桜の木の下で……(16)
[場所:春美の部屋]
明転
[春美]:「――お疲れ、二人とも」
[洋介]:「おう、お疲れ」
[百合]:「ええ」
[春美]:「それで早速だけど……市の人たちは、何て言ってた?」
[洋介]:「あー、あんまり気を落さないで聞いてくれよ?」
[あやめ]:「う、うん」
[洋介]:「その……今月中まで様子を見て、花を咲かせないようだったら、残念だが、切り落とさせてもらうって言ってた」
[春美]:「…………くっ」
春美、悔しそうに拳を握る。
[洋介]:「市の人たちも、俺たちと同じ気持ちはあるらしいんだ。本当はもっと早い段階で進めようとしてたことらしいんだけど、俺たちのような意見がたくさんあったらしくて、今月までは待とうってことにしたんだって」
[百合]:「つまり、今月中にあの桜の木が花を咲かせないといけないってことになるわ」
[春美]:「考慮しても、今月中が限界なのか……」
[洋介]:「苦渋の決断だったらしい。桜の木一本と、住居人を増やし市を活性化させるのとどっちだと言われたら、活性化のほうが優先すべきことみたいなんだ」
[あやめ]:「……そんな風に言われたら、何も言い返せないね」
[洋介]:「ああ。それに、市の人たちも苦々しい顔をしてたのを見せてたし。多分、昔、あの桜の木が咲いてるところを見た人もいるんだろう」
[百合]:「抗議をしようと意気込んでいったけど、毒気を抜かれちゃったわよね」
[あやめ]:「…………」
[洋介]:「――てわけだ。すまなかった、春美」
[春美]:「お前たちが謝るのはおかしいだろ。面倒な役回りをやってくれて感謝してる、ありがとう、二人とも」
[百合]:「でも、話自体はあまり良い方向に進んでるとは言えないわよ?」
[春美]:「まだ終わったわけじゃないだろ? 今月が終わるまではまだ時間がある。全てをやり切るまで、あきらめる気はないぞ、俺は」
[あやめ]:「春美……」
[春美]:「可能性が少しでも残っているのなら、俺はそれに賭けてみたい」




