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フィーの心の呟きを聞いたのではないか…と疑いたくなる程、セルがピンポイントで言葉を繋いだ。
「何故、急に理解出来る様になったのか…僕だけじゃなくシャフもルルも、よくわからないと言っていた。
ただ、3人が3人共、此処にあると一致したんだよ。
それからは、何とか穏便にボーカイネン王国に入り込む方法を探し始めたんだ。ボーカイネン王国側が認識していないとしても、この国にあった物を持ち出そうと言うのだし、出来ればひっそりと、誰に知られる事なく持ち出したかったから…。
そんな時に、リッケ家に都合よく講師の話が舞い込んできたんだよ。
それで3人でやってきたと言う訳」
不明な点は多いが、理解出来なくはない。
何百年も継承可能な魔法なんて、術者はとんでもない凄腕だったのだろうが、術を掛けられる側の負担を考えれば、出来るだけ情報量は少なくしたいと思うのではないだろうか。
その結果、暗号文のようになってしまった…等、思い浮かぶ理由はいくらでもある。
何にせよ、セル達は幸か不幸か、連綿と繋いできた継承魔法の発動に、巻き込まれた哀れな被害者とも言えるかもしれない。
再び調査を進める為に歩き出すが、木漏れ日の中、気持ちの良い散策が続くばかりで、これと言った手応えは得られていないようだ。
途中、休憩を挟みながら歩き続けるが、セルの様子は変わらず、フィーも違和感などを見つけられないまま、今日は時間切れとなりそうである。
「今日はここまで…かな」
セルの顔色は冴えない。
フィーとしては推しとの散策になっただけなので、落胆するどころか、舞い上がる寸前だったが、彼の表情に胸がチクリと痛む。
何百年も背負わされていたモノに、到着点が見えはじめた…フィーには、彼等の内にどんな感情が在るのかわからない。
ただ『呪いみたいだな』というのが正直な感想だ。
考えれば、術者達は故国…魔法皇王国に思い入れがあっただろう。
どんな理由で亡国となったのか…その理由は定かではないが、少なくとも関係者だったのなら、戻りたいと願うのは普通の感情だと思う。
だがセル達は違う。
継承魔法で引き継いできたと言っても、それは自ら望んで…ではないだろうし、彼等には現在の暮らしがあった筈だ。
さっさと終わらせたい…と言うのが本音ではないだろうか…。
推しが辛そうなのは、ファンにとっても辛い事。
フィーは『かぼちゃラーメンは必ず見つける!』と、改めて決意する。そして、何としてもセルを…セル達を元の生活に戻らせてやるのだ。
そんな事を考えながら、彼の背後でフィーが拳を握りしめていると、前を歩いていたセルが足を止めた。
「あれ、此処は…」
何か感じたのかと、フィーはキュッと唇を引き結ぶ。
「いつの間にか、随分と探索場所からズレていたみたいだ…」
思わずガクリと、何とか新喜劇よろしく前につんのめりそうになるが、最初に決めた探索場所から、かなり外れてしまったのは確かなようだ。
前方に何かの建物らしき壁が、木々の合間から見え隠れしている。
フィーも現在位置を確認しようと、周囲をぐるりと見回して呟いた。
「本当ですね。
気付かず申し訳ございません」
「言葉…って、ほんとにもう」
相変わらず使用人のような言葉が出てしまうフィーに、セルが苦笑する。
使用人の様な…もなにも、フィーがメイドで使用人なのは間違っていないから、気を付けていても、つい出てしまうのだ。
「ぅ……」
ククっと笑いを堪える様も尊いが、それはそうと…だ。
此処は何処だろう?
前方に建造物は見えるが、木々の合間から見えるのは特徴のない壁で、断定が難しい。
小屋などの簡易な建物ではなく、しっかりとした壁に見えるので、近付いてみれば何かわかるかもしれない。
互いに阿吽の呼吸で足を踏み出すと、後ろの方から微かに声が聞こえてきた。
「(おーい)」
聞き覚えのある声に、フィーとセルは足を止めて振り返る。
声の主…ルルが、駆けてきているのが見えた。
フィーとセルの前まで来ると、ゼーハーと前屈みになって肩で息をしている。
「ったく…探し回っちまっただろうが…はぁはぁ…。
なんだってこんなとこまで…」
探し回っただろう事が容易に想像出来る。
疲労困憊な様相のルルの後ろから、苦笑いで近付いてくるシャフの姿も見えてきた。
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