The End of Chapter Two ~ I’m Falling For You. ~
グノムシャークを離れる直前、カリナは一通の手紙をブレヴィンズ子爵に預けた。シャーロが目覚めたら渡してほしい、と言伝とともに。
「王都の宵宮にてお待ちします」
回国を終えて都へ戻れば、聖女の偉業を祝しての祭りが開かれる。その前夜祭にお会いしましょう、と誘う手紙だった。
最後の一つとなるはずだった聖杯は、グノムシャークから遠隔で活動状態にさせていた。
無理に行く必要はなかったが、旅程には組まれていたため、せっかくだから寄ってみようと決めた。早く帰国したいと言う者があればどうぞ、とは進言したが誰一人として欠けなかった。
ラ・メール・エクラタンテ海に沈む聖杯。潮の満ち引きで現れては沈む小島に祀られている。
青い海の中に銀色が波打つ様子は、スノードームに似ていた。見ていて飽きない。
これで全部終わり。
ゲームのようにエンディング曲が流れるでもなく、神さまからお礼を告げられるでもない。
「全ての聖杯を満たされましたね。おめでとうございます」
ニノンが振り向いたカリナに頭を下げる。
「滞りはありましたが、みなさんのお力添えのおかげで完遂することができました。ありがとうございます」
目の前には全員が五体満足で立っている。魔症を退け敵を散らして、聖女を守った面々が。
「お礼をおっしゃるには早いですわ。王城に着いてからになさいませ」
「そうですね、ではまたそのときに。この街で何日かゆっくりしましょう」
護衛として数人を残してパラパラと散って行くなかに、手を繋ぐウクドリッドとニノンの姿があった。
「ニノン。あなたの全てを受け入れる。ニノンを一人の男として愛しているんだ。外聞もなにも気にしなくていい。私と結婚してくれないか」
それは以前くれた言葉となんら変わらない。言われる度に断っていた。けれど今度は。
「はい。わたしもウクドリッドを愛しています」
やりとりこそは聞こえなかったけれど、抱き合う姿を見て、結果はわかった。
カリナはルシアンヌと見つめ合い、手を取り、歓喜の悲鳴を上げた。
波に逆らい歩みを進め、カリナの背後に立つ人間がいる。ルシアンヌは身を引いて、岸に戻っていく。
厳重な騎士団の警戒を掻い潜って聖女に近づける人物を、カリナは一人しか知らなかった。
にっこり笑うと、彼もふっと顔の筋肉を緩めた。
背が高く、波のような瞳をした青年。
カリナをいつも助けてくれる人。カリナがいつも助けたいと思う人。
「あのね、私、シャーロが好き」
「俺もカリナさまをお慕いしてます」
シャーロが片膝をついて、カリナの両手を取る。カリナがやや先走って口を開いた。
「だから、恋人になってください」
「だから、結婚してください」
カリナが目を丸くしているのに対して、シャーロは気の逸りを猛省するように眉間に縦じわをいくつも刻んだ。
「そうですよね、まずは交際からおねが、」
カリナの指がシャーロを黙らせた。はにかんで、返事をする。
「はい」
両腕を広げて、シャーロの首根っこに抱きついた。
「シャーロ、結婚してください!」
細い肢体を抱きしめたまま、男は立ち上がる。喜びのあまりくるくる回った。カリナの服の裾が吸った海水が振り撒かれる。きらきら、きらきら円を作って輝いていた。
青が弾く光に照らされて、二人はキスをした。
The End of Chaptor Two.
(Applause!)
I’m Falling For You.
(あなたに恋してる。)
最後までお付き合いくださりありがとうございます。
初めての10万字超え作品でした。
自分が至らないところがすこしわかった気がします。
第二章から急に登場人物増やしすぎて、それぞれ騎士たちの活躍の場をつくりたかったのですが、難しかったです。
風呂敷広げすぎました……。
もっとコメディとシリアスのバランスを上手にとって、メリハリつけて……と、頭でわかってても実際書き出せるかというと別な問題ですね。
でも自分の足りないところを明らかにしていけることは楽しかったです。
この後のカリナとシャーロについてもちょっと書きたいので、完結処理はもう少し後にします。
それでは次の作品でもお会いできますように。
ほんとうにありがとうございました!
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