ヘスティア先生6
「俺よ・・・実は全然大した野郎じゃなかったわ・・・なのでヘスティア先生の所で修行をし直すわ」
宇宙の中で自分などちっぽけな存在だと理解したヴリトラ神は自分の事を「俺様」から「俺」と呼ぶ様になった。ものの見事に鼻っ柱をへし折られましたね。
「頭ぁーーーーー?!?!」「意味分かんねー?!」「どゆこと?!」「ヘスティア先生?!」「だから何かがおかしいって言ってたじゃねーか!」
スッキリした表情で己の無力を振り返るヴリトラ神に大混乱の24柱の手下共。
前回、ヘスティア先生に心をバキバキに折られたヴリトラ神。
「本当の強さって何だろう?」との心の疑問を解決する為にアスラ神族から抜けてヘスティア先生の生徒(弟子)になる事を決意する。
「テメーらもいつまでもバカやってんじゃねーぞ」
そう言い残してチームのアジトから去る天界屈指の札付きの不良その手には母ちゃんが渡してくれた御守りだけが握りしめられていた・・・
その行き先には。
「「遅刻せず毎日登校するヴリトラ君が偉くて先生もビックリです!」」
先生の明るい声が待っていてくれるのだ。
「へい先生!今日もよろしくお願いしやす!」
初めて出会った山?の麓で毎日開催される青空教室に通うヴリトラ君。周囲には荒地しかないが勉強するのに場所など重要ではないのだ。
ヘスティア先生も少し驚いたのだがヴリトラ君は地頭が凄く良い。
ヘスティア先生が教えた事はその日の内に全て吸収してしまうのだ。
こうなるとヘスティア先生も気合いが入る。先生とは優秀な生徒に引っ張られるのである。
今では朝の8時から夕方の17時までみっちりと様々な分野のカリキュラムが組まれている。
今日は宇宙古典の授業だ。
「「大地の神ゲブを父に、天空の女神ヌトを母に持つ。二柱の間に生まれた四柱の神々の長兄であり、豊穣の女神イシス、戦いの神セト、葬祭の女神ネフティスは弟妹にあたる。配偶神はイシスであり、彼女との間に天空の神ホルスを成した・・・」」
「ふむふむ」
真剣にヘスティア先生の授業を聞くヴリトラ君。ヘスティア先生は「映写」の神技を持っていて空間に当時の映像を映し出して丁寧に説明してくれるので凄く分かりやすいのだ。
ちなみにヘスティア先生の古典は「マジガチ」である。何せ当時を実際に見て来たのだから。
ヴリトラ君も知らなかった意外な過去の真実に興味津々だ。
「おいおい?マジで頭が勉強してるぜ?」
「あの勉強嫌いだった頭が・・・信じらんねぇ・・・」
「勉強なんかしたら物理的に頭が大爆発してたのにな・・・」
「俺らも授業中に何回爆発に巻き込まれた事か・・・」
岩陰からコッソリと授業風景を覗くヴリトラ君の手下の24柱が衝撃を受ける。
ヴリトラ君は「勉強したら大爆発」する特殊体質だったのだ・・・・・マジで特殊だな?!
そんな事もあり幼少期にクラスの中で孤立してしまい不良の道に進んでしまった悲しい過去があるのだ。
そして24柱の手下共の中にはヴリトラ君の「同級生」も居る。
ヴリトラ君のそんな悲しい過去を知る彼らだからこそ真面目に勉強をしているヴリトラ君に驚いているのだ。
ヘスティア先生の「愛のあるギロリン!」がヴリトラ君の特殊体質を消し飛ばしてしまったんだね。
☆
正確にはヴリトラ神はヘスティア先生に心の底から屈服して「従属神」になったおかげで生まれ付きの状態異常が無効になったのでした。
それから・・・
「テメーら!やめろバカーーー?!」「頭の仇ーーー!!」「先生覚悟ーー!」「「これから授業ですよー!皆さーん早く座りなさーい!」」ぺシーン!「うわぁー?!」「あーれー?!」「ああー?!やっぱりー!アホー!」と、心を折られた頭の仇を討たんとヴリトラ神の24柱の手下がヘスティア先生に勇猛果敢に挑むも案の定尻尾の一振りで蹴散らされたり(めっちゃ手加減されたとは思うがよく死なんかったな?!)
