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異世界転生してエルフのお姉さんにお世話になったら激重感情抱かれてた  作者: 火海坂猫
二章 不純愛編

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二十八話 思いは一方通行ではないがゆえに

「とりあえず目的の馴れ初めは聞けたわけだけど…………話していてどうなの? 気持ちに何か変化はあったわけ?」


 一旦は話の締めとなったところでマナカがタカナへと尋ねる。そもそもはタカナがクリムとの出会いからの惚気話をすることで彼への感情を再燃させるのが目的だった。

 しかしそれを提案したはずのマナカの表情が投げやりなのは、その過程で親友の想像していなかった側面を見せつけられることになってしまったからだろう。


「…………改めて彼への気持ちを思い出すことは出来た」

「それにしては渋い顔ね」


 マナカの言う通りタカナの顔は状況が好転したという表情ではなかった。むしろ忌々しいというか悪化した状況を目の当たりにしたような表情に見える。


「何が問題なのよ」

「思い出せたがゆえに感情の比較ができてしまったというだけだ」

「…………あー」


 マナカが顔をしかめる。感情というのは恐らく僕に対する好意とクリムに対する好意のことだろう。これまでは意図的か無意識カタカナはクリムに対する好意を半ば忘却していた。

 しかし今ははっきりとその感情を思い出したがゆえに、どちらが大きいかという比較ができてしまったということらしい…………そしてどちらの方が大きく感じられたかはその表情から察せられた。


「で、でもこれから…………だよね?」


 僕は思わず口を開く。


「そうね。はっきり言ってしまえばこれは想定内というか…………そうでなきゃこんな事態にはおちいっていないわけなんだしね。別にそれでそのクリム君を嫌いになってしまったってわけじゃないんでしょう?」

「それはそうだ」


 タカナはしっかりとそれには頷く。比較によって順列が付いてしまってもそれでこれまでの関係が全てなかったことになるわけではないのだ。


「その順列を覆す気持ちもあるのよね?」

「ああ」


 それが一番肝心な意思確認だったけれどタカナは頷いた。


「なら気持ちを切り替えてその為の方法を考えるわよ」


 やる、という意思があるなら迷っている時間はもったいない。そう言った意思決定においてマナカは切り替えが実に早い。


「そうだな」


 そしてそれはタカナも同様のようだった…………だから二人は親友同士でいるのかもしれない。


「考えるも何もそのクリムって子を連れてくるしかないんじゃないの?」


 そこに口を挟んだのはアリサだった。素朴な疑問のように彼女は口にするが…………実際その通りだろうと僕も思ってしまう。


「その人のことをもっと好きになりたいなら、本人に会わないと無理だとアリサは思うけど」


 もちろん本人のいないところでその相手により好意を抱くというのは起こりえる。しかし相手を好きになるその大半の状況に対象との直接的な接触が含まれるのも事実だ。

 思い出だけで相手を好きになろうとしても、その思い出以上の感情を相手に抱くのは難しいだろう。


「アリサの意見なのは業腹ではあるけど事実でもあるわね」


 目を背けたかった事実であるというようにマナカの表情は苦い。


「私は、嫌だぞ」


 それに対するタカナの反応は端的だった。


「そりゃ私だって嫌に決まってるわよ…………どう転ぶかわからないじゃない」


 予測不能の事態が見えることにマナカは顔をしかめる。


「とりあえず、僕は憎まれそうだよね…………」


 ただわかるのはクリムが僕に良い感情を抱かないということだけだ。


「まあそりゃあ…………って、そうか。そこの確認が必要なのね」


 何かに気づいたようにマナカはタカナに視線を向ける。


「ねえタカナ、そのクリム君はどれくらいあんたのことを好きなの?」

「いきなり何を聞くんだ」

「そのままのことを聞いてるのよ」


 繰り返しマナカは尋ねる。


「私たちは恋人同士だった…………それで不服か?」

「もっとはっきりさせる必要があるのよ」


 タカナの答えにマナカは納得せずに続ける。


「あんたから言い寄って恋人同士になったって話だったけど…………ちゃんと彼の方はあんたのことを好きになってくれたわけ?」

「…………ものすごく失礼な質問をしているのは理解しているか?」

「してるわよ」


 睨むようなタカナの返答にマナカはきっぱりと答える。その表情は彼女自身もこんな話をするのは不本意であることを示していて、決して必要のない話をしているわけではないのだと訴えていた。


「…………最初は確かに私に押し切られたという印象だったのは間違いない。しかし最終的には私を好いてくれたと思うし、大切にすると言ってくれたよ」


 だからこそそんな彼に対する申し訳なさがタカナにはあるのだ。


「そう」


 それに安堵あんどするような、納得したような表情をマナカは浮かべる。


「まさか彼を連れてくるとは言わないだろうな…………どう転ぶかわからないと言ったのは君だったはずだ」

「その意見は変わってないわよ」


 心底望んではいないとマナカの表情は物語っていた。


「そりゃ方法だけで言うならそのクリム君に改めてタカナを口説いてもらうのが一番効果あると思うわよ? でもここに当人を連れてきたらそれこそ真っ先にアキに対して感情を向けるのがわかり切ってるじゃない」


 クリムがタカナに押し切られて恋人になっただけであるなら違う反応も考えられるが、本気で恋人同士であったなら僕に対して怒らない道理がないのだ。


「戻る気は、ないのよね?」

「ここに残る選択肢を提示したのは君だろうが」

「…………そうなのよね」


 このまま島から出て何食わぬ顔でクリムの元に戻れば、僕と彼が衝突することもなく同じ結果が得られはする…………しかし僕から逃げて忘れることを選ぶか、この島に残って抗うかの選択をタカナへと提示したのはマナカだった。


 あの時とは前提とする条件も違ってしまっているとはいえ、今更それをなかったことにするのはどうなのだという話だ。


「んー、そのクリムって子がお姉さんのことちゃんと好きなんだったら…………勝手にここに来ちゃったりしない?」


 ふと疑問に思ったようにアリサが口にする。


「…………そこんとこどうなの?」

「私が不在になる旨の申し伝えはちゃんとしておいた」


 島に残ると決めた時点でその辺りをちゃんとタカナはしたらしい。


「事務的には問題ないとして彼氏の方はどうなのよ」

「…………事情は伝えるように頼んでおいた」

「つまりは直接本人と話したわけではないのね」

「…………話せるわけ、無いだろうが」


 タカナが顔をしかめる。どんな顔をして話せばいいと言うんだと言いたげだ。


「クリム君の察しが悪いことを祈るしかないわね」


 そう口にしながらも、マナカはあまり期待していないような表情をしていた。


 お読み頂きありがとうございます。

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