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Interludes.

 王城の穴は健在で、シャーロが壁面を登り縄を垂らしてカリナを引き上げた。

 騎士団旧寄宿舎に急いで戻り、カリナとリリは再び交代する。カリナが寝床としている一室で、お互い洋服を脱いでは交換して着た。


「聖女さま、いくつか質問をしてもよろしいですか?」


「え? なんですか?」


「お好きな形、色、模様を教えてくださいませ」


「形……? 四角よりかは丸っこいほうが好きかな。黄色とか青も好きですし、模様……は?」


 では角は丸くして、色は濃い目が合いそうだから……とリリの脳内で数十点の色見本が次々と展開される。


「お兄さまのレースのリボン、わたくしが編んだのですけれど、気に入った点もしくは気に入らない点を教えてくださいませ」


 そう訊くので、シャーロがリリに新しいレースを作るよう頼んだことを思い出した。


「ああ、それは。もらったリボンはとても気に入ってます。規則性がありそうでない、不思議な模様ですよね。紋章みたいで綺麗です。色は、私に合わせるならはっきりした色の方が合うのかな」


 リリはひたすら頷いて頭の中に書き留めていく。


「お髪に負けてしまいますものね。ああ、色彩表(カラーチャート)を合わせてみたいですわ」


 そのままレース談義に巻き込まれた。なかなか降りてこない二人を心配してシャーロが呼びにくるまで、リリは質問を繰り返していた。


 唐突に復活した王都の聖水に人々は都の内外から殺到し、暴動かと勘違いした地元民が騎士団を引っぱり出す事件にもなった。騎士団は混乱する民を整列させて終わった。


 誰も彼もが最初に聖水の復活に立ち会ったカデルに「聖女はどこの誰だ」と問い詰めたが、彼は「わかりません。しかし確かに聖女さまはこの地に降りられたのです」と貫いた。

 どこからともなくふらりと現れた慎ましやかな聖女が人の目を掻い潜って聖杯を満たしたのだ、とみんな口々に噂した。



****


 

 カリナに手渡された紙箱には、数着のワンピースが折り畳まれていた。

 門番には怪しまれたシャーロだが、「妹へのプレゼントをどうにか誕生日まで隠しておきたい」で押し通した。


「妹の私物で悪いが。袖を通してないものだから、もらってほしいそうだ。サイズも合わせてみたからって」


「え? リリさんに会ったの、昨日が初めてだけど……」


「夜のうちに調整したみたいだぞ」


 朝見た限り、寝てないが陽気に鼻歌を歌っていた妹が脳裏に浮かぶ。本当にあの子は手作業が好きだ。


「そんなにしてもらって、申し訳ない気が」


「リリも好きで喜んでやってることだから、受け取ってやってくれ。あと、俺の気が回らなくてすまない」


 それは主にカリナの着替えがないことを知らなかったことへの謝罪だったが、言い出さなかったカリナもカリナだと思うので、触れないでおく。


「ううん! ありがとう。リリさんにもお礼をたくさん伝えてくれる?」


「ええ。でもサイズが合わなかったら、作り直すから教えてほしいって」


「わかった」


「レースのリボンは時間かかるから、まだできてないようだ」


「もうじゅうぶんいただいてるよ。シャーロのリボンあるし」


「それは……、いや、うん、いいんだ」


 シャーロは目を逸らす。


「やっぱり返したほうがいい?」


「いや、持っててくれ」


 そこはきっぱりと言い切った。


 夜に確認したらワンピースの内側に下着も入っており、カリナは誰もいない空間なのに感謝の言葉を口にしていた。



Interludes. (幕間)

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