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「ルルではありませんが、本当に探しましたよ。
時間になってもお二人の姿がなく、心配しました」
シャフが苦笑いの中に、少し心配を滲ませた。
「すまない。
神経を集中する事に、気を取られていた様だ…」
セルが申し訳なさそうに目を伏せる。
少し息が整ったのか、上体を起こしたルルが肩を竦めた。
「まぁ、セルが方向音痴なのは、昔からだから良いけどさぁ…フィーも居るんだから少しは注意しろって。
形だけとは言え雇い主のセルの失態を、フィーが指摘なんて出来ないんだからな?
(……つっか、何の為に二人きりにしたと思ってんだよ…あぁもう、じれったい!)」
「うん、そうだね…」
最後の方は小声になっていたせいか、セルの耳には届いていなかったらしい。
苦言の方にだけ反応し、セルがフィーの方へ顔を向ける。
「ごめん、きっと不安にさせたよね」
セルは微かに下唇を噛んで、海溝よりも深く沈んでしまった。
フィーはと言うと、欠片も気にしていないので、そんなに凹まれると反対に恐縮するしかない。
何しろフィーは、神様との散策に心底舞い上がってウキウキだったので、現在位置なんて全く気にしていなかったからだ。
「いえ、推しとの散策は御褒美以外の……いえ、何でもありません。
えっと……現在位置を気にしていなかった私の失態です。
それはそうと、セル様は方向把握が苦手でいらっしゃるのでしょうか?」
さっきまでふわふわと舞い上がっていた影響が残っているのか、あまりにダイレクトアタックな問い方になってしまい、内心焦ったが、当のセルはそれを気遣いととったようで、恥ずかしそうに笑った。
「僕自身はそこまで酷くないと思ってるのだけどね…」
「方向認識力がどうのより、一つの事に集中しすぎるんだよ。
いや、集中するのは良いんだけどさ、セルは集中しながら他の事も同時進行するのが良くないんだって」
なるほど、集中していること以外は疎かになりがちなのだろう。
なまじ他の事もしてしまえるからこその弊害とも言える。
舞い上がっていた気持ちが着陸した直後だったとは言え、あんまりな言葉を選択してしまったと、フィーは膝から頽れそうになったが、幸か不幸か、その場の空気は無事に和ませる事が出来た様だ。
「それで、この辺りは…?」
セルの疑問にルルが答える。
「セル達の担当区域より南の方だな。
地図で言うと西側の方」
ルルがぐるりと周囲を見回しながら言うと、セルとシャフが同じように周囲に目を向けた。
フィーはと言うと、木々の合間に見え隠れする壁の方が、気になってしょうがない。
何と表現すれば良いだろう……うまく言えないが、意識がどうしても引き寄せられているような…そんな感覚を覚えていた。
「あの…折角ですので、あの建物を調べませんか?
時間的に最後になるでしょうけど…」
遠慮がちに言葉にすると、ハッとしたセルがフィーを見つめる。
そしてゆっくりと頷いた。
「そうだね」
歩き出したフィーとセルだが、ルルとシャフはその場に立ち尽くしたまま付いてこない。
それに気付いたフィーとセルが、足を止めて振り返った。
訝しそうに顔を見合わせている二人に、セルが声を掛ける。
「シャフ? ルル?」
セルの声に、シャフが躊躇いがちに口を開いた。
「……建物…ですか?
その…この周辺は生徒達の野営実習が行われる場所で、建物はないはずなんですが…」
シャフの言葉にルルが同調する。
「うん、地図を見ただろ?
あれは警備兵から貰ったモンなんだ…警備の為に小さな小屋も余さず書き込まれてる筈だし、相手もそう言ってた」
「わたしも事務方を手始めに、各所に聞いて確認しています。
補充の仕事が回ってきていたので、聞きまわっても不自然ではなった事は幸いでした」
今度はフィーとセルが顔を見合わせた。
「いや、でも……あそこに木組みの壁が…でも新しそうに見えるから、最近建てられたものかもしれないね」
少し身構えていたシャフとルルが、ホッと息を吐くのが聞こえる。
「そう言う事なら…」
「てか、俺には見えないんだけど、まぁ木組みだって言うなら小屋とかかもなぁ」
距離的な問題かもしれない。
フィーとセルは歩き出していたので、シャフとルルからは離れてしまっていた。それに木組みなら、周囲の木々に埋もれて視認し難くなっていても不思議ではない。
しかし……。
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