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セルからは…いや、恐らくルルとシャフ、それ以外の人間も同じだろうが、フィーの瞳の色は翡翠色に見えていた。
その瞳に黄色…と言うより深みのある琥珀色が混ざり込んで渦を巻いている。
見開かれていたその瞳が、力を失ったようにゆっくりと閉じ、フィーの身体もそれにつれてガクンと重力に引かれる。
セルは支える力を咄嗟に強めた。
そのままフィーごと、セルは地面に座り込む。
「……ぉ、ぃ…」
ルルは続く言葉が見つけられないようだ。
そんなルルに代わるように、シャフが進み出る。
「何があったのです?
休日ですから大事には至らないでしょうが、さっきの声は尋常ではありません……フィーさんは無事ですか?」
シャフの冷静な物言いに、セルも少し落ち着きを取り戻したのか、抱えたフィーの額に手を伸ばし、熱の有無を確認している。
「ぁ……ぃゃ、それが…よくわからないんだ。
突然叫び出して」
「……なんなんだよ…まさかと思うけど、あの壁のせいだったりするのか?」
ルルもやっと落ち着いたらしい。
「可能性はなくはないけど……それより……」
セルが、いつになく弱々しい声音で言葉を紡ぐが、その後が続かない。
「変な所で言葉を切るなよ…。
それより…なんなんだ?
つっか、フィー…どっかに寝かせてやった方が良くねぇか?」
少し無理をしているように見えるが、それでも平素に戻りつつあるルルが肩を竦めた。
寝かせてやった方が良いのは重々承知だが、近くに寝かせてやれる場所もないのは、先だって確認してある。
だからという訳ではないが……、
「瞳の色が……」
「セル様?」
小さく零れ落ちた言葉に、シャフが怪訝に眉根を寄せる。
ルルも、セルとシャフを見比べて、首を傾げた。
「フィーの瞳の色が……違う色が混じって…」
『違う色』という言い方をするに留め、『琥珀色』と言う単語を呑み込んだのは何故か……。
それは兎も角、ありえない事を呟くセルに、ルルがお道化た様に突っ込んだ。
「おいおい、幻影魔法でも発動したとか言う?
いや、ありえねぇだろ……あんな叫んで、今は意識失ってるみたいだし……それで魔法発動って…」
「違う…魔法じゃない…。
魔法なら、流石にわかるよ…こんなに近くに居るのだし、何より彼女に触れている。
魔力の流れくらい感じ取れる」
他者から見える姿を変えるのは、セルもルルも常套手段で、馴染み深い。
だからすぐに幻影魔法が思いついたが、その可能性をセルに否定され、ルルも眉間の皺を深くした。シャフも信じられないと、首を横に振る。
「どう言う事だよ…」
「魔法ではないのに、瞳の色が変わる…?
いえ、普通…ありえません」
熱は無い様で、額に添えていた手をそっと戻し、セルは難しい表情で意識を失ったフィーの顔を見つめる。
「壁は気になるけど、フィーをこのままにしておけない。
僕は先に戻るよ」
そう言うと、セルはフィーを抱えたまま立ち上がり、姫抱きに抱え直した。
「そうですね。
あの壁は調べなければなりませんが、わたしとルルの二人では手に余りそうです。わたし達も一度戻るとしますか」
シャフがルルの方を見ながら確認する。
「しゃぁねぇな。
一番の魔法の使い手が離脱するんじゃ、後日にした方が良いと俺も思う」
フィーを抱えたセルが頷き歩き出す。
ルルとシャフもそれに続くが、突然セルが足を止めた。
「……フィー…?」
「ぉ、もしかして気が付いたか?」
「あぁ、それなら一安心ですね」
ルルとシャフには安堵の空気が広がるが、呟いたセルは固まったままだ。
「セル様?」
セルの様子に気付いたシャフが、その横顔を見てから彼の背中越しに、抱えられたフィーを覗き込む。
「ッ!!」
声にならない声を発し、シャフも固まったのを見て、ルルも覗き込んだ。
「ぇ……ぃゃ、嘘だろ……」
セルの腕の中で意識を取り戻したフィーは、確かに目を開けている。
しかしその表情は虚ろで、瞼も半分落ちた様な状態だ。
何より翡翠色だった筈の瞳は、深い…セルの色よりも深い琥珀色に取って代わられていた。
「何で…その色……。
その瞳はもう、セルしか……なのになんで……」
ルルが混乱したように呟いた。
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