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『ちゃんと愛してたのに』  作者: 設楽理沙


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8/13

8 ◇悪手を打つ

8 



 柳田くんも若かった。


 きっと私に疑われたままでしんどかったのだろうと思う。

 私は一番してはいけない悪手(あくしゅ)を打った。


 何も言わず、突然彼のことを無視するようになったのだ。


 彼は当然、困惑の表情を浮かべおそるおそる『どうかしたの?』と

訊いてきた。


 私はただ「もうこれ以上話をしたくない」という一言だけを残し、無視をして

いる理由すら告げずに彼を切り捨てた。


 そんな一方的にむくれるだけの私に対してその後、彼は何も言わず口を閉ざしたまま卒業していったのだった。


 彼に言い寄っていた同級生との間で、私が疑うようなことは何もなかった

──ということは、卒業式の日に知った。


 これで大切な思い出の校舎ともお別れだと思うと切なくて、グルグル

あちこち教室を回っていた時のこと。


 教室や職員室の様子とか、あと草花とか匂いとか忘れないようにと、校庭に出て散策していて……。


 偶然出くわし、知った真実があった。


 私にいろいろ嘘八百を、彼に言い寄っていた同級生が、まるで真実のように仲間とグルになって話していたこと……。


 それを彼女が校舎の裏で、グループの女子たちと面白おかしく話ししているのをこれもほんとにたまたまなんだけど、聞いてしまったのだ。


 私に勇気があったら……

もう少し自信があったら……


柳田くんに確認くらいできたはずだ。



私は自分の愚かさを呪った。


 すぐにでも彼の家に行くなり、電話をするなりしてちゃんと謝らなきゃって

思ったけれど、弱さからそれもできず、結局は遠い過去にして忘れた振りをして

生きてきたのだ。



 それなのに、久しぶりだからと彼は声をかけてくれた。

 これは謝罪をするチャンスを神様が与えてくれたのだと思った。


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