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『ちゃんと愛してたのに』  作者: 設楽理沙


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4/13

4 ◇妻は立ち続けた

4 


 私は突撃前にもホテルの外で待機して立ち続けた。

 突撃した時も部屋の中で立ち続けていた。


 悲しみと切なさに心の中はグチャグチャになりながら、向き合ってほしくて

何もちゃんと向き合わない夫に質問を繰り返した。


 付き合い始めた頃の甘酸っぱい気持ち……

プロポーズされた日の喜び……

結婚式で味わった無情の幸せ……

楽しいだけの新婚生活……


 ある日を境に、自分のことを見なくなった夫への失望……

そして喪失感と葛藤。


 私はずっとあなただけを見つめ、愛し尽くしてきたのに

あなたはどうして、隣にいるのが私だけでは満足できないのか?



 どうして気持ちを他に向けるのか?


 そんな想いを胸に抱え、苦しかった。


 立ち続けている私に、彼らは何も誠実に向き合おうとはしない。




 ホテルに突撃したけれど、ふたりののらりくらりとした態度に

拉致があかなかった。


 ふたりは逃げおおせたと思っているようだった。

 そうは問屋が卸すかいっ。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 私はその日から家には帰らず、一時的に実家に帰った。

 そして、弁護士に相談をしていた通り、女の実家と夫の会社に

内容証明を送った。


 すぐに時間差でふたりから電話が入る。


「どうしていきなりこんなことするんだよ」


「だから、示談をするためにホテルまで行って話を聞かせろと言ったのに

一切のらりくらりと話をせずに逃げてたのはどちら様ですか?


 まず不貞関係での慰謝料請求させてもらいましたから宜しく。

 お金を支払ってもらえれば即時離婚するから」



「懲戒解雇されそうだよ」


「自業自得じゃない? 私があんなに反省を求めたのに一切の謝罪もなく

のらりくらり。解雇されちゃいなっ。じゃね。二度と私に関わらないでよね。


 あとは、弁護士を通すから。あなたの顔なんて、裏切者の顔なんて二度と見たくない」




「なんたらかんたら──」何やら夫が喚いていたけど私は電話を切った。

 そして女からも電話があったけれど、こちらの電話は一度も取らなかった。

 人を舐めてるからこういうことになるんだよっ。



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