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『ちゃんと愛してたのに』  作者: 設楽理沙


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3/13

3 ◇押し問答

3 



「お前、仕事は?」


「あなたこそ、仕事は?」



「終わったよ。だからゆっくりしようかなと思って」


『で、家に帰らずにホテルかよ』


「どこでゆっくりしてんのよ」



「そんなの俺の自由だろ」


「自由じゃないでしょ」


「やめろよ、マジで」


「自由じゃないでしょって言ってるの」


「てか、何でここにいるわけ?」


「あなたこそ、

 あなたこそ、何でここにいるの?」


またまた私たちの意味がないこともない、押し問答が始まる。


「この人、私にエレベーター乗る時から付いてきてるの」

女が参戦する。


夫:「一緒に乗って来たの?」


女:「普通に乗って来たの。私のこと知ってたんですよね?」

 長谷川が私に向かって、夫と私に訊いてくる。


夫:「どういうこと?」


女:「だって、面識がないのに──」


『どうやって知ったんですか?』という女の心の声が聞こえてきそうだった。


私:「あなたとはね」


女:「でも私だってこと知ってたんですよね。

   ストーカーですか、怖いんですけど」



夫:「なんでここにいるの?」



 言質を取りたくて、うんざりするけれど同じ質問を繰り返す。


「状況を教えてよ。このカメラに向かって言って」


「なんでだよ。カメラ切れよ」


「なんでよ、カメラに向かって話せって言ってんのになんでカメラ切らなきゃ

なんだよ」


「何のカメラなんですか」

女が訊いてくる。



「証拠に決まってるでしょ。あなたたちが居る証拠。何でいるの?」


 

女:「何もしてないし」


夫:「普通にシャワー浴びててゆっくりしてただけだよ」


「シャワー浴びてゆっくりしている場所がここっておかしいだろ。

家でシャワー浴びてゆっくりしろよ」


「別に1人の時間ぐらいくれよ」


「1人じゃないじゃない。1人じゃなくない?」

『女と待ち合わせてふたりだろ。何が1人の時間なんだよ』


「別に話をするだけとかってあるでしょ」

 不倫女がふざけた寝言を白々しくのたまう。



「結局話す気ないんだね?」


夫:「うん、話さないね」


「不倫している謝罪もないっていうこと?」


夫:「何もしてないのに何で謝罪?」


女:「そうよ。わたしたち話をしてただけなのにね」




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