アスラ神族を一蹴した後、クルリンシュバッ!と空中で華麗に停止したヘスティア先生が・・・
「「そうですね~。じゃあ今日はこのまま「体育」の授業をしましょうか!」」
何を思ったのか、シュバババババ!!!と残像を残しペシペシペシペシペシと、次々とアスラ神族を尻尾で叩くヘスティア先生。
「おおお!痛ってえ!!ド頭カチ割れるわーー?!」ズドオーーーーンンンンン!!!
「ぎゃああああああああーーーーーーー!!!!!」ドオーーーンン!!!
「早い!早いっスよ先生!!!」バコオーーーーンンン!!
「首が首がめり込むっスよ先生ーーーーー!!!」ゴオオーーーーンン!!!
「ああーーーー?!?!うわぁああああああ?!?!何が起こってんのかもう分かんねーーー!!!」ペシ!「ぎゃああああ?!」ヒューーーーンンゴオオオオオオンン!!!!
ヘスティア先生にペシペシされ大気との摩擦熱で全身から火を吹きながら隕石の様に落下して地表に激突して行くアスラ神族達。
これは・・・なかなか見事なクレーターが出来てますね・・・
ヘスティア先生が編み出したオリジナルスポーツ、「ザ・クレーター」は、ヘスティア先生にペシペシされ極音速で地面に激突してクレーターを作るモノである。
地表に激突するまで僅かな時間で自分で角度を変え激突姿勢を変えて如何に美しい円のクレーターを作れるのかを競う競技である。
まあ、要するに自分が落ちてクレーターを作るんですね?解説者は理解しましたよ。
ヘスティア先生のオリジナルスポーツはアスラ神族にとって文字通りの「生死の境目」を見るモノとなった・・・
クレーターの中心に頭からブッ刺さってピクピクしているアスラ神族達を見て・・・
「「あれー?ウチの子達にこれをやると「俺が1番良いクレーター!」って凄く喜ぶんですけどねー?」」
「あれ?先生やっちゃった?」と頬をポリポリ、困り顔のヘスティア先生。
どうやらこれはオグドアド家で大人気の遊びだったらしい。
「ヘスティア先生!俺達をあんな化け物(原初神)達と一緒にしないで下さい!こんなの普通の神は普通に死にます!!!」
特別講師としてたまに来るヘスティア先生の化け物達(子供達)に既に心をバッキバキにされている物理的にズタボロのヴリトラ神でした。
「「さて!皆さんにも道徳の授業が必要ですね!」」
「「「「「へい!!!ヘスティア先生!!よろしくお願いします!!!」」」」」
第二回目の「アスラ神族向けの道徳の授業」が行われたり・・・
「「今日は「工作」の授業です!地中から「オリハルコン」の原材料を取り出して「聖剣」を量産して見ましょう!」」
「「「「「すんません!幾らなんでもそれは無理っす!」」」」」
工作と称してヘスティア先生が無茶ぶりをして来て見たり・・・つーか、ヘスティア先生はその気になればオリハルコンの聖剣を量産出来るんだ・・・.
