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―――あたし、駅で突き飛ばされたんだったわ
―――えっと…元新人女…最初に虐めたのは……
―――織田とかって名前だったわよね?
―――ま、係長に目を掛けられてたのが気に入らなかったんだけど
―――でもアイツより開田よ、開田
―――気が強くて、このあたしに歯向かって来たのよね
―――信じられる? この『あたし』によ?
―――美人で、優秀で、取柄しかないあたしに歯向かって来たのよ
―――許せる訳がないわよね?
―――能無しの癖に、本田係長に優しくされて…
―――ムカつくったらなかったわ
―――それなのにさ
―――仕返ししてやろうと思ったのに、翌週には辞めてて…
―――怒りを何処に向ければいいのよ、って感じ
―――逃げられて悔しかったけど、次のはじっくり甚振ってやれた
―――なんだっけ…そう頼木! 頼木 果代子
―――あいつ、ビクビクして面白かったのよね
―――それなのに…
―――代行使って辞めた癖に、いつのまにあたしのストーカーに…
―――まぁ、鬱はいるまで虐めちゃったからなぁ…
―――ちょっとやりすぎたかなと思わなくもなかったけど
―――だからって電車に轢き殺させるなんて、最低…
―――あぁ、まじでここが現代日本じゃないのが残念
―――呪って憑き殺してやるのに…
―――あ、そういえば…
―――あたし、突き飛ばされた時、咄嗟に耕作の腕掴んじゃったかも
―――巻き添えにしたかな?
―――ま、いっか どうせ弟だし、姉の道連れに選ばれて喜んでるでしょ
―――でも、何の為に耕作呼び出したんだっけ?
―――なんか、むしゃくしゃして耕作でストレス発散しようって……
―――あ~もう、思い出せない
―――けど、どうでもいいや そんな事よりこれからの事よ
やっと脳内談話が終わったのか、その場でボロボロになっていたワンピースを脱ぎ、それを水桶の中に浸して絞る。
夜風の冷たさが肌に突き刺さるけど、一刻も早く身体から、汚れと悪臭を遠ざけたい。
固く絞った服の残骸で身体を拭いていたら、東の空が白み始め……その後、ドニカと出会い、身体の名前や置かれた状況、国とかの名を知り、今いる世界が『流恋』の世界だと気付く事になった。
………………
…… ……………………………
ナホミはバタンと大きな音を立てて閉められる扉を、何の感慨もなく見つめながら、ある意味この世界に誕生した時の事を思い出していた。
はぁと、疲れたように息を吐いてから歩き出す。
と言っても、何か宛てがある訳でもない。
一番可能性が高いのは王城だろうが、最近の王子の様子を聞く限り、ドニカは避けられていたようだし、門番があっさりと通してくれるとも思えない。
少なくとも、あのドニカに門番を出し抜く力量も度胸もない。
じゃあ他には…と考え、浮かぶのは学院だが、こっちもこっちで全方面から最近は避けられていて、ドニカには針の筵だったはずだ。
尤も、針の筵だろうが何だろうが、ナホミが追い立てて学院には行かせていたから、ドニカがどう感じていたかなんて興味もない。
困ったな…と呟きながら、それでも一つ思いついた。
側近の奴等に放り投げよう。
側近のうち、最初に思いついたのはチェポン。
何故かと言うと、彼はドニカを嫌っていない希少な人物だからだ。
しかし…と思い直す。
ナホミ自身はチェポンが苦手だ。
苦手と言うより、はっきり言えば嫌いなのだ。
『打てば響く』なんて芸当が出来ない…有体に言えば愚鈍な所がある。よくもまぁ、それで護衛騎士だと名乗れるな…と、突っ込みたくなるのが常だった。
最初こそチェポンも篭絡して…なんて考えていたが、あの鈍さに耐えきれず愛想笑いで誤魔化した。
なので、結局深い仲になっているのはデービーだけだ。
エネオットは王族なんて面倒臭いと思ったし、コターはそもそも会う事も出来ていない。
深い仲と言うなら、ドニカの父と兄もそうだが、男爵夫人の怒りを買ってしまったし、そろそろ頃合いだと見切りをつけた方が良いかもしれない。
先代の財を食い潰すだけなら先はないし、男爵家程度では成り上がる切っ掛けには弱い。
デービーは婚約者が居るものの、侯爵家の長男だ。
嫡男かどうかは知らないが、ナホミの手駒の中では最高位。
「ま、好みはケルナーだから、それまでの遊び相手でしかないけどね」
フフンと御機嫌に鼻を鳴らして、ナホミはノクレンダ侯爵邸を目指す事に決めた。
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