いたいんだけど?
……言いたかないけど、飽きたよ…俺」
―――嘘…うそ、うそうそうそ!!
―――封じたって言った?
―――でられないって……え、このまま…
―――このまま執行されちゃったらどうなんの?
―――執行って、やっぱり死刑とかよね?
―――ぁ、ぁぁああぁ…いや…嫌よ!!
―――出して!! 放して!!!
―――死にたくない…もう死にたくないのよ!!
この状態で身体が死に至れば、巻き込まれるかもしれない。
そして今度こそ、永遠の死に至ってしまうかもしれない。
そんなのは御免だった。
折角生き返れたのに!
本当は生き返ったんじゃないんだろうけど、それでも!!
直美は前世、日本で殺されるときの事を思い出す。
虐めて虐めて虐め抜いた……鬱になるまで虐め倒した新人後輩に駅で突き飛ばされた。
迫りくる電車……咄嗟に何か掴んだ気がする。
多分ゲームの受け渡しに呼び出した弟…耕作の腕か何か…。
―――あぁ、いやよ…いや……
―――出して、出しなさいってば!!!!!
―――…あたしが、この根岸直美様が頭下げてやるから!!
―――……違う…お願いするから
―――お願いします…
そこからはもうわからない。
だって直美の意識も記憶も吹き飛ばす声が聞こえたから。
「やっと時間みたいだ。
早く済ませようよ。飽きちゃってつまんないって…。
あ~当然労いは団長の奢りですよね? 俺、楽しみにしてますから!」
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