ハルモニアの知らない所でヘスティア先生の「悪い子」達への更生活動は続きまして・・・
ヘスティア先生の授業により宇宙の理(上下関係)を魂の芯から理解したアスラ神族達は、
「「皆さーん。それではそろそろ「ハルモニア校長先生」に挨拶に行きましょう!」」
「「「「「へい!合点承知!!」」」」」
いよいよアスラ神族は化け物達の親玉「ハルモニア校長先生」に「ご挨拶」をする日がやってまいりました・・・
「「ハルモニアちゃーん!皆んなを連れて来ましたよーーー!」」
『あっ、ヘスティア先生、今までどこに・・・・・・・・?!?!?!?!?』
ヘスティア先生がアスラ神族を引き連れてやって来たのを見て硬直するハルモニア。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『えーーーーーーーーーとぉーーーーーーーーー??????』
「我らアスラ神族はハルモニアの姐さんに従います!」
『姐さん?!』
ハルモニアの前で膝をつくヴリトラ神以下アスラ神族25柱の面々・・・ヘスティア先生も「先生は悪い子達を改心させる事が出来ました!」と、満足気にウンウンと頷いている。
「こんな木っ葉共ではありますがハルモニア姐さんのお役に立てる様に精一杯頑張らさせていただきます!」
『だから姐さんって?!
え・・・えーと?これからは私に協力して頂ける?で、よろしいのですか?』
アスラ神族が女神ハルモニアに従属する・・・この意味不明な事態にめっちゃくちゃ困惑しているハルモニア。そりゃそうだ。
そして大の野郎共が火の玉に頭を下げる光景もなかなかシュールですね。
「へいっ!姐さんに逆らう野郎は俺らがブッチめてやります!」
『あ・・・ありがとうございます???よろしくお願いします????』
「へいっ!!姐さん!」
こうしてハルモニア姐さんは訳も分からずに25柱の「手下共」を手にいれたのだった。
『?!?!?!?!どゆこと???』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハルモニア校長先生との顔合わせも終わり、天界の大神ゼウスの元にアスラ神族から「ハルモニアの姐さんに従属します願い」が届いた・・・この意味不明な出来事に捥げんばかりに首を捻るゼウス。
「・・・なあ、アテネよ?
ハルモニアがアスラ神族を手下に加えたそうだが・・・お前はハルモニアから何か聞いておるか?」
「アスラ神族?ハルモニアちゃんに従属?何言ってんのさ?お父さん、頭大丈夫?」
自分を偽り大人達に変な意地を張るのを止めたアテネは特に父親のゼウスに対してはめっちゃ口が悪かった。超甘えん坊ワガママ娘の爆誕である。
そして現在のアテネは大絶賛反抗期である。今までの様に父親から逃げるのも何かムカついたので現在はゼウスの秘書としてベッタリとウザいくらいに引っ付いて活動中である。
・・・・・・・・・・・・・・いや、だから何でそうなるん?我が娘よ???
「だよなぁ?こんなんただのイタズラだよなぁ?ただな?あの野郎の筆跡に似てるんよ」
ちなみに素のゼウスも口が悪い、アテネの口の悪さは父親譲りだったらしい。
・・・いえ、母親のわたくしの口も超悪いですね。はい・・・
「それで?それには何て書いてあるの?」
「原文のまま読み上げるぞ。
『我々アスラ神族はハルモニア姐さんに従属する事にした。
でも勘違いすんじゃねえぞゼウス。俺達はハルモニア姐さんに降ったのであってテメーに降った訳じゃねえからな?
それからテメェ、大神風を効かせてハルモニア姐さんに偉そうな態度を取ったり困らせる様な事をすんなよ?
姐さんに舐めたマネすっとハルモニア姐さんの25柱の手下が黙ってねえ事を忘れんじゃねえぞ?
ヴリトラ。』
・・・・・・・・・だそうだ」
「こんなんただのイタズラじゃない?それからこれは従属願いじゃなくて脅迫状ね」
この従属願い届けを見た他の主要な神達も女神アテネと似たような反応で特別この書状について気にする者やハルモニアに直接真偽を尋ねる者はいなかった。
つまりハルモニアは「お前、本当に天界を乗っ取るつもりなのか?」と、疑われるレベルの強大な大戦力を誰に気にされる事なくゲットして自由に使える様になったのだった。
一応はアスラ神族の連中もちゃんと?「従属願い」を出してるしね。
「うふふふ。ヘスティア先生・・・ありがとうございます」
ヘスティア先生をハルモニアの元に送った女神ヘスティアだけは事の真偽を正確に推測していたが特に何も言わなかった。
真なる天然は見て見ぬふりも出来るのだ!
