↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルダイバー~追放された深淵の鑑定士は最強レギオンを作り上げる~  作者: 国木田。
動乱のレッドアイズ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/78

閑話:ロイスの指導

 朝の澄んだ空気が、レッドアイズ本部の訓練広場を満たしていた。


「おーよしよし、いい子だなぁ! 可愛い奴だぜ」


 ロイスはしゃがみ込み、手のひらサイズの子犬を撫で回していた。

 白銀は仰向けになり、気持ちよさそうに喉を鳴らしている。


「……オーグを震え上がらせた『白銀狼王』がこれかい?」


 魔獣の面影など微塵もない姿に、ロイスは苦笑した。


「ロイスさん、白銀ちゃんを可愛がってくれてありがとうございます!」


 ミミィが木剣を握り、元気に頭を下げた。


「先生から、ロイスさんは戦場の隙間を埋める達人だと伺いました!」


「達人だなんて買い被りすぎだぜ。……まあ、軽く手合わせしてみるか」


 ロイスは立ち上がり、訓練用のダガーを構えた。


「手加減はしねぇぞ。いつでも飛び込んできな!」


「はいっ! 【ステップ・イン】!」


 ミミィはマルク直伝の体幹操作で、鋭く地を蹴って懐へ滑り込んだ。踏み込みから、木剣をまっすぐに振り下ろす。


 パシッ!


 ロイスは最小限の身のこなしで刃筋を外し、ダガーの腹でいなした。


「おっと! 足腰の踏ん張りや瞬発力はなかなかの筋だぜ」


「!? 簡単に受け止められちゃいました……!」


「動きはいいが、こりゃ剣術は完全に素人だな!」


「テイマーが魔獣と一緒に前線の一歩手前まで出るなら、これじゃ足りねぇ」


「足りない、ですか……?」


「ああ。中衛を張るなら、敵の反撃を弾くための盾も必要だ」


 この世界では、【主脈】だけでなく【枝脈】の連携が強さを左右する。魔獣への指示と自身の攻防を両立させるには、確かな型が不可欠だった。


「……まったく、足さばきだけじゃなく盾術と剣術まで教えるなんてよ」


 ロイスは頭を掻き、ため息をついた。


「俺だけじゃ荷が重いぞ、マルク」


「あの……ロイスさん、私、やっぱり無理でしょうか……?」


 不安そうなミミィに、ロイスは慌てて手を振った。


「無理なわけねぇだろ! まずは俺の得意な足さばきから叩き込んでやる!」


「はいっ!」


「敵を正面から迎え撃つな。相手の視線や肩の引き、重心の傾きを盗み見るんだ」


 ロイスはダガーの切っ先を揺らし、流れるようなステップを実演した。


「相手が踏み込んでバランスを崩す、コンマ数秒先の隙間に身を滑り込ませろ」


「視線と重心……隙間に滑り込む……」


「そうだ! 理屈は後だ、身体で覚えな!」


 再び打ち合いが始まった。

 だが慣れない観察眼に、ミミィの動きが硬くなる。


 その時、足元の白銀が石畳を蹴った。


 パチッ!


 白銀の口から極小の氷粒が放たれ、ロイスが踏み込む石畳へ着弾した。


「うわっと!? 足場を凍らせやがった!?」


 ロイスの体勢がわずかに傾ぎ、右肩の重心がブレる。その刹那、ミミィの身体が、教わった通りの隙間へ自然に滑り込んだ。


 トンッ。


 木剣の切っ先が、ロイスの喉元へピタリと突きつけられた。


「……え?」


 ミミィは目を丸くした。


「わんっ!」


 白銀が誇らしげに短い尾を振る。


「……参った。一本取られたぜ」


 ロイスは両手を挙げ、楽しげに吹き出した。


「白銀のアシストも見事だが、あの隙間へ迷わず飛び込んできたのはお前だ」


「私、ちゃんと滑り込めていましたか……!?」


「ああ、完璧だったぜ! 足さばきの勘はもう十分に掴めてるな」


 ロイスは首を鳴らし、ダガーを鞘へ納めた。


「あとは剣術と盾術だな」


 脳裏に浮かぶのは、酒場でマルクが言っていた遠慮がちな言葉だった。


 『他の奴らに見せると、才能の差にショックを受けかねない』。


「……まったく、あいつも過保護すぎるんだよ」


「レッドアイズは、人の才能くらいで心折れたりしないんだよ」


「え? 何か言いましたか、ロイスさん?」


「なんでもねぇよ! よしミミィ、ここで白銀と一緒に少し待ってな!」


 ロイスは親指を立てた。


「うちのクランで一番腕の立つ、中衛の剣術使いを呼んできてやるからよ!」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 飛び跳ねるミミィを残し、ロイスは足早に広場を出ていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。