122
「フィーが居ない…あぁ、フィー…」
初めて見るセルの狼狽えように、ルルとシャフの方は一瞬呆気にとられた。
「……?」
「え?」
臨戦態勢を取っていたシャフとルルも、警戒対象である壁から注意が逸れる程の狼狽振りだ。
そんな二人を置き去りに、セルは何度も周囲を見回し、来た道を慌てて戻ろうと身を反転させる。
「フィー!!!」
ルルとシャフが止める暇もなく、セルは二人の手をすり抜けて駆けだす。
「ちょ、セル!?」
「セル様、御待ちを!!!」
シャフとルルは、警戒対象の壁と、遠ざかるセルの背中を交互に見、どちらも選べないまま立ち尽くすしか出来なかった。
「フィー!! 何処いる!!??
返事をしてくれ!!」
駆け出して、少し進んだ場所にフィーを見つけた彼は、安堵の吐息を漏らした。
そして微かな微笑みを湛えて近付く。
「あぁ、良かった。
かなり歩いたから、疲れても仕方ないよ。
それなのに気付けず無理をさせてしまったね…ごめん」
だが次の瞬間…その安堵は霧散してしまった。
フィーは立ってはいるが、その身体は小刻みに震えていた。
俯いているので、表情や顔色は確認出来ないが、両手は胸を抑え込み、見るからに尋常ではない様子がわかる。
セルはすぐさま駆け出し、今にも崩れ落ちそうなフィーの身体に腕を回して支えた。
「大丈夫?…じゃ、なさそうだよね。
何処か横になれるところ…」
フィーを支えるセルは、首を巡らせて周囲を確認する。
周りは…さっきの壁以外は、木々が生い茂るばかりで、フィーを休ませるのに適した場所は見当たらない。
「弱ったな…」
心底困ったように呟きを漏らしたセルだったが、彼の耳は微かな音を拾い上げた。
「…ぇ…?」
耳を澄ませば、音の発生源は自分が支えているフィー…。
セルは俯いたままの彼女の口元に、耳を寄せて問う。
「何?
フィー、苦しい?」
「……………
………………………探ら…いで……や…て…」
誰かに懇願しているように聞こえる声色に、セルは怪訝に眉根を寄せた。
誰が探っていると言うのだ?
セルはただ支えているだけで、探ったりなんてしていない。
「? ……何を言って…フィー?」
セルが顔を覗き込もうとした瞬間、フィーの身体が弾けた様に反りかえった。
そして絶叫…。
「ぃゃぁあああぁぁぁぁぁあああああぁぁ!!!!!!」
頭を両手で掴み、何度も首を横に振りながらフィーが叫ぶ。
流石にその声に、シャフとルルも壁から離れる決意をしたのか、バタバタと荒い足音が近付いてきた。
それに気付きはするが、今まで見た事もないフィーの様子に、セルは身動ぎも、目を離す事すら出来ず、ただ呆然と立ち尽くす。
「おい! 大丈夫か!!??」
「一体何が!?」
二人の声で現実に引き戻されたのか、セルが再びフィーの身体を支える為に、抱きかかえようとする。
「フィー、落ち着いて!!」
頭を抱えて暴れる…いや、苦しさとか、何かわからモノから逃れようと踠いているように見えるフィーと、それを必死に宥めようとしているようなセル…。
二人の様子に、その場に到着したルルもシャフも、何が何だかわからないようだ。
「フィー!!!」
何度目かわからないセルの呼び掛けが切っ掛けではないだろうが、叫び続けていたフィーが、突然身を硬直させた。
一瞬で静寂が戻る。
さっぱり状況が把握できず、どう動けば良いのかも判断できないでいたシャフとルルと違い、セルの動きは素早かった。
「フィー!!」
しっかりと身体を支え、顔を覗き込む。
セルの目に映ったのは、目を見開いて、まるで石化でもしてしまったみたいに固まっているフィー……その表情には驚愕とも恐怖とも違う、別の何かがある様な、それでいて何も感情を反映していないかのような、形容し難いモノが浮かんでいた。
「……っ…!?」
表情にも異常はあるが、それ以上に、セルは覗き込んだフィーに異変を見つける。
その異変は全く予想も出来なかった物で、彼は息を詰め…そして呑み込んだ。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。
ブックマークやリアクション等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。
誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




