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学院では、ドニカ粛清の噂がひっそりと流れた。
いつの間にか退学していたからなのだが、実はこれはドニカ自身の意思だったりする。
勿論、噂の通りの『粛清』なんて事実はない。
身体強化が使えるらしいとわかったメナジアは、あっさりフィーの提案を受け入れた。
そのくらいには希少な魔法なのだ。
攻撃能力はなくとも防御…盾として使えると言うのは、騎士や兵には喉から手が出るほど欲しい能力だし、貴人にとっては、傍仕えが持っていれば安心な能力なのである。
信頼がおけずに傍仕えとは出来ずとも、下働きとして敷地内に置いておけば、有事の際には時間稼ぎの為に、殿に残すと言う手段も取れる。
どう転んでも使い道はあるのだ。
理解が追い付かないドニカを横に、話はとんとん拍子に進んだ。
モーソー男爵家の方も、ドニカの身柄引き渡しをあっさり了承したと言う。その上、厄介払いとでも言いたげに、早々に男爵家から籍も抜いたのだそうだ。
つまり、ドニカの現在の身分は平民である。
その事を知ったドニカは、学院からの退学を希望した。
既に貴族ではないし、これからは使用人としての厳しい日々が待っている。
そのまま学院へ通う事を許可したところで、恐らくドニカ自身へとへとで、そんな余裕はなくなるだろう。
何より本人が平然…いや、どちらかと言うと嬉々としている。
学院に通うのは、もしかすると苦痛だったのかもしれない。
何と言うか……これで表舞台からヒドイ…んん!…ヒロインは退場。
攻略対象達も、エネオットは中身の耕作が覚醒? よくわからないままではあるが、今後は良識ある行動をとってくれるだろう。
チェポンは元より大型犬系脳筋だったが、リアルの彼は脳筋と言うより脳不足で、あまり実害があるように思えない。
実際、これまでフィーの邪魔をした事もないし、アンネッタに絡んできた事もない。
コターは…論外だ。
舞台に上がってさえいない。思わぬ登場で焦ったのは事実だが、あまり接点はなく、デービー暴走の一件以降は顔を見る事もない。
ケルナーに至っては、最初からゲームの舞台袖にさえいない。
問題はになりそうなのはデービーくらいか…。
最近は大人しくしているが、すれ違いざまに睨んできたりはするので、気を抜く事は出来ない印象だ。
(デービーねぇ……。
耕作さんの話では同情の余地ありかもしれないけど、実際にはチェポンと違って実害アリアリだし、警戒は緩められないかなぁ…ドニカから聞いた話だと、ナホミとも面識があるみたいだし…。
両者があわさると、どんな化学反応を引き起こすのか想像もつかないから、余計に不安だわ。
とは言え、シナリオとしては頓挫した形になったわよね?
ヒロイン枠らしきドニカは、既にアンネッタと対立する立場ではないもの。
まぁ、まだお嬢様の前に出せる状態ではないけど、攻略対象達とも接点はなくなってるし)
そんなこんなで、想定外のシナリオ幕引きとなったが、だからと言ってフィーが暇になる…なんて事はなかった。
今も変わらず、助手として学院内でもアンネッタの周辺に気を配り、空き時間にはかぼちゃラーメンの捜索をし、邸に戻ればドニカの教育指導……過労死との再会も近い…かもしれない。
現在も……。
「……うぅぅ…無理だって、絶対に無「言葉遣い」うぅ…無理、デス…」
今、ドニカにはマナーを教えている。
教えているのだが……本気で覚えが悪い。いや、記憶力が悪い訳ではないのだと思う。ドニカ自身が好きな事や興味のある事は、簡単に記憶習得出来ているのだ。
例えば花やお菓子の名前なんかは、直ぐに憶えている。
ただ興味のない事はからっきしだ。
これは大きく方向転換をした方が良いかもしれない。
『自分探しの旅』と言う、新たな目標を望んでしまったフィーは、自分の代わりにアンネッタの傍仕えとなれる人材を探している。
しかしドニカは、身体強化魔法があったとしても、裏方の方が良いかもしれない。
実際に、こうしてドニカ本人と関わる事となってわかったが、やはり彼女自身は、よく言えば素直で優しい気質のようだ。
ま、裏を返せば考えが浅く疑う事も出来ない、気弱な子供…と言った所だろう。
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