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現在は大人しくしているデービーも、いつまで大人しくしてくれているかわからない。
ナホミに至っては、行方がわからなくなってしまっていた。
ドニカ保護のゴタゴタの時期に男爵家から追い出された様なのだが、その後の足取りが全く掴めなくなっている。どうやら所在不明になったドニカを探して来いと、外に放り出したらしいのだが『全くなんて事をしてくれたんだ』と、つい本音で思ってしまう。
デービーはまだしも、ナホミがこのまま大人しくしてくれる可能性は、決して高くないとフィーは思っている。
シナリオから逸脱できたかもしれないが、それに胡坐を掻いてもいられない。
懸案事項は一つでも少ない方が良いに決まっているのに…と、愚痴がとまらないフィーだった。
ドニカにとって鬼教官とも言えるフィーが居ない方が気楽だろうに、アンネッタが寂しがる…なんて可愛らしい理由で引き留めようとするのは、とても後ろ髪引かれるモノがあるが、叶うなら今日は、かぼちゃラーメン武器捜索日としたいのだ。
尚も渋るドニカをイメネアに預け、フィーは学院に向かう。
アンネッタが登校する訳ではないので一人徒歩なのだが、見えてきた学院の建物を前に、歩調を緩めて眺めてしまった。
普段は馬車での移動が多いし、こうして眺める事も殆どなかったが、改めて大きな建物だと思う。
敷地は建物以上に広大で、森の中に浮かんでいるように見えなくもない。
再び歩き出しながらフィーは考える。
(これまで全部空振り。
とは言え、未探索の場所はまだまだ多いみたいなのよね。だから今日も分散しての探索になると思うけど……私、見落としてそうな気がするのよなぁ)
フィーにゲームの記憶があると言っても、実際の探索に役立つ記憶なんてない。セル達が持つという血の反応が、フィーにない以上どうしたものかと、毎度グルグルと考え込んでしまうのだ。
不自然な個所や違和感がないか…を軸に探してはいるが、どうにも不安は拭えない。
そんな事を考えながら歩いていると、セルの執務室に無事辿り着いていた。
いつものように扉をノックすると、中から応えがあった。
中に入ると執務机にセル、本棚の前にシャフ、そして窓際の椅子にルルがいた。
部屋に足を踏み入れる前に、しっかりと礼をとると、|三者三様の声が掛る。
「今日も宜しくね」
「あぁ、いらっしゃい」
「お、来たな」
この遣り取りも馴染みの光景だ。
室内に入り扉を閉めると、シャフとルルも、セルの近くへと集まっている。
フィーも其方へ足を向けた。
丁度ルルが地図を広げている。
ざっくりとした学院の見取り図だ。それにはびっしりと『×』マークが書き込まれている。
学院建物北側……探索済みの場所である。
だが、改めてよく見ると『×』マークは、全て建物外に記されていた。
北側も、倉庫には『×』マークは書かれていない。
フィーはこれまで、見取り図をじっくりと見た事がなく、セル達の指示に従って探索していたのだが……。
てっきり建物内は探索済みだと思っていたのだが、見取り図を見る限り調べていない可能性が出てきた。
確かに記憶にも森の様な…兎に角、緑色の背景だった為、フィーも外だと思っていたけれど、もし本当に未探索なら、建物内も一応探してみるべきではないだろうか?
(…確か祭壇みたいなのもあったし…って、そう言えば……セル様達は口伝に似た魔法で、かぼちゃラーメンの事が連綿と伝えられてきたとか何とかって聞いたけど、他には何の手掛かりもないのかしら…?
外だと断定できる何かがあるのよね? 多分…。
そうじゃなかったら外しか探索しないっていうのも、おかしな話だと思うし…)
「……ぁの…」
おずおずと声を出すと、3人の視線が瞬時に集中した。
「…っ」
シャフもルルも、十分すぎる程に麗しいが、何よりセルと言う最推しからの視線に、思わず『この場にケミカルライトがあったら!!』と、切実な願いが口から飛び出そうになる。
流石に不味いと、咄嗟に声を詰まらせる事で、何とか最悪の展開阻止に成功した。
だが……。
『気を抜いている時の不意打ちは、これだから困るのよ!』
そう内心で零したフィーは、決して悪くない……筈、だ…。
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