一方、野原拠点では・・・
「「今日は数学Ⅲの授業です!」」
「「「「「よろしくお願いしゃーす!ヘスティア先生!」」」」」
今日も野原拠点にてアスラ神族相手に青空教室を開くヘスティア先生。
ハルモニア姐御の25柱の手下共も毎日ヘスティア先生の授業を受けてメキメキと学力を上げ文武両道の名神となって行くのでした。
『これは本当に何事ですか?』マジで意味不明な女神ハルモニアでした。
「「なあ?あれ?」」「「しっ!見るな!」」
ちなみに龍とヘビモス達は野原拠点に居座るアスラ神族達を見て見ぬふりを決め込みました。
誰も好き好んで意味不明な事に関わりたくないもんね。
☆
ここからは余談です。
ヘスティア先生の教育活動でヴリトラ神とその手下共や女神ハルモニアも混乱しましたがそれ以上に混乱したのがアスラ神族と盟約を結んでいた悪魔族とアトランティス(魔族)でした。
『女神ハルモニアとは一体何者なのだ?!彼の女神に手を出すとアスラ神族が敵対するとはどう言う事だ?!」
いきなり後ろ盾をハルモニアに奪われて狼狽している悪魔族の将軍。
「何者って、どこかの女神なんじゃないのか?アンタ達が分からないのに我々に分かる訳がないでしょう?」
悪魔から持ち掛けられた話しと現実が違い過ぎて憮然とした表情の魔族の司令官。
あからさまにヤル気を感じさせない。
悪魔族の情報部の悪魔が手を上げて・・・
『あまりにも女神ハルモニアに関する情報が少な過ぎて何も分かりません。
一応、オリュンポス12神のアレス神と女神アフロディーテの娘だと言う事だけは判明してますが具体的にどんな力を持ち今までどんな功績があるのか誰も知らないんですよね』
宇宙の裏で暗躍している悪魔の情報網を持ってしてもハルモニアの情報が入らないのだ。
情報も何も今まで学校に通ってパシリをしていただけの女学生だったので情報なんて最初からある訳がないのだがね。
『現在分かっているのは龍達を使役してアスラ神族を屈服させた事です』
『龍を使役するだと?
まさか・・・ハルモニアとは伝承にある「天界で秘匿されている破壊神」・・・なのか?』
はい!ハルモニアちゃんに「姉御」に続き「破壊神」の属性が追加されましたよ。
「いずれにしても我々魔族は女神ハルモニアから手を引く。我々の目的はあくまで「食糧を含めた物資の回収」だ。
さすがに破壊神などの相手にしておれん、女神ハルモニアの相手は貴殿達でやれば良い」
どうやら魔族はハルモニアとの直接対決を避ける様子だ。
そもそもレムリアに戦争を仕掛けたのも「本国での深刻な物資不足」が原因で訳の分からない破壊神の相手などしてられないのだ。
『くっ・・・女神ハルモニアせいで全ての計画が狂ってしまったか。おのれ破壊神め・・・』
今後、悪魔族と魔族は女神ハルモニアの事を「破壊神」と勘違いしたまま行動範囲を縮小して行く。
でもまあ、ハルモニアの一言で「太古の昔、その破壊神を滅ぼしたオグドアドの母神とその子である原初神達」が動くので大きな差異はないだろう。
こんな感じに悪魔族と魔族との全面戦争は回避された訳ですがハルモニアちゃんに何か言いたい事はありますか?
『誰が破壊神ですかぁーーーーーーーー!!!!』




