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Whatever Your Wish Is.

 シャーロがやってきたのはお昼過ぎだった。


「懺悔する。あなたの存在を妹に話してしまった」


 こういうとき聖職者はなんと言うのだったか。


「許します?」


 ふぅ、とシャーロは緊張を解いた。茶番か本気かちょっとわからないが、カリナは笑っておく。そもそも、カリナに人の罪を許す許さないといった権限なんてないのだし。


「構いませんよ。シャーロさんの家族ですもんね」


 魔症が消えたことを喜んでくれていればいいな、で終わらせてカリナはのほほんと受け入れた。


「それもあるが……」


「あ、でもご両親は?」


 打ち明けたのは妹、と言っていた。


「世界をどこそこ回っているので知らせの手紙はまだ届いていないかな。怪我も軽いものと言っておいたし、そこまで心配はしてないだろう」


「それでいいんですか?」


 節のしっかりした手を握って開いてしてみせる。


「この通り無事だからいい。そして妹だけに話したのは、あなたには女性の協力者が必要だと思ったから。迷惑でなければ、一度俺の妹と会ってくれないでしょうか」


「私に協力者を考えてくださってたんですか? ありがとうございます。妹さんの都合がいいときにぜひ。私、ここから出られないみたいなんですけど」


 王城の中で召喚されたカリナは王城への入出を管理する門番には存在を認知されていない。入った記録のない者が出ていけば怪しまれるだろう。


「妹をこちらに連れてきたいと思う」


「わかりました」


「では話を進めておく。それで、昨日妹と話したらレースのリボンを新しく編んでくれることになった。聖女さまのお好みを知りたいと」


「ありがとうございます。でもひとつもらってますから事足りてますよ。私、お返しできるものがないです……」


「そんなの。俺の魔症を浄化した礼にも足りない」


「あれは私の労力ほぼゼロですよ? 悪いですよ」


 シャーロは複雑そうに顔を歪める。


「聖女さまは浄化をずいぶん軽く捉えているようだが」


「だって、聖職者の方も浄化できるんですよね。私一人だけの力じゃないみたいですし」


「比べものにならない。俺の魔症は、教会の見立てでは毎日通って完治に一ヶ月かかると言われた」


「えっそんなに?」


 カリナが浄化にかけた時間は長く見積もっても一分ほど。


「俺は軽症だったし浄化を受けられるのは三ヶ月後にまわされていた」


「予約待ちで三ヶ月後……」


 自分の番を待ったところで聖水が残っているかは疑問だが。


「魔症は放っておけば侵食を深める。軽症といえど後遺症は覚悟していたし、騎士として続けられるかは賭けだった。腐り落ちるよりかはマシだっただろうが。魔症すれば聖水で清めるほかに方法はない」


 シャーロの将来を変えてしまうことに関わっていたとは。カリナ側からすれば、擦り傷ですね絆創膏貼っておきます、くらいの感覚だった。


「えっと、じゃあ王さまってかなり危ない状態だったのでは……?」


 全身に魔症が広がり肌も黒ずんでいた。寝込むはずだ。

あのとき魔に対して起こったトリハダや冷や汗は未知に対する恐怖、というだけでもなかったらしい。死の淵がそこにあったことを無意識にでも感じ取っていた。


「間違いなく」


「助けられてよかったです」


「だからあなたは俺になんでも要求していい」


「なんでもは、遠慮しておきます」


 冷や汗が増えた。


Whatever Your Wish Is.

(願いがなんであれ)



こそっと地味にタイトル回収しております。

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