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『ちゃんと愛してたのに』  作者: 設楽理沙


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9/13

9 ◇親孝行はしておくものだな

9 



 スーパーのある敷地に併設されているレストランに、足を向けた柳田くんの

背中に話しかけた。


「柳田くん、あの時はごめんなさい。酷い態度をとってごめんなさい」


「謝ってくれるんだ。驚いたよ。実は最初声を掛けた時もドキドキだったんだ。

もしかしたら、また昔のように無視されるんじゃないかとね」


「ごめん。あなたを傷付けたこと──今更許されることじゃないけど、そ

れでもごめんなさい」


「じゃあさ、今日のお茶代、奢りな? さ、行こう」


「席について注文が済むと、私は当時の自分の過ちを改めて詫びた。

 そして、掻い摘んで理由を話した」


「あの頃、宗方がよく俺の席に来ていろいろ話し掛けてきてはいたけど、

そんなことになっていたなんて……」


「……」



「真理恵に無視されるようになってから、もしかして彼女とのことで何か

疑われていたのかも? って考えたこともあったんだ。ほんとはね。


 だけど、責める言葉もなく突然だっただろ? 何か、確認するのも怖かったかな。

あれから何度かあの時のことを振り返ることがあって、考えた。


 俺も言葉が足りてなかったかもって。一言話しておけばよかったのかなって。」



「一言?」



「うん。何故かやたらと話し掛けられてグイグイこられてるけど、自分の気持ちは

少しも彼女には向いてないってことを真理恵に話しておけばよかったなって。


 心の中ではね、俺の中心は真理恵で──俺が付き合っているのは真理恵

なんだから、改めて話さなくても真理恵にはわかってるよねって、わざわざ

話さなくてもって思ってた」



「そうよね。何で柳田くんに確認も取らずにあんな態度をしたんだろうって、

私、ずっと後悔してた。


 思い違いだったってわかったあと、すぐに謝らなきゃって思ったのに、

それもできなかったの」



「ほんとっ、よかったよ。今日ここで会えてさ。

 実はお袋に頼まれてここまで遠出したんだけど、親孝行はしとくもんだな。  

 ははっ」


「それっ、私も似た感じかも。母親からパスタとかグラタン食べたいっていう

リクエストがあって、それ用の食材を見に来てたから」


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